【R18】【挿絵多い】ラバーマスクガール

まへまへ

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第26話 本当の幸せ

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食事を終えた二人は並んで夜の街を歩いていた。

週末の街は人で溢れ、色とりどりのネオンが濡れたアスファルトに映り込んでいる。

「……初めて、こうやって歩くな」

悟が小さく笑う。

「うん……」



順子は隣に並ぶ悟の横顔を盗み見て、胸がじんわり熱くなる。

ふと、悟が視線をネオン街に移し、少し茶化すように口を開いた。

「でもさ、整形手術なんて、すごくお金かかったんだろ?……まさか!」

悟は笑いながら、光に彩られた街を指で指す。

「東京で、こういうお店で働いてるんじゃないよね?」

冗談混じりの問いかけ。

だけど――順子の心臓は強く跳ねた。

「っ……!」

笑ってごまかそうとした瞬間、胸の奥に鋭い痛みが走る。

順子――いや、心の中の順子が叫んでいた。
(言えない!絶対に言えない!)

――完全なラバー姿で、アキさんの乳を揉みしだいて、喘ぎ声を客に聞かせていたなんて。
(死んでも、悟には言えない……!)

順子は顔を横に向け、必死で平静を装いながら笑った。

「ちょっと!なにそれ!冗談でもやめてよ、そんなこと!」

悟は「ごめんごめん」と笑いながら手を振った。

でも順子の笑顔は強張っていて、その胸の奥では――

悟に見透かされるんじゃないかという恐怖と、それでも隣を歩ける幸福が、複雑に入り混じっていた。

順子は、悟の冗談にまだ胸がざわついていた。

けれど――自分ばかり攻められているようで、言葉がこぼれる。

「……そっちこそどうなのよ?」

悟がきょとんとした顔でこちらを見る。

順子の頭には、あの配信の光景がフラッシュバックする。

――乱立するコメント。
――“J子。キスしてほしい。”
――画面越しの視線。
(まさか、悟が……)

思わず口が勝手に動いていた。

「変な動画とか、見てるんでしょ?……例えば――」

順子はわざと声を低くして、笑いながら言った。

「ピッカピカのラバースーツ着た女とか?」

一瞬、悟の足が止まる。

「……えっ?」

返ってきた反応は、本当に寝耳に水を浴びせられたような驚きだった。

順子は悟の顔を探る。

その狼狽ぶりに、自分の胸の鼓動がさらに早まる。
(え……まさか、図星? でも、そんな――!)

順子は慌てて笑ってごまかそうとした。

「な、なんでもない!冗談よ、冗談!」

夜のネオンが二人の間を照らし、順子の頬が赤く染まる。

心の奥では、まるで氷の上を歩いているような危うさに震えていた。

悟は立ち止まり、耳まで真っ赤に染めながら口を開いた。

「……あたり。なんでわかった?」

「えっ……」順子は思わず立ち止まる。

悟は苦笑しながら、ポケットからスマホを取り出した。

「いや、バカなんだよ俺。ほんとバカ。……正直に言うとさ、俺、ラバーマスクガールっていう配信者、めっちゃハマってて」

画面には、あの――自分自身の配信アカウントが映っていた。

アイコンも、フォロワー数も、見慣れすぎている数字。

順子の心臓が止まる。

「でな?俺、勝手に……順子かもしれないって思ってコメントしちゃったんだ」

悟は照れ隠しのように笑う。

「バカだよなぁ、ほんとに。でも――」

悟はふっと視線を順子に向け、目を細める。

「でもこうやって順子に会えたから、もうそれだけで十分なんだよ」

順子は視界が揺れるのを感じた。

顔が熱い。呼吸もできない。

両手をぎゅっと握りしめ、必死にうつむく。
(言えない……絶対言えない!私が、そのラバーマスクガールだなんて……!)

ネオンの光が順子の頬を赤く照らす。

悟の「正直さ」が胸を突き刺し、順子の「絶対言えない!」という叫びが心の奥で反響していた。

悟は順子の手をそっと握り、少し緊張した声で言った。

「……今度、機会があったら東京に会いに行ってもいい?」

順子は目を見開き、胸が高鳴る。

「……もちろん!」

二人の距離が自然に縮まる。

ネオンの光に照らされて、順子は悟の瞳に自分の全てを委ねた。

そして、初めての唇が重なった。

柔らかく、温かく、でも確かに心を震わせるキス。

順子は幸せでいっぱいになり、涙が頬を伝う。

「……ああ、やっと……」

小さな吐息を漏らしながら、二人は手を繋いだまま、しばしそのまま立ち尽くす。

時間が止まったような、夢のようなひととき。



夜も深くなり、順子は理恵の家に帰ることに。

心の中は幸せでいっぱい。

初めて悟に触れられ、愛され、受け入れられた――その感覚に、胸が熱く高鳴った。

誰も知らない自分の秘密も、今はどうでもよくなるほど、幸せの絶頂だった。

順子の瞳には、涙とともに希望の光が宿っていた。

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