砂漠の宝花

海野すじこ

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地獄のような真実。

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※このお話にはかなり残酷な描写があります。苦手な方は気をつけてください。



次の日の放課後、私は裏庭へ行くと、ナダはいつものベンチにいた。

彼女は、いつもと変わらず本を読んでいた。

私は昨日の事が気になり、今日は勇気を出してナダに話しかけてみる事にした。

「ナダ?ちょっと話をしたいんだけどいいかな?」

私が話しかけると、ナダはノートと筆記用具を取り出した。

不思議そうに見ていると、ナダはノートに何かを書き出した。

“私は、舌を火傷してしまって、言葉を話す事ができません。筆談でもかまいませんか?”

とノートには書いてあった。

私は驚いてナダを見ると、ナダは一瞬困ったような表情を見せ、口を開けて舌を見せてくれたのだが...。


火傷・・をしたというよりは...

焼印を当てられた痕だ・・・・・・・・・・
酷い火傷だった。

あまりの事に、私は絶句してしまった...。

これはたんなる火傷じゃない。
折檻された痕だ....虐待である。

ナダの舌には火傷の下に何か紋様のようなものが見えた。

それを見えなくする為に焼印を押し当てたのか?

これが本当にただの火傷・・・・・ならば、親は心配してすぐに神殿に連れて行き治療を受けるはずである。

神殿での治療は、聖魔法での治療なので医師による治療よりも強力で、外傷ならばたちまち痕も残らず綺麗に治る。その分、治療費は高額ではあるが、ナダの家は有力な商家だ。

それも、国内ではトップクラスの大きな商家の娘だ。

治療費が払えない訳がない・・・・・・・・・・・・

どういう事か?

それは....

意図的に喋れなくした・・・・・・・・・・ということだ。

私はナダの両親に、ナダの姉に怒りが沸いた。
彼女の両親はナダが真実を語れないように折檻したのだ。

姉は、ナダが折檻されて話す事が出来ないのを知っていたから...。

自分の立場が良くなるように.....
ナダが反論できない事を知っていて・・・・・・・・・・・・・
わざとナダを貶める事を言っているのだ。

どうしてもっと早く彼女と出会わなかったのだろう...。

もっと早く彼女を見つけていれば、こんな残酷なことされる前に守れたのに...。

私はつらいと思うが、今までナダが受けたことをできるだけ詳しく教えてほしいと言うと、彼女はさらに酷い現実を語る。

“昔は、お父様は優しい方だったんです。
私の事を大変可愛がってくれていました。
しかし、ある日の晩から環境がガラっと変わりました。”

彼女は息を吐き出し続きを綴る。

“その日、母と姉は王宮のパーティーに参加していました...私は、父にお前にはまだ早いとパーティーに連れて行っては貰えませんでした。双子の姉は参加するのに....。”

そこまで書くと彼女の体が震え出した。

“母と姉が馬車で出かけると、父は使用人達を下がらせて人払いしました。そして父は、いやらしい笑みを浮かべ、私の服を剥ぎ取り、いやらしく私の体を触り始めました。あまりの気持ち悪さと恐怖に、私は父を突き飛ばし、自分の部屋に鍵をかけて閉じ籠りました。”

彼女は気付いたら泣いていた。
当時を思い出したのだろう...。

“夜になり、母と姉が帰ってくると、部屋の外から母と姉が出てくるように言ったので私が部屋から出ると母に殴られました。次に姉がこのアバズレ!と叫んで私を殴りました。母にはお前がふしだらに夫を誘ったんだろうと罵りまた殴りました。私は必死に違うと泣いて叫んでも母も姉も私を信じてくれませんでした。”

そこまで書くと、ナダの目からは、溢れんばかりの涙がとめどなく流れて、私は、それ以上ナダに書かなくても良いと言ったけれど、ナダは最後まで何があったか書いた。

続きにはこう書いてあった。
殴り飽きたのか暴力が落ち着いた頃、さらなる地獄が待っていたと...父がこれ以上私が真実を語れないように焼印を持ってきてナダの舌を焼いたと...私はナダを抱きしめ泣いた。

どこの世界にこんな酷いことができる家族がいるのだと。

彼女の華奢な肩を力いっぱい抱きしめ、私が彼女を守ることを誓った。

そして私はすぐに行動を起こした。

















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