愛人令嬢は今日も攻略対象を魅了する

海野すじこ

文字の大きさ
12 / 15

天使が舞い降りた日1 (エルスティンside)

しおりを挟む


私、エルスティン・ヒューゲルの今までは、父なしには語れない。

小さな頃、体も小さく緑色の髪に金色の瞳という変わった風貌から、まわりの体の大きな子供達から目をつけられよく苛められた。

苛められるたびに、父に悔しいと泣きついた。

父は、家にいる時は、穏やかで優しく怒った姿は見た事がないくらい···優男なイメージしかなかった。

そんな父が、ある日私にこう言った。
「強くなりたいか?強くなる覚悟があるか?」と。

私は強くなりたかった。
誰よりも強くなり、苛めた奴らを見返したかった。

私は、父の言葉に強く頷いた。

すると父は、ある場所に連れて来てくれた。

父の職場である、ディートリンデ王国軍第一騎士団詰所だ。

体もガッシリとした騎士がたくさんいた。
みんな強そうな人達ばかりで、少し緊張していると、父が、私を皆に紹介してくれた。

「 息子のエルスティンだ。私の息子ではあるが、どうか特別扱いをせず、立派な騎士になれるように厳しく鍛えてやってほしい。」

周りにいた騎士達の視線が私に集まる。
「団長···本当に厳しく鍛えていいんですかい?」と近くにいた老齢の騎士が父に聞いた。

「エルスティン本人が強くなりたいと望んだんだ。立派な騎士になれるようにしごいてやってくれ。」

老齢の騎士にそう言った父の顔は、普段の優しい父の顔ではなかった。騎士団長としての父の姿を初めて見た。

「エルスティン。今日から騎士団の一員になるんだ。騎士団の訓練は厳しいが、泣き言を言わずに耐え、強くなれ。お前を誰も特別扱いはしない。お前の力だけで強くなるんだ。」

父はそう言うと、老齢の騎士に私を任せ、自分の仕事に戻った。

騎士団の訓練は厳しかった。

毎朝早く起き、自ら鍛練をし、下っ端の私は毎日体力をつける為の体作り、剣の素振り、空いた時間は下っ端としての雑用もあったし···1日が終わる頃にはクタクタになり、ご飯を食べればすぐに寝落ちするほどだった。

厳しいが、周りの騎士達は優しく、時に厳しく私を鍛えてくれた。誰も特別扱いをせずに一見習い騎士として扱ってくれるのが嬉しかった。

辛い事もたくさんあるが、私はやりがいを感じていた。そして家とは違う、騎士団長である父の姿を見て、父に憧れを抱いた。

父は休みの日になると、剣の鍛練にも付き合ってくれた。騎士団長である父は、厳しく苛烈ではあるが···私は騎士団長である父の方が好きだった。

最初はただ強くなり、見返したいと思っていただけだったが、本当の強さとは···自らに厳しく、民には優しく、弱い者には手を差し伸べる。それが本当の強さだ。

いつしか、心も体も鍛えられて気持ちに変化が出る頃には、苛めていた者を見返したい···なんて小さな事にとらわれていた自分がバカらしくなった。

確かに苛められたのは悔しかった。
だけど、そいつらと同じ事をして見返すのでは所詮同類なのだ。相手にするのもバカらしく、その時間があるなら、強くなる為の時間に使いたい。

そう気持ちが変化する頃には、体もだいぶ逞しくなり、誰も自分を苛めなくなった。それにそんな小さな事も考えなくなっていた。

父に追い付きたい。父を越える強い騎士になりたいと···ますます剣の道にのめり込んでいた。

ある日、同じ年頃の騎士見習いが集められた。
そしてトーナメント制で試合をする事になった。

皆、私より先に騎士団に入った者ばかりであったが···負けたくなかった。
父を越える強い騎士になるには、彼等に負けるようでは話にならない。必死にトーナメントを勝ち抜いた。

そして気づけば、トーナメントで優勝していたのだ。

まさか、苛められっこだった私が優勝···。

そんな私の姿を見て、父はとても誇らしげに笑った。
騎士団に入団してから、初めて見る父の笑顔に目頭が熱くなった···。

騎士になって良かった。

まだまだこれからだけど···これからも鍛練を続け···いつか父のように···父を越える強い騎士になりたい。

トーナメントに優勝した私は、この国の第一王子であるマリウス殿下の護衛騎士という誉ある任務が与えられた。

マリウス殿下は、とても賢く優秀で···次期国王は間違いなくマリウス殿下がなるだろうと言われている。

そんな方の護衛騎士に···。
正直、突然の昇格に戸惑った···。

そして、王子の護衛騎士となった私の初任務は、王家主宰のパーティーでの殿下の警護。


まさかこのパーティーで、運命的な出会いをする事になるとは···その時の私はまだ知らなかった。













しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

世話焼き幼馴染と離れるのが辛いので自分から離れることにしました

小村辰馬
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢、エリス・カーマインに転生した。 幼馴染であるアーロンの傍にに居続けると、追放エンドを迎えてしまうのに、原作では俺様だった彼の世話焼きな一面を開花させてしまい、居心地の良い彼のそばを離れるのが辛くなってしまう。 ならば彼の代わりに男友達を作ろうと画策するがーー

初夜った後で「申し訳ないが愛せない」だなんてそんな話があるかいな。

ぱっつんぱつお
恋愛
辺境の漁師町で育った伯爵令嬢。 大海原と同じく性格荒めのエマは誰もが羨む(らしい)次期侯爵であるジョセフと結婚した。 だが彼には婚約する前から恋人が居て……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...