【R18】【挿絵多い】ラバーマスクガール

まへまへ

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第7話 異世界の女王

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数日後の夜。

順子は寮の自室で携帯電話を握りしめ、深呼吸を繰り返していた。

表示された番号は、匿名の掲示板に書かれていた倶楽部のもの。

指先が震えながらも、発信ボタンを押した。

「……はい、ラウンジ○○でございます」

低く落ち着いた声が受話器から響く。

順子はどもりながらも、紹介を受けて興味を持ったと伝えた。

「……学生の方ですね。面接というより、まずは雰囲気を見ていただくのが早いでしょう。数日後の夜にお越しください」

電話を切った瞬間、心臓が早鐘のように打ち続けた。
(……本当に、電話しっちゃった……)

――そして指定された日。

繁華街から少し外れたビルの一室。

厚い扉の前で足が止まる。

高級感のある真鍮の取っ手を前に、呼吸が浅くなる。
(戻ろうかな……でも……整形費用のことを思い出して……)

勇気を振り絞り、順子は扉を押した。

「お待ちしておりました」

出迎えたのは、タキシード姿の中年の男性。

落ち着いた笑顔を浮かべ、柔らかな声で言う。

「どうぞ、こちらへ」

バックヤードを抜け、奥へと案内される。

重厚なカーテンが開かれると、そこには別世界が広がっていた。

高級ホテルのラウンジを思わせる広々とした空間。

シャンデリアの光が柔らかく反射し、ゆったりと流れるジャズの旋律。

革張りのソファには、スーツ姿の紳士たちがグラスを傾けている。

「……すごい……」

思わず順子の唇から漏れる。

その視線の先で、彼女は息を呑んだ。

全身を漆黒のラバースーツに包み、ハイヒールのロングブーツを履いた女性が、口だけを隠すのものではなく、完全に頭と顔を覆う黒いラバーマスクをつけたままグラスを運んでいたのだ。

艶やかな素材がライトを受けて妖しく光り、彼女の動きに合わせてきしむような質感が漂う。
(……本当に……いるんだ……!)

店長は微笑みながら囁いた。

「ここは“素顔を隠して楽しむ世界”です。あなたのように、顔を見せたくない、別の自分でいたい――そういう方にこそ居場所がある」

順子の鼓動は激しく高鳴っていた。

怖さと興奮、その両方に揺さぶられながら、彼女はその光景から目を離せなかった。

先日の電話のやりとりで、今夜は見学と気に入れば体験入店に向けた準備が目的だった。

店長が柔らかい笑みを浮かべながら説明する。

「よければ順子さん、体験入店に備えて、ボディサイズを詳しく測らせていただきたいんです」

「ラバースーツは体にぴったりフィットしてこそ、美しく見えるものですから」

順子は少し緊張して声を潜める。

「……はい。体験入店をお願いします。」

店長は手を差し出し、安心させるように続ける。

「でも心配はいりません。私ではなく、うちのリーダー格の女性にお願いするので、優しく測りますよ」

順子の視線が少し揺れた。

「リーダー格の方……」と小さく呟くと、店長は静かに頷き、ドアの向こうに声をかけた。

カツ、カツ――。

高いヒールの音が近づき、やがて扉が開く。

そこに現れた女性の姿を見て、順子は息を呑んだ。

黒光りするラバーレオタードが、ボディラインに隙なくフィットしている。

その上にアンダーバストコルセットが締め上げられ、胸元から腰の曲線が強調されていた。

脚には黒のパンティストッキング、さらにその上に網タイツを重ね、妖艶な光沢と透け感が織りなすコントラスト。

太腿から足元へと続くニーハイ丈のエナメルブーツは艶やかに輝き、存在感を放っていた。

そして何より目を引いたのは、そのマスク。

艶やかな黒のラバーマスクの上からシルバーのフェイスカバーを合わせ、さらにマスクの上から流れるように被せられた長いシルバーのウィッグ。

ラバーの黒とシルバーの対比が、圧倒的な非日常の美しさを作り上げていた。



「……すごい……」

順子は思わず小さく呟き、目を離せなかった。

他のキャストたちとは明らかに違う。

その姿には威厳と気品があり、ただのセクシーさを超えて、まるで異世界の女王のような圧倒的存在感があった。
(こんな人が……リーダー格……)

頬が自然に熱を帯び、心臓が早鐘を打つ。

コンプレックスを抱え、顔を覆うことに憧れてきた順子にとって、その姿はただの「憧れ」ではなく――

自分もこうなりたい、と強烈に心を揺さぶるものだった。

順子は完全に見とれていた。

女性はマスクで顔を覆っているが、目元から柔らかい視線が順子に向けられていた。

女性は静かに順子の前に立ち、優しい声で話しかける。

「こんばんは、順子さん。今日の準備でお手伝いさせてもらいます。無理に何かをさせることはありません。あなたの意思を最優先しますからね」

順子は胸が高鳴り、手に汗をかきながらも小さく頷く。

「……お願いします」

女性はにっこりと微笑み、順子の肩にそっと手を置く。

「大丈夫ですよ。ここでは、あなたのペースで進めればいいんです」

順子は深く息を吸い込み、覚悟を決めるように頷いた。

店長に案内され、順子はリーダー格の女性とともに更衣室へ向かった。

「ここでサイズを測ります。服を脱いで下着姿になっていただけますか?」

順子は胸の奥がざわつくのを感じながら、頷き、指示に従った。

薄い下着姿になった順子の前に、黒光りのラバースーツ姿の女性が立つ。

全てをマスクに隠された顔の表情は見えないが、体の動きや所作から漂う品格と自信に、順子は息をのむ。

女性は優しく微笑むように声をかけた。

「順子さん、とてもきれいなボディラインですね。絶対にラバースーツも似合いますよ」

順子は頬が熱くなり、思わず下を向いてしまう。

だが、目の端でその女性の黒光りした姿に見入ってしまう自分がいた。
(……美しい……この人は、どんな顔をしてるんだろう。きっと綺麗な人なんだろうな……)

女性は順子の肩や腰、腕のラインを丁寧に測りながら、時折励ますように声をかける。

「動きやすさも大事ですからね。順子さんの体型なら、マスクとスーツでしっかり魅力を出せますよ」

順子は羞恥心と、なぜか胸の奥が熱くなる興奮を同時に感じた。

体を測られながらも、目の前に立つ女性の存在感に圧倒され、心が揺れる。
(……この人のように、私も堂々と立てるようになるのかな……)

測定はゆっくりと丁寧に進む。

順子は緊張と恥ずかしさを抱えつつ、未知の世界への一歩を踏み出している自分を意識していた。

採寸が終わり、ラバースーツ姿の女性は柔らかく順子に声をかけた。

「今日はここまでにしましょう。初めてで疲れたでしょう。」

順子は下着の上から服を着直しながら、小さく頷いた。

「……はい。なんだか、頭がぐるぐるして……」

女性は優しく笑い、店長の元へと案内してくれる。

店長は手帳を開きながら言った。

「では、体験入店の日を決めましょうか。順子さんのご都合に合わせます」

順子は緊張で喉が渇きながらも、授業の予定を思い出しつつ日を指定した。

店長は頷き、記録をつける。

その横で、リーダー格の女性が静かに言った。

「その日に、あなたにぴったりのラバースーツとマスクを用意しておきます。きっと、順子さんに似合いますよ」

その一言が、順子の胸を強く打った。
(……私に似合うもの……この人が選んでくれる……)

店を出ると、夜風が頬を冷たく撫でた。

だが順子の身体は火照ったままだった。

寮の部屋に戻っても、頭の中には黒光りするスーツの女性の姿や、店内の異様な空気が繰り返しよみがえる。

布団に入っても心臓の鼓動が止まらない。
(……怖い。でも……楽しみで仕方ない……)

その夜、順子は興奮と混乱で眠れぬまま、体験入店の日をただ心待ちにするのだった。


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