【R18】【挿絵多い】ラバーマスクガール

まへまへ

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第41話 悟へのSNS配信

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控え室の中、笑い声が一段落したあと、キャストのひとりが箱を手に取りながら言った。

「ねぇ、これ……どうする?お礼、ちゃんとしなきゃじゃない?」

「そうだよねー。手紙とか書く?それとも……」

もう一人が、スマホを掲げながら冗談めかして言う。

「集合写真とか撮って送る?“いただきます♡”みたいなやつ」

「ちょ、ちょっと!」

別の子が慌てて止める。

「この格好で⁉ ラバー姿で⁉ 絶対誤解されるって!」

するとアキが腕を組んで、悪戯っぽく笑った。

「誤解じゃないんじゃない? “この格好”の方が正解なんでしょ、ねぇ――ハルカ?」

一斉に視線がハルカに集まる。

ラバーのマスク越しでもわかるくらい、彼女の肩がピクリと跳ねた。

「えっ……えっと……」

一瞬、返答に詰まったが、覚悟を決めたように小さく笑った。

「う、うん……たぶん、この姿が……いちばん見たいんだと思う……」

「えーーーっ!? どういうこと!?」

「なにそれー!彼氏さん、もしかして……」

「え?ラバー姿フェチ?」

アキはニヤニヤを隠そうともせず、すかさず被せる。

「そうそう、悟くんは――ラバーフェチなんだって~♡」

「ちょっ、アキさん言わないでぇーっ!」

ハルカがマスクの頬を両手で押さえ、身をよじる。

その仕草がまた艶っぽくて、控え室は一瞬の静寂のあと――

「キャーッハハハハハ!」
「最高!」
「かわいすぎる!」
「やばい、泣くほど笑った!」

笑いの渦に包まれ、アキが涙を拭きながら言う。

「じゃ、決まりね。みんなで“この格好”のまま集合写真撮るわよ!」

「えぇー!」
「ちょ、やめてー!」
「もう無理ぃ!」

そんな賑やかな中、ハルカ――順子は心の中でそっと呟いた。
(悟……ほんとに、こんな私でいいの?)

でも次の瞬間、鏡に映るラバー姿の自分を見て、自然と笑みがこぼれた。
(ううん。いいんだ。今の私は――この姿で、ちゃんと笑えてる)

「じゃあ撮る人、誰にする?」

アキがニヤリと笑って、ハルカの方を見る。

「もちろん――ハルカでしょ?」

「え、私⁉」

「だって、彼に見せたいんでしょ?」

周囲が「きゃーっ!」と騒ぎ立てる中、ハルカは真っ赤になりながらカメラを構える。

「じゃ、撮るよ……はい、ポーズ!」

パシャッ。

ラバー姿のキャストたちが弁当を並べたテーブルにぐるりと座っている写真が撮れた。



「ねぇ、ハルカは一緒に入らなくていいの?」

カメラを覗き込んでいた子が首を傾げる。

その瞬間、アキが察したように、いたずらっぽく口角を上げた。

「いいの、いいの。その方が都合がいいのよ」

「え?なんで?」

「だってね――」

アキはハルカの肩を軽く叩きながらニヤニヤ。

「仕事が終わって、一人になったときに……その写真、彼に“見せる”んでしょ?ね?ハルカ?」

「ちょ、ちょっとアキさんっ!」

マスク越しに耳まで真っ赤にして、ハルカは身をよじる。

控え室は爆笑の渦。

「やだー最高!」
「アキさん天才!」
「悟くん、絶対喜ぶやつ!」

笑いながらも、ハルカはそっと胸の前で手を組んだ。
(悟……みんな、あなたの話になると本当に明るくなるんだよ)
(きっと、あなたが作ったお弁当の味のせいだね)

その胸の奥に広がる温かさは、ラバー越しでもはっきりと伝わっていた。

ーーーーーー

更衣室には、仕事終わりの静けさが戻っていた。

鏡の前でハルカは、まだラバー姿のままスマホを手に取る。

「……悟、もう寝ちゃったかな」

一人更衣室でL◯NEを開く。

添付するのは、さっき皆で撮った集合写真。

メッセージを打ち込む。

「お弁当ありがとう!皆んな喜んでたよ。悟の話題で盛り上がったんだ。」

送信してすぐに、“既読”の文字。

間を置かずに返信が届く。

「届いた? 良かったぁ。何々この写真!すげ~!コレクションに保存しちゃおう。」

画面を見つめながら、ハルカは思わずクスッと笑った。
(もう……何でも“コレクション”なんだから)

少し迷ったあと、イヤフォンを取り出して耳に差し込む。

そして、そっと動画通話のボタンに指を滑らせた。

数秒後、悟の顔が画面に映る。

驚いたように目を瞬かせて、やがて優しく微笑んだ。

「こんばんは、悟」

ハルカは小声で言った。

「ラバーマスクガールです」

悟は少し照れくさそうに笑う。

「え、本物が出た……」

「今夜はね、特別に悟だけに配信してるの」

照明の柔らかい光が、彼女のマスクの艶に反射する。

それは、いつものステージとは違う――誰にも見せない、静かで穏やかな時間だった。

悟の声が、少し掠れたように届く。

「……ありがとう。すごく、嬉しい」

その言葉を聞いて、ハルカの胸の奥に温かいものが広がった。

画面の中の悟は、少し寝癖のついた髪で、いつものように優しい顔をしている。

「悟のラバー好き、みんなにバレちゃったよ」

ハルカがいたずらっぽく笑う。

「えぇ~っ!」

悟が顔を覆った。

「マジで?どんな感じだった?」

「でもね、みんな悟のこと褒めてたよ」

ハルカは小さく微笑んで続けた。

「優しそうだとか、料理上手そうだとか。イケメンだって。」

「……それ、照れるな」

悟が頭をかきながら、ちょっと俯いた。

「でも、順子の声、元気そうでよかった」

「うん、悟に会えたから元気になった」

ハルカは画面越しに手を振る。

悟も笑いながら両手を広げ――

「よし、ぎゅーって……」

空中を抱きしめるような仕草をして、ふざけて見せる。

「なにそれ!」

ハルカは吹き出した。

「空振りじゃん!」

「だって、本当は抱きしめたいんだもん」

悟の照れた声に、ハルカの胸の奥がきゅっと締めつけられる。

「あっ……もう帰らなきゃ」

ハルカが静かに言うと、悟は「お疲れ様」と優しく応えた。

だが、悟が画面のボタンに指を伸ばした瞬間――

「ちょっと待って」

ハルカの声が止めた。

ライトの光の中で、彼女はゆっくりと手を上げる。

指先がマスクの縁をつかみ――静かに外す。

ラバーの下から現れたのは、素顔の順子だった。



疲れの影も、笑顔も、すべてがそこにあった。

画面越しに、悟が言葉を失う。

順子は少しだけ俯いて、唇を寄せる。

「おやすみ、悟」

そのまま、カメラに向かって――そっとキスをするふりをした。





画面が静かに揺れ、光が滲んで消える。

夜の更衣室には、スマホの黒い画面と、微かな笑みだけが残っていた。


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