【R18】【挿絵多い】ラバーマスクガール

まへまへ

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第40話 悟からの差し入れ

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ーーー夕方の東京駅。

ホームに傾いた陽が差し込み、スーツケースを引く人々の影が長く伸びていた。

アナウンスが新幹線の出発を告げるたび、構内に風が流れ、旅立ちの気配が満ちていく。

悟と順子は、改札の前に立っていた。

悟はキャリーケースを持つ順子を見つめ、少し照れたように笑う。

「今日の昼、ほんとにご馳走さま。あんな店、人生で初めてだったよ」

「ふふ、そう?」

順子が笑うと、悟は少し声を落とした。

「だからさ、お礼に――順子がお世話になってる倶楽部に、俺が作った弁当送るよ。『東北幕内弁当』皆さんにも食べてほしくて…。」

順子は一瞬驚き、すぐにふっと優しい笑みを浮かべた。

「うん、喜ぶと思う。アキさんもオーナーも……きっとね」

「そっか。じゃあ、近いうちに送るよ」

新幹線の到着を知らせる風が、二人の髪を揺らす。

悟は名残惜しそうに順子の顔を見て、小さく息をついた。

「じゃあ、そろそろ行くよ。……また連絡する」

悟が背を向け、一歩踏み出そうとした瞬間――

順子は我慢できず、その背中にぎゅっと抱きついた。

「もっと……一緒にいたいよ」



悟は驚いたように振り返り、そして何も言わず順子の額に唇を落とした。

その優しい温もりが、すべての言葉の代わりになった。

「すぐ会いに来るから」

小さくそう囁くと、悟は改札を抜けて新幹線に乗り込んだ。

ドアが閉まり、列車がゆっくりと動き出す。

順子はホームに立ったまま、手を振る代わりに胸の前で両手を組んだ。

夕暮れのホームに、車輪の音と、切なさだけが静かに残った。





ーーーそれから数週間後のある日。


倶楽部の裏口を入ると、いつものように香水とラバーの匂いが混じった独特の空気が漂っていた。

順子がタイムカードを押すと、奥からアキが勢いよく駆け寄ってきた。

「ちょっと順子!来たわよ!すごいのが!」

「え?なにが?」

「ほらこれ!」

アキが控え室のテーブルを指さす。

そこには、上品な包み紙に包まれたお弁当がずらりと並んでいた。

どれも統一されたデザインの箱で、帯には金の箔で「東北幕内弁当」と書かれている。

「キャスト全員分!冷蔵便で届いたのよ。宛名が“ハルカ様(順子様)”になってたから、私が受け取っといたけど……これ、なに?」

アキがニヤリと笑う。

順子は包みを見つめながら、静かに微笑んだ。

「……悟から。私の彼、なんだけどね。説明するから、着替え終わったら皆んな集めてくれませんか?」

「え、ちょっと待って、まさかその“悟”って――あの“ラバー好きの悟”?」

「ふふ、そう♡その悟」

***

数分後、ラバー姿の“ハルカ”になった順子が控え室に戻ると、すでにキャスト全員が集まっていた。

テーブルの上には弁当がずらりと並び、皆の視線は興味津々。

「みんな、ごめんね。これ、私の……彼が送ってくれたの」

「彼!?」

と一斉に声が上がる。

その中で、以前“悟の記事”をハルカに見せた東北出身の子が、目を丸くして叫んだ。

「あっ!これ!この弁当、ネットで見た!“イケメン料理人が作る、郷土料理弁当”ってバズってたやつ!」

「えー!ほんと?」

「うそー!ハルカの彼氏、あの人!?」

「この人めっちゃイケメンだったじゃん!」

「ていうかさ、弁当のクオリティ高すぎ!私の彼なんてコンビニで唐揚げ買ってくるだけだよ!」

順子――ハルカは、少し照れながら微笑んだ。

「うん……あの人、料理の修行してるの。これ、皆さんに“いつも順子がお世話になってます”って言って送ってくれたみたい」

「キャー!なにそれ最高じゃん!」

「真面目で優しくてイケメンで、弁当まで作る男?私が結婚する!」

「無理!ハルカの彼だって!」

アキは腕を組みながらため息をついた。

「……なるほどね。泣き顔で相談してきたと思ったら、まったくハルカって。ふふ。でも――いい男じゃない。あんた、やるじゃん」

ハルカは少し恥ずかしそうに笑いながら、テーブルの弁当を見つめた。

「……うん。私には、もったいないくらい」

照明の反射で黒いラバーが艶めく中、控え室は笑い声と温かい空気に包まれていた。
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