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第39話 高級日本料理店
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東京の街を歩きながら、順子が笑顔で言った。
「ねえ、今日はお昼、日本料理のお店に行こうよ。私の大学の近くにあるの。結構有名な料理人さんがいるらしいんだ」
悟は眉を上げて首をかしげる。
「東京でそんなとこ行ったら高いんじゃないの?」
順子は軽やかに肩をすくめ、にっこり笑う。
「大丈夫!私が奢ってあげるから」
悟は思わず吹き出す。
「おいおい、無理すんなよ。そんなこと言われたら、俺まで気を使っちゃうだろ」
順子はさらに調子に乗ったように言う。
「ふふん、だって私、結構稼いでるんだよ?だって……あの姿で高級倶楽部で働いてるんだから!」
悟の頬が赤くなる。昨日のことが頭をよぎった。
「あー……昨日のラバー姿の順子を抱きしめたこと、まだ頭から離れない……衝撃だった。俺のコレクションにも、あんなのないぞ」
順子はクスッと笑う。
「ふふ、衝撃でしょ?昨日の私……ちょっと妖艶だった?」
悟は慌てて手を振る。
「違う、違う!妖艶とかそんなレベルじゃなくて……あれはもう……あー、しまった!昨日の順子のラバー姿、写真撮るの忘れた!」
順子は手を叩いて笑った。
「えー、撮らなかったの?もったいない!私、コレクション入りできたのに!」
悟は顔を覆いながらも、真剣に順子を見つめた。
「なあ……次はいつ見れるんだ?昨日のやつ……」
順子は手を口に当て、ケラケラ笑いながら首をかしげる。
「えー、どうしよっかなー?」
悟は赤面したまま、でも真剣な声で返す。
「……次は絶対、写真も動画も撮るからな!」
順子はくすくす笑いを抑えきれず、肩を揺らしながら悟に言った。
「ふふ、高級倶楽部の高級ラバースーツに包まれた私を抱いた人って、悟以外いないよ?きっと。金持ちの紳士だって、あんなことできないんだから」
悟は驚きと困惑の入り混じった顔で、
「……そ、そうか……」
と声を漏らし、また昨日の順子の姿を思い出してしまう。
順子はさらに笑いながら、悟の腕に軽く肘をついた。
「だから、次も楽しみにしてていいよ!」
悟は目を丸くして順子を見つめ、心の中で「やっぱり、順子は……最高だ!」と思わず叫んだ。
ーーー順子と悟は大学の前を歩いていた。
ふと、順子の目に見覚えのある長い黒髪の女性が映る。女性も順子に気づいたらしい。
「あっ、こんにちは」
順子が挨拶すると、女性はプッと笑い、口を手で押さえて小走りで去って行った。
順子は、一瞬その場で立ちすくむ。
「……あれ、なんか笑われた?」
順子が小声で呟くと、悟は顔をしかめて首をかしげながら、
「え、俺のせいか?田舎者だから笑われたのか?それともダサい俺?」と少し焦ったように言う。
順子は思わず吹き出し、肩を揺らして笑う。
「違うよ、あの人、たまに寮で見かける人だから、気まずくなっただけだと思う」
悟は照れくさそうに頭をかき、二人はそのまま日本料理店へ向かって歩き出した。
高級な日本料理店の扉を開けると、静かで落ち着いた空気が二人を包んだ。
順子は背筋を伸ばし、白いワンピースの裾をそっと整えながら席に着く。
悟も隣に座り、メニューを手早く確認する。
お昼のコース料理が一品ずつ出される。最初は前菜の盛り合わせ。
目の前に並んだ小皿には、色とりどりの季節の食材が美しく配置されていた。
「これは、鰆の昆布締め。昆布の旨味が鰆に染み込んでいて、口に入れるとふんわり香りが広がるんだ。見た目も大事でね、盛り付けの高さや間隔で季節感を演出しているんだよ」
順子は小さく頷きながら、一口味わう。
「わぁ、ほんとに昆布の香りがする……でも、ふんわりしてて食べやすいね」
次に、椀物が運ばれる。透き通った出汁の中に、蛤と旬の野菜が浮かんでいる。
悟は箸を持ちながら真剣な顔で解説する。
「この出汁は、利尻昆布と鰹節の合わせ出汁。温度も重要で、沸騰させずに温めることで、素材の旨味を壊さずに引き出せるんだ。蛤の火入れも絶妙で、身が縮まず、ぷりっとした食感を残している」
順子は感心して目を丸くする。
「すごい……こんなに繊細に作られてるんだね」
悟は笑みを浮かべながら、次の一品が来るのを待ち構える。
「次は焼き物。鰆の西京焼きだ。西京味噌で漬け込む時間や火加減で香ばしさと甘味のバランスを整えているんだ。こういう細かい調整が、料理の完成度に直結するんだよ」
順子は静かに聞き入りながら、「やっぱり、料理にこんなに真剣になれる人って素敵だな……」と心の中で呟く。
次々と出される料理に、悟は一つひとつ素材や調理法、見た目の意図を解説する。
順子はそれを聞きながら、料理を味わうだけでなく、悟の努力や情熱にも心を傾けていく。
テーブルの上は彩り豊かで、二人の会話と共に、まるで小さな美術館のような空間になっていた。
順子は次の料理が運ばれてくるのを待ちながら、そっと悟の顔を見た。真剣な表情で箸を進める姿。
料理の香りを確かめ、盛り付けの色彩や高さに目を配る。その横顔に、思わず微笑んでしまう。
「ねぇ、悟?」順子が小さく呼びかけた。
「ん?」悟は箸を置き、順子の顔に目を向ける。
「真面目な悟も、すごくカッコいいね」
悟は一瞬、箸を持つ手を止め、ハッとした表情をする。
「あ、デート中なのにごめん。つい料理に夢中になっちゃって……」
順子は首を振りながら微笑む。
「違うの。そんな悟が好きだなって思ったの」
悟の目が、ほんの少しだけ柔らかくなる。
「そ、そうか……ありがとう」
順子は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じ、料理だけでなく、悟の努力や情熱に触れることで、もっと好きになっていく自分を自覚した。
食事を終え、店の扉を開ける。
東京の光が二人を包み込む。
悟は順子の手を軽く握り、真面目な顔で言った。
「本当は他に食べたいもの、いっぱいあったんだろ? でも、俺の日本料理の勉強のためにここに連れてきてくれたんだろ? ありがとう順子。俺、もっと頑張るから…」
順子はその言葉に、胸がいっぱいになり、自然と涙が溢れた。
悟が、自分の気持ちをすぐに理解してくれたこと。
包み込むようなその言葉に、順子は言葉にならない幸福を噛み締めた。
「ねえ、今日はお昼、日本料理のお店に行こうよ。私の大学の近くにあるの。結構有名な料理人さんがいるらしいんだ」
悟は眉を上げて首をかしげる。
「東京でそんなとこ行ったら高いんじゃないの?」
順子は軽やかに肩をすくめ、にっこり笑う。
「大丈夫!私が奢ってあげるから」
悟は思わず吹き出す。
「おいおい、無理すんなよ。そんなこと言われたら、俺まで気を使っちゃうだろ」
順子はさらに調子に乗ったように言う。
「ふふん、だって私、結構稼いでるんだよ?だって……あの姿で高級倶楽部で働いてるんだから!」
悟の頬が赤くなる。昨日のことが頭をよぎった。
「あー……昨日のラバー姿の順子を抱きしめたこと、まだ頭から離れない……衝撃だった。俺のコレクションにも、あんなのないぞ」
順子はクスッと笑う。
「ふふ、衝撃でしょ?昨日の私……ちょっと妖艶だった?」
悟は慌てて手を振る。
「違う、違う!妖艶とかそんなレベルじゃなくて……あれはもう……あー、しまった!昨日の順子のラバー姿、写真撮るの忘れた!」
順子は手を叩いて笑った。
「えー、撮らなかったの?もったいない!私、コレクション入りできたのに!」
悟は顔を覆いながらも、真剣に順子を見つめた。
「なあ……次はいつ見れるんだ?昨日のやつ……」
順子は手を口に当て、ケラケラ笑いながら首をかしげる。
「えー、どうしよっかなー?」
悟は赤面したまま、でも真剣な声で返す。
「……次は絶対、写真も動画も撮るからな!」
順子はくすくす笑いを抑えきれず、肩を揺らしながら悟に言った。
「ふふ、高級倶楽部の高級ラバースーツに包まれた私を抱いた人って、悟以外いないよ?きっと。金持ちの紳士だって、あんなことできないんだから」
悟は驚きと困惑の入り混じった顔で、
「……そ、そうか……」
と声を漏らし、また昨日の順子の姿を思い出してしまう。
順子はさらに笑いながら、悟の腕に軽く肘をついた。
「だから、次も楽しみにしてていいよ!」
悟は目を丸くして順子を見つめ、心の中で「やっぱり、順子は……最高だ!」と思わず叫んだ。
ーーー順子と悟は大学の前を歩いていた。
ふと、順子の目に見覚えのある長い黒髪の女性が映る。女性も順子に気づいたらしい。
「あっ、こんにちは」
順子が挨拶すると、女性はプッと笑い、口を手で押さえて小走りで去って行った。
順子は、一瞬その場で立ちすくむ。
「……あれ、なんか笑われた?」
順子が小声で呟くと、悟は顔をしかめて首をかしげながら、
「え、俺のせいか?田舎者だから笑われたのか?それともダサい俺?」と少し焦ったように言う。
順子は思わず吹き出し、肩を揺らして笑う。
「違うよ、あの人、たまに寮で見かける人だから、気まずくなっただけだと思う」
悟は照れくさそうに頭をかき、二人はそのまま日本料理店へ向かって歩き出した。
高級な日本料理店の扉を開けると、静かで落ち着いた空気が二人を包んだ。
順子は背筋を伸ばし、白いワンピースの裾をそっと整えながら席に着く。
悟も隣に座り、メニューを手早く確認する。
お昼のコース料理が一品ずつ出される。最初は前菜の盛り合わせ。
目の前に並んだ小皿には、色とりどりの季節の食材が美しく配置されていた。
「これは、鰆の昆布締め。昆布の旨味が鰆に染み込んでいて、口に入れるとふんわり香りが広がるんだ。見た目も大事でね、盛り付けの高さや間隔で季節感を演出しているんだよ」
順子は小さく頷きながら、一口味わう。
「わぁ、ほんとに昆布の香りがする……でも、ふんわりしてて食べやすいね」
次に、椀物が運ばれる。透き通った出汁の中に、蛤と旬の野菜が浮かんでいる。
悟は箸を持ちながら真剣な顔で解説する。
「この出汁は、利尻昆布と鰹節の合わせ出汁。温度も重要で、沸騰させずに温めることで、素材の旨味を壊さずに引き出せるんだ。蛤の火入れも絶妙で、身が縮まず、ぷりっとした食感を残している」
順子は感心して目を丸くする。
「すごい……こんなに繊細に作られてるんだね」
悟は笑みを浮かべながら、次の一品が来るのを待ち構える。
「次は焼き物。鰆の西京焼きだ。西京味噌で漬け込む時間や火加減で香ばしさと甘味のバランスを整えているんだ。こういう細かい調整が、料理の完成度に直結するんだよ」
順子は静かに聞き入りながら、「やっぱり、料理にこんなに真剣になれる人って素敵だな……」と心の中で呟く。
次々と出される料理に、悟は一つひとつ素材や調理法、見た目の意図を解説する。
順子はそれを聞きながら、料理を味わうだけでなく、悟の努力や情熱にも心を傾けていく。
テーブルの上は彩り豊かで、二人の会話と共に、まるで小さな美術館のような空間になっていた。
順子は次の料理が運ばれてくるのを待ちながら、そっと悟の顔を見た。真剣な表情で箸を進める姿。
料理の香りを確かめ、盛り付けの色彩や高さに目を配る。その横顔に、思わず微笑んでしまう。
「ねぇ、悟?」順子が小さく呼びかけた。
「ん?」悟は箸を置き、順子の顔に目を向ける。
「真面目な悟も、すごくカッコいいね」
悟は一瞬、箸を持つ手を止め、ハッとした表情をする。
「あ、デート中なのにごめん。つい料理に夢中になっちゃって……」
順子は首を振りながら微笑む。
「違うの。そんな悟が好きだなって思ったの」
悟の目が、ほんの少しだけ柔らかくなる。
「そ、そうか……ありがとう」
順子は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じ、料理だけでなく、悟の努力や情熱に触れることで、もっと好きになっていく自分を自覚した。
食事を終え、店の扉を開ける。
東京の光が二人を包み込む。
悟は順子の手を軽く握り、真面目な顔で言った。
「本当は他に食べたいもの、いっぱいあったんだろ? でも、俺の日本料理の勉強のためにここに連れてきてくれたんだろ? ありがとう順子。俺、もっと頑張るから…」
順子はその言葉に、胸がいっぱいになり、自然と涙が溢れた。
悟が、自分の気持ちをすぐに理解してくれたこと。
包み込むようなその言葉に、順子は言葉にならない幸福を噛み締めた。
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