【R18】【挿絵多い】ラバーマスクガール

まへまへ

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第19話 継ぐ者の姿

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フロアショーを数日後に控えた夜。

閉店後の控え室に呼び出されたハルカは、胸を高鳴らせながらアキの前に立っていた。

「今日は特別よ。……スーツを着る心得を、あなただけに教えるわ」

アキはゆっくりとクローゼットを開ける。

中には彼女専用の、艶やかなラバースーツがたくさん吊るされていた。

照明を受けて黒光りするその姿は、まるで生き物のように存在感を放っている。

「このスーツはね、ただの衣装じゃない。身に纏った瞬間から“自分”を消して、“象徴”にならなきゃいけないの」

アキは振り返り、真剣な目でハルカを見据えた。

「象徴……」

ハルカは小さく呟いた。

アキは頷きながら、指先でスーツの表面を撫でる。

「ラバーの圧迫感に酔うんじゃない。観客に見られる視線、そのすべてを“快楽”に変えるの。そうすれば、立っているだけで場を支配できる」

アキは一歩近づき、ハルカの顎を軽く持ち上げる。

「目線も大事。どんなにマスクで覆われても、瞳の熱だけは隠せない。媚びるのではなく、“支配するように”見るのよ」

ハルカは息を呑んだ。

アキの指導は厳しいが、その奥に優しさがあった。
(この人は……本気で私を後継者にしようとしているんだ)

アキはスーツを取り出し、ハルカの胸元に押し当てる。

「次に着るときは、あなたの体にこれが沿う。その瞬間、順子でも、ラバーマスクガールでもない……“ハルカ”として完成するの」

ハルカの喉が震えた。

胸の奥から熱が広がり、期待と恐怖が入り混じる。

「……はい。私、覚悟します」

アキは満足げに微笑んだ。

「その答えが聞きたかった。――じゃあ、フロアショーで証明してみせて」

ハルカはこくりと頷き、両手を強く握りしめた。

ラバーの女王――アキの後を継ぐために。


ーーーーーーーーーーーーーーー


フロアショー当日の倶楽部の更衣室。

空気が張り詰め、緊張感に包まれていた。

鏡の前に立ったハルカは、黒いパンストを丁寧に引き上げる。

その上から網タイツを重ねると、脚のラインが妖艶に浮き出た。

「……次はこれ」

アキが差し出したのは、漆黒のレオタード型スーツ。

光を受けて艶めくラバーが、まるで意思を持っているかのように彼女を誘う。

ハルカは深呼吸をして、脚から順にスーツを通していった。

二の腕を覆い、肩を包み、胸を持ち上げるように張り付いていく。

全身を滑らかに覆った瞬間、まるで“アキの姿”に変わっていく錯覚に囚われる。

「……!」

鏡の中には、もう“順子”でも“ラバーマスクガール”でもない。

艶めくボディラインを強調した、リーダー格の女――アキの影を宿したハルカがいた。

「そのスーツを着れるのは、一人だけ。あなたが着るなら、私は着れないの」

アキは柔らかく微笑みながら言った。

その言葉にハルカの胸は高鳴る。

「……私が、アキになる」

小さく呟いた唇が震える。

熱に浮かされたような高揚感が、全身を駆け巡っていく。

最後の仕上げに、赤いカラコンを入れる。

目の奥から妖しい光が灯り、視線そのものが武器へと変わる。

「……ウィッグは?」

ハルカが尋ねると、アキは静かに更衣室の扉を開け、黒い箱を取り出した。

「これを被りなさい」

蓋を開けると、中には深みのある銀髪のウィッグ。

しかしアキの髪型とは少し違う。流れるような長さの中に、妖艶さをさらに強調する前髪が特徴だった。

ハルカは震える指でそれを頭に載せ、前髪を整える。

鏡の中に現れた自分の姿を見て、思わず息を呑んだ。

――似ている。でも、少し違う。



アキの影を継ぎながら、自分自身の“妖艶さ”が滲み出ている。

「……これはこれで、悪くない」

アキが低く囁く。

その声に背中を押され、ハルカの唇が自然に微笑んだ。

ついに“アキの後を継ぐ者”として、フロアショーに立つ準備が整ったのだった。




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