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第4話 白焔
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プレイヤーとNPCの力の差を埋めることは難しい。
ユリウスでは長い時間をかけ育てたNPCならば中堅プレイヤーに匹敵する力を持つ。だがそこに至るまでには膨大な時間と経験を必要するため、漫画の主人公のように突然眠っていた力が覚醒し敵を倒すなんてことは絶対に起きない。
ラミアはプレイヤーと対峙し圧倒的な力の差を感じたからこそ逃げるという選択をしたように見えた。だが言動に変化が起こった直後、プレイヤーを瞬殺したのだ。
力を隠していたりスキルや魔法効果により能力の底上げを行ったようには見えなかった。例えそうだとしても能力上昇値が大きすぎる。
真相は本人に聞いてみるのが一番手っ取り早い。だが今はラミアの話を聞くことより優先させるべきことがある。
少女は座り込んだままジッと老人の事を見つめ微動だにせず、その表情から生気は消え失せ近づき話しかけようが何の反応も示さない。絶望や諦めといった感情が心を支配し警戒心すら喪失させているのだろう。
老人の傍へと移動し状態を確認してみると少女が絶望した理由が分かった。背中ら胸へと貫かれたような傷があり、大きく広がる血だまりからも相当量出血していることが見て取れる。だがそれと同時に感じる違和感。
これだけ致命的な傷を負えば即死していても不思議ではない。ましてやこれだけ大量出血しているにも拘らず意識を保つことなどあり得ない。
気を失う事すら許さず死ぬまで苦痛を与え続け徐々に命を奪う。意識を保たせたのは少女をいたぶり殺す様を見せつけたかったといったところだろか。卑劣極まりなく悪趣味、NPCに対してだとしても決して許される行為ではない。
だがその卑劣な行為が結果的に老人の命を救うこととなる。爪先から溢れ出していた黒い液体の効果なのだろうが、スキルの使い方さえ間違わなければ活躍できたかもしれないだけに残念だ。
「今すぐ治療するからな」
致命傷レベルの深手を負っていることを考慮すると最も治癒効果が高く全ての状態異常を癒すことができる【完全治癒】を使用することが最良の選択だと頭では分かっているのだが、どうしても不安を拭い去ることが出来なかった。どれだけ不安を感じても見ているだけでは助かる命すら助けられない。
意を決し傷口に手を翳そうとすると少女が小さな声で何か呟いた。
「無理だよ・・・・・・」
「ほう。颯斗様では治癒できぬと言ったように聞こえたのじゃが?」
ラミアは少女を一瞬睨みつけた後、溜息をつき言葉を続ける。
「実は妾も少し前までお前と同じでな。それがどれ程、愚かで恥ずべきことだったか今では理解しておる・・・・・・ だが今は確信しておるのじゃ。颯斗様ならば不可能を可能にできると。それにじゃ、高位の治癒魔法でも治せないと言うからには何らかの理由があるのではないか?」
ラミアの言葉に正直驚かされた。明らかに自分より格下だと思われる少女に対して気を使
い言葉を選んでいたのだ。玉座の間での一連の出来事が夢でも見ていたのかと思えるほどの違いがある。
「・・・・・・ じぃを治療できるのはお父様とお姉様の二人だけ。それにもう無理だよ・・・・・・ねぇ、じぃを殺すなら私も殺して。お願いします・・・・・・」
状況も分からず二人を追ってきたプレイヤーの仲間だと思い、死を懇願し続ける少女に今何を言っても意味をなさないだろう。老人との深い絆が悪い方へと作用してしまい少女を死へと向かわせている。
老人を助けることが出来れば少女の心も救うことが出来るかもしれない。だが話を聞く限り使用者が限定され他者の修得及び使用が不可能とされるユニーク系の魔法かスキルでのみ治癒できる可能性が高く、他の治癒方法、例え最上位治癒魔法【完全治癒】を使ったとしても助けることはできないのではないだろうか。
特定の素材やアイテムを用意することで老人を助けることができるといったクエストの可能性も無いとは言い切れないが、それだけの時間的猶予が老人には残されていない。
「くそっ‼ 他に助ける方法は無いのかよ・・・・・・」
「・・・・・・ 白焔。お父様とお姉様だけが使える魔法」
「ビャクエン・・・・・・ 知らんな。だが颯斗様なら問題にすらならん」
優しい笑顔と言うより勝ち誇ったような表情を少女に向け、耳を塞ぎたくなるようなこと言い放っている。運よく知っていたから良いようなものだが少女が言っている白焔と同一の効果を持つ魔法なのか分からない。
「白焔なら知ってるというか使える。だけどあれって・・・・・・」
「そんな事ある訳ない!! 白焔は私達天狐族だけが使える魔法なのに。嘘ばかり言わないでよ!!」
少女は嘘を言っていると思っているようで殺気立った目で睨みつけてくる。白焔を修得した当時、攻略サイトなど散々調べてみたが情報が一切存在しなかった。
それでも修得したからには使ってみたいという衝動にかられ何度か炎耐性を持つ魔物で試した経験が有るのだが、跡形も残らず燃え尽きるという散々たる結果だったこともありプレイヤーやNPCに対して使用したことが一度もない。
プレイヤーやNPCに対してならば治癒効果を発揮したかもしれないが試す機会が得られないまま現在に至っている。
「嘘じゃないって証明するのは簡単なんだけど・・・・・・ 実は昔使ったときに炎耐性を持つ魔物を焼き殺しちゃってさ。それ以来、一度も使ってないんだよね」
「嘘⁉ そんな・・・・・・」
驚き困惑したような表情を見せる少女が何に反応を示したのか理由は分からない。だが希望を失い死を懇願していた時とは明らかに違っている。
「お願いします。じいを・・・・・・ じいを助けてください」
何度も助けてと懇願する少女の瞳から溢れ出た涙が頬を伝い落ちて行く。そんな少女にかける言葉は一つしかないことは分かっているのだが焼け死んだ中位火竜のことが脳裏をよぎり言葉を詰まらせる。
少女は確信を得たからこそ希望を見出したのだろう。老人の命を奪ってしまうかもしれないという恐怖、確信を得られないことでの不安、そんな感情が少女を見ていると不思議と消えていく。
「【白焔】」
白い炎が老人の全身を包み込んでいく。以前使用したときとのような近寄れないほどの熱量や荒々しさ、拒絶感のようなものは全く感じられず、穏やかで温かく老人を優しく包み込んでいるようにも見える。
そして白き炎は意思でもあるかようにゆっくりと少女へと燃え移り全身を包み込んでいった。少女は少し驚いているようだったが何か呟いた後、ゆっくりと瞳を閉じた。
何を言ったのか声が小さく聞き取れなかったが表情は穏やかで微笑んでいるように思える。苦痛に満ちた表情を浮かべていた老人も穏やかな表情をしており既に傷口は完全に塞がっている。
「一時はどうなるかと思ったけど傷口も塞がったし大丈夫そうだな。ラミアは・・・・・・」
ラミアもかなりダメージを負っていたように思っていたのだがプレイヤーとの戦いそのものが夢でも見ていたのかと思えるほど切傷どころか着物に汚れ一つ残っていなかった。
「ところであの獣人どうなさいますか?」
そんな心配をよそに嬉しそうな表情をしているラミアが指さす先には無残に首を刎ねられた骸が横たわっている。
フルダイブ型RPGではプレイヤーが致命傷を負った場合、十秒の死亡エフェクトが発生し時間内に蘇生または回復できなければリスポーンポイントへ強制送還され蘇生という流れが一般的。
しかしユリウスではプレイヤーは心臓と呼ばれる心臓のような器官を持ち致命傷のような深刻なダメージを負うと停止、同時にアバターの崩壊が始まり消滅、強制ログアウトされ二度とログインすることができなくなる。
魔物は素材やアイテムをドロップし消滅、ただし絶界の魔物だけは消滅もアイテムをドロップすることもなく素材は自力で解体しなければならず慣れるまで苦労した経験がある。
骸に近寄り体を調べてみると心臓が完全に停止しているにも拘らず崩壊が始まった形跡がない。死体が消滅しないことはリアリティの追求だと思えば我慢できなくもないが戦闘中、僅かに感じた痛みだけは看過できない。
「あの・・・・・・ お姉さん。助けてくれてありがとうございます」
唐突に背後から聞こえてきた少女の声は、まだ治癒しきれていないのか元気が無く落ち込んでいるように思える。声をかけようと思いもしたがラミアと少女の会話に割って入ることを避け話しかけるタイミングを見計らうことにした。
「私、嘘だと決めつけて・・・・・・ それに嘘つきだなんてヒドイこと・・・・・・ 口を利いてもらえなくて当然だと思います。だけど、ありがとうって。それだけ伝えたくて・・・・・・」
見た感じ十歳くらいだろうか。ルーナよりも幼く見える少女が良心の呵責(かしゃく)に苛(さいな)まれ心を痛めている。これだけで好感度が青天井に急上昇していく。
「静かにせぬか。確かに不敬極まりなく万死に値する言動ではあるが、颯斗様は些末事で立腹するほど狭量ではない」
状況を考えれば少女の反応は自然なことで何の問題もない。ましてや万死になど絶対に値しない。ラミアの忠誠心の表れだと言えば聞こえが良いが狂信じみてくると対応に困ってしまう。
ただ今回の戦いを通じ今後の国防を揺るがしかねない重大な欠点とも言えることに気がつくことができた。早急に確認しなければならない重要なことだけに老人が目覚めるのを待っていられない。
探知(サーチ)範囲内にプレイヤーや魔物、悪意を持つ者の反応は無いが絶対に安全だと言い切れない以上、未だ意識が戻らない老人と少女を置き去りにすることができない。
また二人を助けることで新たなシナリオ開放される可能性だってある。老人が意識を取り戻すまでセフィーシア城で保護することを決め一旦二人を連れ帰ることにした。
ユリウスでは長い時間をかけ育てたNPCならば中堅プレイヤーに匹敵する力を持つ。だがそこに至るまでには膨大な時間と経験を必要するため、漫画の主人公のように突然眠っていた力が覚醒し敵を倒すなんてことは絶対に起きない。
ラミアはプレイヤーと対峙し圧倒的な力の差を感じたからこそ逃げるという選択をしたように見えた。だが言動に変化が起こった直後、プレイヤーを瞬殺したのだ。
力を隠していたりスキルや魔法効果により能力の底上げを行ったようには見えなかった。例えそうだとしても能力上昇値が大きすぎる。
真相は本人に聞いてみるのが一番手っ取り早い。だが今はラミアの話を聞くことより優先させるべきことがある。
少女は座り込んだままジッと老人の事を見つめ微動だにせず、その表情から生気は消え失せ近づき話しかけようが何の反応も示さない。絶望や諦めといった感情が心を支配し警戒心すら喪失させているのだろう。
老人の傍へと移動し状態を確認してみると少女が絶望した理由が分かった。背中ら胸へと貫かれたような傷があり、大きく広がる血だまりからも相当量出血していることが見て取れる。だがそれと同時に感じる違和感。
これだけ致命的な傷を負えば即死していても不思議ではない。ましてやこれだけ大量出血しているにも拘らず意識を保つことなどあり得ない。
気を失う事すら許さず死ぬまで苦痛を与え続け徐々に命を奪う。意識を保たせたのは少女をいたぶり殺す様を見せつけたかったといったところだろか。卑劣極まりなく悪趣味、NPCに対してだとしても決して許される行為ではない。
だがその卑劣な行為が結果的に老人の命を救うこととなる。爪先から溢れ出していた黒い液体の効果なのだろうが、スキルの使い方さえ間違わなければ活躍できたかもしれないだけに残念だ。
「今すぐ治療するからな」
致命傷レベルの深手を負っていることを考慮すると最も治癒効果が高く全ての状態異常を癒すことができる【完全治癒】を使用することが最良の選択だと頭では分かっているのだが、どうしても不安を拭い去ることが出来なかった。どれだけ不安を感じても見ているだけでは助かる命すら助けられない。
意を決し傷口に手を翳そうとすると少女が小さな声で何か呟いた。
「無理だよ・・・・・・」
「ほう。颯斗様では治癒できぬと言ったように聞こえたのじゃが?」
ラミアは少女を一瞬睨みつけた後、溜息をつき言葉を続ける。
「実は妾も少し前までお前と同じでな。それがどれ程、愚かで恥ずべきことだったか今では理解しておる・・・・・・ だが今は確信しておるのじゃ。颯斗様ならば不可能を可能にできると。それにじゃ、高位の治癒魔法でも治せないと言うからには何らかの理由があるのではないか?」
ラミアの言葉に正直驚かされた。明らかに自分より格下だと思われる少女に対して気を使
い言葉を選んでいたのだ。玉座の間での一連の出来事が夢でも見ていたのかと思えるほどの違いがある。
「・・・・・・ じぃを治療できるのはお父様とお姉様の二人だけ。それにもう無理だよ・・・・・・ねぇ、じぃを殺すなら私も殺して。お願いします・・・・・・」
状況も分からず二人を追ってきたプレイヤーの仲間だと思い、死を懇願し続ける少女に今何を言っても意味をなさないだろう。老人との深い絆が悪い方へと作用してしまい少女を死へと向かわせている。
老人を助けることが出来れば少女の心も救うことが出来るかもしれない。だが話を聞く限り使用者が限定され他者の修得及び使用が不可能とされるユニーク系の魔法かスキルでのみ治癒できる可能性が高く、他の治癒方法、例え最上位治癒魔法【完全治癒】を使ったとしても助けることはできないのではないだろうか。
特定の素材やアイテムを用意することで老人を助けることができるといったクエストの可能性も無いとは言い切れないが、それだけの時間的猶予が老人には残されていない。
「くそっ‼ 他に助ける方法は無いのかよ・・・・・・」
「・・・・・・ 白焔。お父様とお姉様だけが使える魔法」
「ビャクエン・・・・・・ 知らんな。だが颯斗様なら問題にすらならん」
優しい笑顔と言うより勝ち誇ったような表情を少女に向け、耳を塞ぎたくなるようなこと言い放っている。運よく知っていたから良いようなものだが少女が言っている白焔と同一の効果を持つ魔法なのか分からない。
「白焔なら知ってるというか使える。だけどあれって・・・・・・」
「そんな事ある訳ない!! 白焔は私達天狐族だけが使える魔法なのに。嘘ばかり言わないでよ!!」
少女は嘘を言っていると思っているようで殺気立った目で睨みつけてくる。白焔を修得した当時、攻略サイトなど散々調べてみたが情報が一切存在しなかった。
それでも修得したからには使ってみたいという衝動にかられ何度か炎耐性を持つ魔物で試した経験が有るのだが、跡形も残らず燃え尽きるという散々たる結果だったこともありプレイヤーやNPCに対して使用したことが一度もない。
プレイヤーやNPCに対してならば治癒効果を発揮したかもしれないが試す機会が得られないまま現在に至っている。
「嘘じゃないって証明するのは簡単なんだけど・・・・・・ 実は昔使ったときに炎耐性を持つ魔物を焼き殺しちゃってさ。それ以来、一度も使ってないんだよね」
「嘘⁉ そんな・・・・・・」
驚き困惑したような表情を見せる少女が何に反応を示したのか理由は分からない。だが希望を失い死を懇願していた時とは明らかに違っている。
「お願いします。じいを・・・・・・ じいを助けてください」
何度も助けてと懇願する少女の瞳から溢れ出た涙が頬を伝い落ちて行く。そんな少女にかける言葉は一つしかないことは分かっているのだが焼け死んだ中位火竜のことが脳裏をよぎり言葉を詰まらせる。
少女は確信を得たからこそ希望を見出したのだろう。老人の命を奪ってしまうかもしれないという恐怖、確信を得られないことでの不安、そんな感情が少女を見ていると不思議と消えていく。
「【白焔】」
白い炎が老人の全身を包み込んでいく。以前使用したときとのような近寄れないほどの熱量や荒々しさ、拒絶感のようなものは全く感じられず、穏やかで温かく老人を優しく包み込んでいるようにも見える。
そして白き炎は意思でもあるかようにゆっくりと少女へと燃え移り全身を包み込んでいった。少女は少し驚いているようだったが何か呟いた後、ゆっくりと瞳を閉じた。
何を言ったのか声が小さく聞き取れなかったが表情は穏やかで微笑んでいるように思える。苦痛に満ちた表情を浮かべていた老人も穏やかな表情をしており既に傷口は完全に塞がっている。
「一時はどうなるかと思ったけど傷口も塞がったし大丈夫そうだな。ラミアは・・・・・・」
ラミアもかなりダメージを負っていたように思っていたのだがプレイヤーとの戦いそのものが夢でも見ていたのかと思えるほど切傷どころか着物に汚れ一つ残っていなかった。
「ところであの獣人どうなさいますか?」
そんな心配をよそに嬉しそうな表情をしているラミアが指さす先には無残に首を刎ねられた骸が横たわっている。
フルダイブ型RPGではプレイヤーが致命傷を負った場合、十秒の死亡エフェクトが発生し時間内に蘇生または回復できなければリスポーンポイントへ強制送還され蘇生という流れが一般的。
しかしユリウスではプレイヤーは心臓と呼ばれる心臓のような器官を持ち致命傷のような深刻なダメージを負うと停止、同時にアバターの崩壊が始まり消滅、強制ログアウトされ二度とログインすることができなくなる。
魔物は素材やアイテムをドロップし消滅、ただし絶界の魔物だけは消滅もアイテムをドロップすることもなく素材は自力で解体しなければならず慣れるまで苦労した経験がある。
骸に近寄り体を調べてみると心臓が完全に停止しているにも拘らず崩壊が始まった形跡がない。死体が消滅しないことはリアリティの追求だと思えば我慢できなくもないが戦闘中、僅かに感じた痛みだけは看過できない。
「あの・・・・・・ お姉さん。助けてくれてありがとうございます」
唐突に背後から聞こえてきた少女の声は、まだ治癒しきれていないのか元気が無く落ち込んでいるように思える。声をかけようと思いもしたがラミアと少女の会話に割って入ることを避け話しかけるタイミングを見計らうことにした。
「私、嘘だと決めつけて・・・・・・ それに嘘つきだなんてヒドイこと・・・・・・ 口を利いてもらえなくて当然だと思います。だけど、ありがとうって。それだけ伝えたくて・・・・・・」
見た感じ十歳くらいだろうか。ルーナよりも幼く見える少女が良心の呵責(かしゃく)に苛(さいな)まれ心を痛めている。これだけで好感度が青天井に急上昇していく。
「静かにせぬか。確かに不敬極まりなく万死に値する言動ではあるが、颯斗様は些末事で立腹するほど狭量ではない」
状況を考えれば少女の反応は自然なことで何の問題もない。ましてや万死になど絶対に値しない。ラミアの忠誠心の表れだと言えば聞こえが良いが狂信じみてくると対応に困ってしまう。
ただ今回の戦いを通じ今後の国防を揺るがしかねない重大な欠点とも言えることに気がつくことができた。早急に確認しなければならない重要なことだけに老人が目覚めるのを待っていられない。
探知(サーチ)範囲内にプレイヤーや魔物、悪意を持つ者の反応は無いが絶対に安全だと言い切れない以上、未だ意識が戻らない老人と少女を置き去りにすることができない。
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