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噂の愛人令嬢 1 (マリウスside)
しおりを挟む私マリウス・ディートリンデは、この国ディートリンデ王国の第一王子。幼い頃から国の為、国民の為と厳しい教育を受けていた。
正直、王族として生まれたからには当たり前の事だと叩き込まれて育ったから、ただ義務感で行動しているだけで···本当の意味で「国の為、国民の為」という言葉の意味をよく理解していなかったのかもしれない。
ある日、父である国王がこんな話をした。
「最近ヴェルサス侯爵家が立ち上げた貸しドレス業が、貴族達の話題になっている。貴族の間では一度来たドレスを二度着ることは恥とされてだいたいが衣装部屋に着られる事なく残り、やがて邪魔になり、捨てるしかなくなる。」
それはマリウスも知っているな?と父が私に尋ねる。
私が頷くと、父は話を再開させた。
「しかしドレス一着作るのにどれだけの金がかかり、どれだけの人間がドレスに携わっているか···ヴェルサス家はそこに目を付けた。私はヴェルサス家のその着眼点に感服した。一度袖を通しただけなのに、大金をかけたドレスは着られることなく捨てられるしかないのだからな···。大金を捨てるような物だ。平民がそのドレス一着で何日生活できるか···。」
父がそこまで話して、やっと意味がわかった。
私達、王族や貴族が当たり前だと思っている事は、平民にとっては当たり前の事ではない。
ドレス一着作るお金があれば、平民達は何日も生活できる。貴族や王族が贅沢に過ごせる下には平民の努力があるのだ。国民や領民がいるからこそ、我々王族や貴族が豊かな生活ができるのだ。
当たり前の事を当たり前でないと見る事ができる着眼点が素晴らしいと言った。王族や貴族は民を守り導く為、その対価で贅沢な生活ができるのだ。
それにヴェルサス家は、教会や孤児院に多額な寄付をしたり、平民達の学校建設や、様々な業種への投資をしたり、平民の為の治療院建設も視野に入れているらしい。
その話を聞いて、私の知っていた「国の為、国民の為」という言葉の重みが変わった。
ヴェルサス家は、どの貴族よりも、本来の貴族としての役割を理解している。どの貴族よりも、貴族らしい気高い人間なのだと···私はヴェルサス家に興味を持った。
そしてヴェルサス家に関しては、こんな噂もある。
「ヴェルサス家の長女は16歳という若さなのに、会う男達すべてを魅了する美しさと妖艶さがある。正妻には権力を求め、愛人には癒しを求めるなんて言葉がこの国にはあるが、彼女を妻にできれば、“権力”も“癒し”も両方手に入る。権力も合わせ持つ“愛人令嬢”なんて最高じゃないか。」
大人達の下品な噂と、人として、貴族として気高い貴族としてのヴェルサス家···全く真逆の噂に、ますますヴェルサス家に興味を惹かれる。
次の王家主宰のパーティーで、父はヴェルサス家に特別褒章を与えると言うので、次のパーティーには必ずヴェルサス家の人間全員が参加するだろう。
パーティーが楽しみだ。
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