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第27話 東北幕内弁当
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翌朝、順子は東京行きの新幹線に乗るため、駅のロータリーに向かっていた。
すると、見慣れた笑顔が目に入る。
「順子!」
悟が駆け寄ってきた。
「えっ……悟……!」
順子は驚きと喜びで立ちすくむ。
「……学校は? 休んだのか?」
順子が訊ねると、悟は少し照れくさそうに頭をかいた。
「うん、今日だけ休んだ。これ、渡したくて」
そう言って悟は、手に持った小さな紙袋を差し出す。
「今度ネット販売に挑戦しようと思ってる試作なんだ。俺特製の、東北幕内弁当」
紙袋の中には、色とりどりの具材が詰まった弁当箱。
順子は目を丸くして弁当を受け取る。
「わぁ……すごい、全部悟が作ったの?」
「うん、全部。味、気に入るといいな」
悟の頬が赤く染まり、少し誇らしげに微笑む。
順子はその温かさに胸がじんわり熱くなる。
「もちろん、絶対食べる……ありがとう」
二人の視線が交わる瞬間、駅のざわめきや新幹線の音さえも遠くに感じられた。
小さな弁当箱に詰まったのは、料理だけでなく――悟の気持ちそのものだった。
悟と電話番号を交換し、別れた後、バスを乗りづいでターミナル駅に着く。
新幹線の座席に腰を下ろした順子は、手にした弁当箱をそっと膝の上に置いた。
外の景色が流れる中、まだ駅の喧騒の余韻が心に残っている。
小さな蓋を開けると、色とりどりの具材が美しく並んでいた。
手作りの温かみが、包み込むように香る。
「……悟が、作ったんだ……」
順子は弁当箱の蓋に軽く触れ、ふっと笑みを浮かべる。
高校時代の思い出、そして昨日の再会――
すべてが胸の中で繋がり、じんわりと温かく広がる。
箸を手に取り、ひと口食べる。
「……うん、最高……」
味のひとつひとつに、悟の気持ちが乗っているようで、順子は目を閉じて、心の中でそっと呟いた。
(悟……見てくれてたんだ……私のこと、ずっと……)
遠くで景色が流れるように、順子の心も未来へと動き始めた。
うとうとし始めた順子の脳裏に、倶楽部での自分の姿が浮かび上がってきた。
(ハッ!!)
目が覚める。
ラバーに全身を包まれ、ハルカとして配信していた夜――
赤いライトに照らされ、アキと絡み合い、あの倒錯的な台詞を吐いていた自分。
悟が見ていたラバーマスクガールの配信……
あれが私だと、悟は気づいてなくても、画面の向こうで見ていた。
その事実に気づいた瞬間、全身に冷たいものが走る。
(うそ……悟、あの姿も見てたの……?)
胸の奥が焼けるように熱くなり、同時に羞恥で身体が硬直する。
顔が真っ赤になって、心臓が早鐘のように鳴った。
(やだ……恥ずかしい……死ぬほど恥ずかしい……!)
(絶対言えない!絶対言えない!)
順子は両手で顔を覆い、座席にうずくまった。
――頭の中で最悪の妄想が始まる。
黒いラバーに包まれた自分。
光を反射して艶めく姿のまま、悟の前に立っている。
悟は目を見開き、顔を引きつらせて一歩下がった。
「……順子? なに、それ……?」
静寂。
その一言が、胸を鋭く貫いた。
(違うの、悟……これは違うの……!)
必死に言葉を探すけれど、何も出てこない。
悟は苦笑しながら首を振る。
「ごめん……俺、やっぱり無理だ。こんな……」――「変な人とは、付き合えないよ」
その言葉とともに、順子の頭の中の悟は背を向けて歩き去っていく。
「やだ……やだよ……悟……」
順子ははっとして我に返る。
(……バカ。私、何考えてるの)
(悟はそんなこと言わない。あの人は……そんな人じゃない)
それでも、心の奥に残る不安の影は消えなかった。
悟が知ってしまったら――
本当の私を、嫌いになってしまうのだろうか。
幸せの絶頂にいたはずなのに、今は羞恥と不安がごちゃ混ぜになって胸の奥で暴れている。
順子は後悔の念に囚われていた。
すると、見慣れた笑顔が目に入る。
「順子!」
悟が駆け寄ってきた。
「えっ……悟……!」
順子は驚きと喜びで立ちすくむ。
「……学校は? 休んだのか?」
順子が訊ねると、悟は少し照れくさそうに頭をかいた。
「うん、今日だけ休んだ。これ、渡したくて」
そう言って悟は、手に持った小さな紙袋を差し出す。
「今度ネット販売に挑戦しようと思ってる試作なんだ。俺特製の、東北幕内弁当」
紙袋の中には、色とりどりの具材が詰まった弁当箱。
順子は目を丸くして弁当を受け取る。
「わぁ……すごい、全部悟が作ったの?」
「うん、全部。味、気に入るといいな」
悟の頬が赤く染まり、少し誇らしげに微笑む。
順子はその温かさに胸がじんわり熱くなる。
「もちろん、絶対食べる……ありがとう」
二人の視線が交わる瞬間、駅のざわめきや新幹線の音さえも遠くに感じられた。
小さな弁当箱に詰まったのは、料理だけでなく――悟の気持ちそのものだった。
悟と電話番号を交換し、別れた後、バスを乗りづいでターミナル駅に着く。
新幹線の座席に腰を下ろした順子は、手にした弁当箱をそっと膝の上に置いた。
外の景色が流れる中、まだ駅の喧騒の余韻が心に残っている。
小さな蓋を開けると、色とりどりの具材が美しく並んでいた。
手作りの温かみが、包み込むように香る。
「……悟が、作ったんだ……」
順子は弁当箱の蓋に軽く触れ、ふっと笑みを浮かべる。
高校時代の思い出、そして昨日の再会――
すべてが胸の中で繋がり、じんわりと温かく広がる。
箸を手に取り、ひと口食べる。
「……うん、最高……」
味のひとつひとつに、悟の気持ちが乗っているようで、順子は目を閉じて、心の中でそっと呟いた。
(悟……見てくれてたんだ……私のこと、ずっと……)
遠くで景色が流れるように、順子の心も未来へと動き始めた。
うとうとし始めた順子の脳裏に、倶楽部での自分の姿が浮かび上がってきた。
(ハッ!!)
目が覚める。
ラバーに全身を包まれ、ハルカとして配信していた夜――
赤いライトに照らされ、アキと絡み合い、あの倒錯的な台詞を吐いていた自分。
悟が見ていたラバーマスクガールの配信……
あれが私だと、悟は気づいてなくても、画面の向こうで見ていた。
その事実に気づいた瞬間、全身に冷たいものが走る。
(うそ……悟、あの姿も見てたの……?)
胸の奥が焼けるように熱くなり、同時に羞恥で身体が硬直する。
顔が真っ赤になって、心臓が早鐘のように鳴った。
(やだ……恥ずかしい……死ぬほど恥ずかしい……!)
(絶対言えない!絶対言えない!)
順子は両手で顔を覆い、座席にうずくまった。
――頭の中で最悪の妄想が始まる。
黒いラバーに包まれた自分。
光を反射して艶めく姿のまま、悟の前に立っている。
悟は目を見開き、顔を引きつらせて一歩下がった。
「……順子? なに、それ……?」
静寂。
その一言が、胸を鋭く貫いた。
(違うの、悟……これは違うの……!)
必死に言葉を探すけれど、何も出てこない。
悟は苦笑しながら首を振る。
「ごめん……俺、やっぱり無理だ。こんな……」――「変な人とは、付き合えないよ」
その言葉とともに、順子の頭の中の悟は背を向けて歩き去っていく。
「やだ……やだよ……悟……」
順子ははっとして我に返る。
(……バカ。私、何考えてるの)
(悟はそんなこと言わない。あの人は……そんな人じゃない)
それでも、心の奥に残る不安の影は消えなかった。
悟が知ってしまったら――
本当の私を、嫌いになってしまうのだろうか。
幸せの絶頂にいたはずなのに、今は羞恥と不安がごちゃ混ぜになって胸の奥で暴れている。
順子は後悔の念に囚われていた。
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