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第41話 悟へのSNS配信
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控え室の中、笑い声が一段落したあと、キャストのひとりが箱を手に取りながら言った。
「ねぇ、これ……どうする?お礼、ちゃんとしなきゃじゃない?」
「そうだよねー。手紙とか書く?それとも……」
もう一人が、スマホを掲げながら冗談めかして言う。
「集合写真とか撮って送る?“いただきます♡”みたいなやつ」
「ちょ、ちょっと!」
別の子が慌てて止める。
「この格好で⁉ ラバー姿で⁉ 絶対誤解されるって!」
するとアキが腕を組んで、悪戯っぽく笑った。
「誤解じゃないんじゃない? “この格好”の方が正解なんでしょ、ねぇ――ハルカ?」
一斉に視線がハルカに集まる。
ラバーのマスク越しでもわかるくらい、彼女の肩がピクリと跳ねた。
「えっ……えっと……」
一瞬、返答に詰まったが、覚悟を決めたように小さく笑った。
「う、うん……たぶん、この姿が……いちばん見たいんだと思う……」
「えーーーっ!? どういうこと!?」
「なにそれー!彼氏さん、もしかして……」
「え?ラバー姿フェチ?」
アキはニヤニヤを隠そうともせず、すかさず被せる。
「そうそう、悟くんは――ラバーフェチなんだって~♡」
「ちょっ、アキさん言わないでぇーっ!」
ハルカがマスクの頬を両手で押さえ、身をよじる。
その仕草がまた艶っぽくて、控え室は一瞬の静寂のあと――
「キャーッハハハハハ!」
「最高!」
「かわいすぎる!」
「やばい、泣くほど笑った!」
笑いの渦に包まれ、アキが涙を拭きながら言う。
「じゃ、決まりね。みんなで“この格好”のまま集合写真撮るわよ!」
「えぇー!」
「ちょ、やめてー!」
「もう無理ぃ!」
そんな賑やかな中、ハルカ――順子は心の中でそっと呟いた。
(悟……ほんとに、こんな私でいいの?)
でも次の瞬間、鏡に映るラバー姿の自分を見て、自然と笑みがこぼれた。
(ううん。いいんだ。今の私は――この姿で、ちゃんと笑えてる)
「じゃあ撮る人、誰にする?」
アキがニヤリと笑って、ハルカの方を見る。
「もちろん――ハルカでしょ?」
「え、私⁉」
「だって、彼に見せたいんでしょ?」
周囲が「きゃーっ!」と騒ぎ立てる中、ハルカは真っ赤になりながらカメラを構える。
「じゃ、撮るよ……はい、ポーズ!」
パシャッ。
ラバー姿のキャストたちが弁当を並べたテーブルにぐるりと座っている写真が撮れた。
「ねぇ、ハルカは一緒に入らなくていいの?」
カメラを覗き込んでいた子が首を傾げる。
その瞬間、アキが察したように、いたずらっぽく口角を上げた。
「いいの、いいの。その方が都合がいいのよ」
「え?なんで?」
「だってね――」
アキはハルカの肩を軽く叩きながらニヤニヤ。
「仕事が終わって、一人になったときに……その写真、彼に“見せる”んでしょ?ね?ハルカ?」
「ちょ、ちょっとアキさんっ!」
マスク越しに耳まで真っ赤にして、ハルカは身をよじる。
控え室は爆笑の渦。
「やだー最高!」
「アキさん天才!」
「悟くん、絶対喜ぶやつ!」
笑いながらも、ハルカはそっと胸の前で手を組んだ。
(悟……みんな、あなたの話になると本当に明るくなるんだよ)
(きっと、あなたが作ったお弁当の味のせいだね)
その胸の奥に広がる温かさは、ラバー越しでもはっきりと伝わっていた。
ーーーーーー
更衣室には、仕事終わりの静けさが戻っていた。
鏡の前でハルカは、まだラバー姿のままスマホを手に取る。
「……悟、もう寝ちゃったかな」
一人更衣室でL◯NEを開く。
添付するのは、さっき皆で撮った集合写真。
メッセージを打ち込む。
「お弁当ありがとう!皆んな喜んでたよ。悟の話題で盛り上がったんだ。」
送信してすぐに、“既読”の文字。
間を置かずに返信が届く。
「届いた? 良かったぁ。何々この写真!すげ~!コレクションに保存しちゃおう。」
画面を見つめながら、ハルカは思わずクスッと笑った。
(もう……何でも“コレクション”なんだから)
少し迷ったあと、イヤフォンを取り出して耳に差し込む。
そして、そっと動画通話のボタンに指を滑らせた。
数秒後、悟の顔が画面に映る。
驚いたように目を瞬かせて、やがて優しく微笑んだ。
「こんばんは、悟」
ハルカは小声で言った。
「ラバーマスクガールです」
悟は少し照れくさそうに笑う。
「え、本物が出た……」
「今夜はね、特別に悟だけに配信してるの」
照明の柔らかい光が、彼女のマスクの艶に反射する。
それは、いつものステージとは違う――誰にも見せない、静かで穏やかな時間だった。
悟の声が、少し掠れたように届く。
「……ありがとう。すごく、嬉しい」
その言葉を聞いて、ハルカの胸の奥に温かいものが広がった。
画面の中の悟は、少し寝癖のついた髪で、いつものように優しい顔をしている。
「悟のラバー好き、みんなにバレちゃったよ」
ハルカがいたずらっぽく笑う。
「えぇ~っ!」
悟が顔を覆った。
「マジで?どんな感じだった?」
「でもね、みんな悟のこと褒めてたよ」
ハルカは小さく微笑んで続けた。
「優しそうだとか、料理上手そうだとか。イケメンだって。」
「……それ、照れるな」
悟が頭をかきながら、ちょっと俯いた。
「でも、順子の声、元気そうでよかった」
「うん、悟に会えたから元気になった」
ハルカは画面越しに手を振る。
悟も笑いながら両手を広げ――
「よし、ぎゅーって……」
空中を抱きしめるような仕草をして、ふざけて見せる。
「なにそれ!」
ハルカは吹き出した。
「空振りじゃん!」
「だって、本当は抱きしめたいんだもん」
悟の照れた声に、ハルカの胸の奥がきゅっと締めつけられる。
「あっ……もう帰らなきゃ」
ハルカが静かに言うと、悟は「お疲れ様」と優しく応えた。
だが、悟が画面のボタンに指を伸ばした瞬間――
「ちょっと待って」
ハルカの声が止めた。
ライトの光の中で、彼女はゆっくりと手を上げる。
指先がマスクの縁をつかみ――静かに外す。
ラバーの下から現れたのは、素顔の順子だった。
疲れの影も、笑顔も、すべてがそこにあった。
画面越しに、悟が言葉を失う。
順子は少しだけ俯いて、唇を寄せる。
「おやすみ、悟」
そのまま、カメラに向かって――そっとキスをするふりをした。
画面が静かに揺れ、光が滲んで消える。
夜の更衣室には、スマホの黒い画面と、微かな笑みだけが残っていた。
「ねぇ、これ……どうする?お礼、ちゃんとしなきゃじゃない?」
「そうだよねー。手紙とか書く?それとも……」
もう一人が、スマホを掲げながら冗談めかして言う。
「集合写真とか撮って送る?“いただきます♡”みたいなやつ」
「ちょ、ちょっと!」
別の子が慌てて止める。
「この格好で⁉ ラバー姿で⁉ 絶対誤解されるって!」
するとアキが腕を組んで、悪戯っぽく笑った。
「誤解じゃないんじゃない? “この格好”の方が正解なんでしょ、ねぇ――ハルカ?」
一斉に視線がハルカに集まる。
ラバーのマスク越しでもわかるくらい、彼女の肩がピクリと跳ねた。
「えっ……えっと……」
一瞬、返答に詰まったが、覚悟を決めたように小さく笑った。
「う、うん……たぶん、この姿が……いちばん見たいんだと思う……」
「えーーーっ!? どういうこと!?」
「なにそれー!彼氏さん、もしかして……」
「え?ラバー姿フェチ?」
アキはニヤニヤを隠そうともせず、すかさず被せる。
「そうそう、悟くんは――ラバーフェチなんだって~♡」
「ちょっ、アキさん言わないでぇーっ!」
ハルカがマスクの頬を両手で押さえ、身をよじる。
その仕草がまた艶っぽくて、控え室は一瞬の静寂のあと――
「キャーッハハハハハ!」
「最高!」
「かわいすぎる!」
「やばい、泣くほど笑った!」
笑いの渦に包まれ、アキが涙を拭きながら言う。
「じゃ、決まりね。みんなで“この格好”のまま集合写真撮るわよ!」
「えぇー!」
「ちょ、やめてー!」
「もう無理ぃ!」
そんな賑やかな中、ハルカ――順子は心の中でそっと呟いた。
(悟……ほんとに、こんな私でいいの?)
でも次の瞬間、鏡に映るラバー姿の自分を見て、自然と笑みがこぼれた。
(ううん。いいんだ。今の私は――この姿で、ちゃんと笑えてる)
「じゃあ撮る人、誰にする?」
アキがニヤリと笑って、ハルカの方を見る。
「もちろん――ハルカでしょ?」
「え、私⁉」
「だって、彼に見せたいんでしょ?」
周囲が「きゃーっ!」と騒ぎ立てる中、ハルカは真っ赤になりながらカメラを構える。
「じゃ、撮るよ……はい、ポーズ!」
パシャッ。
ラバー姿のキャストたちが弁当を並べたテーブルにぐるりと座っている写真が撮れた。
「ねぇ、ハルカは一緒に入らなくていいの?」
カメラを覗き込んでいた子が首を傾げる。
その瞬間、アキが察したように、いたずらっぽく口角を上げた。
「いいの、いいの。その方が都合がいいのよ」
「え?なんで?」
「だってね――」
アキはハルカの肩を軽く叩きながらニヤニヤ。
「仕事が終わって、一人になったときに……その写真、彼に“見せる”んでしょ?ね?ハルカ?」
「ちょ、ちょっとアキさんっ!」
マスク越しに耳まで真っ赤にして、ハルカは身をよじる。
控え室は爆笑の渦。
「やだー最高!」
「アキさん天才!」
「悟くん、絶対喜ぶやつ!」
笑いながらも、ハルカはそっと胸の前で手を組んだ。
(悟……みんな、あなたの話になると本当に明るくなるんだよ)
(きっと、あなたが作ったお弁当の味のせいだね)
その胸の奥に広がる温かさは、ラバー越しでもはっきりと伝わっていた。
ーーーーーー
更衣室には、仕事終わりの静けさが戻っていた。
鏡の前でハルカは、まだラバー姿のままスマホを手に取る。
「……悟、もう寝ちゃったかな」
一人更衣室でL◯NEを開く。
添付するのは、さっき皆で撮った集合写真。
メッセージを打ち込む。
「お弁当ありがとう!皆んな喜んでたよ。悟の話題で盛り上がったんだ。」
送信してすぐに、“既読”の文字。
間を置かずに返信が届く。
「届いた? 良かったぁ。何々この写真!すげ~!コレクションに保存しちゃおう。」
画面を見つめながら、ハルカは思わずクスッと笑った。
(もう……何でも“コレクション”なんだから)
少し迷ったあと、イヤフォンを取り出して耳に差し込む。
そして、そっと動画通話のボタンに指を滑らせた。
数秒後、悟の顔が画面に映る。
驚いたように目を瞬かせて、やがて優しく微笑んだ。
「こんばんは、悟」
ハルカは小声で言った。
「ラバーマスクガールです」
悟は少し照れくさそうに笑う。
「え、本物が出た……」
「今夜はね、特別に悟だけに配信してるの」
照明の柔らかい光が、彼女のマスクの艶に反射する。
それは、いつものステージとは違う――誰にも見せない、静かで穏やかな時間だった。
悟の声が、少し掠れたように届く。
「……ありがとう。すごく、嬉しい」
その言葉を聞いて、ハルカの胸の奥に温かいものが広がった。
画面の中の悟は、少し寝癖のついた髪で、いつものように優しい顔をしている。
「悟のラバー好き、みんなにバレちゃったよ」
ハルカがいたずらっぽく笑う。
「えぇ~っ!」
悟が顔を覆った。
「マジで?どんな感じだった?」
「でもね、みんな悟のこと褒めてたよ」
ハルカは小さく微笑んで続けた。
「優しそうだとか、料理上手そうだとか。イケメンだって。」
「……それ、照れるな」
悟が頭をかきながら、ちょっと俯いた。
「でも、順子の声、元気そうでよかった」
「うん、悟に会えたから元気になった」
ハルカは画面越しに手を振る。
悟も笑いながら両手を広げ――
「よし、ぎゅーって……」
空中を抱きしめるような仕草をして、ふざけて見せる。
「なにそれ!」
ハルカは吹き出した。
「空振りじゃん!」
「だって、本当は抱きしめたいんだもん」
悟の照れた声に、ハルカの胸の奥がきゅっと締めつけられる。
「あっ……もう帰らなきゃ」
ハルカが静かに言うと、悟は「お疲れ様」と優しく応えた。
だが、悟が画面のボタンに指を伸ばした瞬間――
「ちょっと待って」
ハルカの声が止めた。
ライトの光の中で、彼女はゆっくりと手を上げる。
指先がマスクの縁をつかみ――静かに外す。
ラバーの下から現れたのは、素顔の順子だった。
疲れの影も、笑顔も、すべてがそこにあった。
画面越しに、悟が言葉を失う。
順子は少しだけ俯いて、唇を寄せる。
「おやすみ、悟」
そのまま、カメラに向かって――そっとキスをするふりをした。
画面が静かに揺れ、光が滲んで消える。
夜の更衣室には、スマホの黒い画面と、微かな笑みだけが残っていた。
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