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第一章 ーFirst Attackー
第7話 『しまなみの魔女、空を駆ける』
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■新たな風、空を駆ける
週末の朝。
どこまでも晴れ渡った空と、潮風に煌めく来島海峡。
その糸山公園の展望台に、2台のバイクが静かに並んでいた。
一台は、赤と黒の精悍なフォルムをしたスズキ・GSX-R125"ワルキューレ"。
そしてもう一台は、深みのあるバイオレットパールに彩られたヤマハ・XSR125。
朝の静寂のなか、展望デッキの手すりにもたれながら、志保は海を見つめていた。
「海が綺麗ね……それに、橋が見事だわ。これが――結さん達がいつも見ている景色の一つなのね」
その横で、同じように視線を遠くに向ける悠真が、にこりと微笑む。
「来島海峡大橋を渡る時は特にビックリするよ! 何せ原付道は海がすごく近いから、走ってるとまるで空を飛んでるみたいに感じるんだよね」
「うふふ、それは楽しみだわ。あの橋は昔、大型バイクで高速道路側を何度も通ったけれど……原付道は今日が初めてなの」
「道、狭いしスライドも多いから結構大変だけど――志保さんなら全然大丈夫だと思うよ。なんたって、“魔女”なんだし!」
「でもね、今日は“ビギナー”のつもりで走るわ。あくまで“原付道”は初体験ですもの」
志保がそう言った時だった。
シュッ、と清らかな音を立てて、一台のCB125Rが坂道を登ってくる。
「志保さん、おはようございますっ!」
凛の声は、朝日よりも明るく響いた。
「悠真も、おはよう!」
「おはよう、凛!」
「ごきげんよう、凛さん。今日も元気そうで何よりだわ」
「だって、だって! 憧れの“しまなみの魔女”との本格的な初ツーリングなんですもん! そりゃ嬉しくならない方が嘘ですよ!」
「ふふ……ほんと、凛ってば」
そんな3人の元に、少し遅れてエンジン音が近づいてきた。
「おはよう、みんな!」
GSX-S125の結を先頭に、CT125の彩花と、白いPCXに乗った琴音が、3台並んで駐車場に滑り込んでくる。
「おはよ~さん! 今日もええ朝やね!」
「お、おはようございますっ!」
志保の黒を基調とした紫ラインのメッシュジャケット姿を初めて目の当たりにした琴音は、思わず見惚れたように声を上げた。
「志保さん……とってもカッコいいですね……!」
「ありがとう。うふふ……琴音さんのジャケットも、とても似合ってるわよ」
「えへへ……ありがとうございます……!」
志保は微笑みながら、琴音の頭をそっと撫でる。
「しまなみ原付道は私、初めてだから。今日は色々頼りにしてるわね、先輩?」
「えっ!? い、いやいやいや! 伝説になるような凄腕ライダーさんに“先輩”って呼ばれるなんて、畏れ多すぎますって!!」
そのやりとりに、他のメンバーから一斉に笑い声が上がった。
⸻
■しまなみを走れ、六つの鼓動
6人は並んでバイクの前に立ち、セルフタイマーで記念撮影。
そして全員がインカムをつなぎ、いよいよツーリングが始まる。
今回の最初の隊列は――
凛 → 悠真 → 志保 → 結 → 琴音 → 彩花
「原付道では制動距離が短いと命取りやから、車間距離には気ぃつけるようにな。それではみんな――」
「ご安全に!!」
6人の声が揃った。
(彩花さん……やっぱり“しまなみのプロ”って感じね。うふふ)
志保は心の中で小さく笑った。
そのまま列を保ったまま、原付道の入口へとバイクを進める。
スロープに差し掛かった瞬間――志保は、思わず声を上げた。
「こ、ここ……狭いわね! ちょっと気を抜いたら対向車とぶつかっちゃいそう!」
「そう言いながらも、ずいぶん余裕そうですやん志保さん!」
「うふふ。経験者のあなた達が居てくれるからこそ、よ。感謝してるわ」
(確かに……ライン取りに一切の無駄がない! 志保さん、やっぱりすごい人だ……!)
結の心の中に、再び尊敬の念が湧き上がる。
そしてスロープを抜けた瞬間――目の前に広がるのは、水平線と空と橋の世界。
「――凄いわね!! 本当に、空を飛んでいるみたい!!」
「でしょ!? マスツーリングだとちょっと感じにくいけど、ソロだともっと“空飛んでる感”すごいんだよ」
インカム越しに凛が声を張る。
「前方に対向車二台! スライドするから注意ね!」
「了解!」
(なるほど……インカムってこんなにも便利なものなのね。特にこの狭さなら、絶対に必要だわ)
やがて橋の中央部に差し掛かる。
コーナーが緩やかに曲がり、前方の見通しが悪くなった。
「みんな、少し減速して!」
凛が一台だけ先行し、安全確認を行う。
「対向車なし! 今のうちに行こう!」
「了解!」
(……危険箇所では先頭が確認してから全員に指示を出す。なるほど、これがしまなみブルーのチームワーク……!)
「志保さん! 初めての来島海峡大橋はどうですか!?」
「景色が近くてとっても綺麗だわ。高速道路から見える景色とは、全然違うのね!」
「気に入った?」
「ええ、とっても。みんなのおかげで、新たな扉が開いた気分よ」
「ふふっ。まだまだしまなみの本領はこんなもんや無いで? 楽しみにしといてな志保さん!」
「ええ、楽しみにしてるわね。うふふ……」
こうして、“しまなみの魔女”水野志保を正式メンバーに迎えた、6人のツーリングが始まった。
新たな鼓動が加わったこのチームは、どんな風景を駆け抜けるのだろう。
物語は、まだ始まったばかり。
To be continued...
週末の朝。
どこまでも晴れ渡った空と、潮風に煌めく来島海峡。
その糸山公園の展望台に、2台のバイクが静かに並んでいた。
一台は、赤と黒の精悍なフォルムをしたスズキ・GSX-R125"ワルキューレ"。
そしてもう一台は、深みのあるバイオレットパールに彩られたヤマハ・XSR125。
朝の静寂のなか、展望デッキの手すりにもたれながら、志保は海を見つめていた。
「海が綺麗ね……それに、橋が見事だわ。これが――結さん達がいつも見ている景色の一つなのね」
その横で、同じように視線を遠くに向ける悠真が、にこりと微笑む。
「来島海峡大橋を渡る時は特にビックリするよ! 何せ原付道は海がすごく近いから、走ってるとまるで空を飛んでるみたいに感じるんだよね」
「うふふ、それは楽しみだわ。あの橋は昔、大型バイクで高速道路側を何度も通ったけれど……原付道は今日が初めてなの」
「道、狭いしスライドも多いから結構大変だけど――志保さんなら全然大丈夫だと思うよ。なんたって、“魔女”なんだし!」
「でもね、今日は“ビギナー”のつもりで走るわ。あくまで“原付道”は初体験ですもの」
志保がそう言った時だった。
シュッ、と清らかな音を立てて、一台のCB125Rが坂道を登ってくる。
「志保さん、おはようございますっ!」
凛の声は、朝日よりも明るく響いた。
「悠真も、おはよう!」
「おはよう、凛!」
「ごきげんよう、凛さん。今日も元気そうで何よりだわ」
「だって、だって! 憧れの“しまなみの魔女”との本格的な初ツーリングなんですもん! そりゃ嬉しくならない方が嘘ですよ!」
「ふふ……ほんと、凛ってば」
そんな3人の元に、少し遅れてエンジン音が近づいてきた。
「おはよう、みんな!」
GSX-S125の結を先頭に、CT125の彩花と、白いPCXに乗った琴音が、3台並んで駐車場に滑り込んでくる。
「おはよ~さん! 今日もええ朝やね!」
「お、おはようございますっ!」
志保の黒を基調とした紫ラインのメッシュジャケット姿を初めて目の当たりにした琴音は、思わず見惚れたように声を上げた。
「志保さん……とってもカッコいいですね……!」
「ありがとう。うふふ……琴音さんのジャケットも、とても似合ってるわよ」
「えへへ……ありがとうございます……!」
志保は微笑みながら、琴音の頭をそっと撫でる。
「しまなみ原付道は私、初めてだから。今日は色々頼りにしてるわね、先輩?」
「えっ!? い、いやいやいや! 伝説になるような凄腕ライダーさんに“先輩”って呼ばれるなんて、畏れ多すぎますって!!」
そのやりとりに、他のメンバーから一斉に笑い声が上がった。
⸻
■しまなみを走れ、六つの鼓動
6人は並んでバイクの前に立ち、セルフタイマーで記念撮影。
そして全員がインカムをつなぎ、いよいよツーリングが始まる。
今回の最初の隊列は――
凛 → 悠真 → 志保 → 結 → 琴音 → 彩花
「原付道では制動距離が短いと命取りやから、車間距離には気ぃつけるようにな。それではみんな――」
「ご安全に!!」
6人の声が揃った。
(彩花さん……やっぱり“しまなみのプロ”って感じね。うふふ)
志保は心の中で小さく笑った。
そのまま列を保ったまま、原付道の入口へとバイクを進める。
スロープに差し掛かった瞬間――志保は、思わず声を上げた。
「こ、ここ……狭いわね! ちょっと気を抜いたら対向車とぶつかっちゃいそう!」
「そう言いながらも、ずいぶん余裕そうですやん志保さん!」
「うふふ。経験者のあなた達が居てくれるからこそ、よ。感謝してるわ」
(確かに……ライン取りに一切の無駄がない! 志保さん、やっぱりすごい人だ……!)
結の心の中に、再び尊敬の念が湧き上がる。
そしてスロープを抜けた瞬間――目の前に広がるのは、水平線と空と橋の世界。
「――凄いわね!! 本当に、空を飛んでいるみたい!!」
「でしょ!? マスツーリングだとちょっと感じにくいけど、ソロだともっと“空飛んでる感”すごいんだよ」
インカム越しに凛が声を張る。
「前方に対向車二台! スライドするから注意ね!」
「了解!」
(なるほど……インカムってこんなにも便利なものなのね。特にこの狭さなら、絶対に必要だわ)
やがて橋の中央部に差し掛かる。
コーナーが緩やかに曲がり、前方の見通しが悪くなった。
「みんな、少し減速して!」
凛が一台だけ先行し、安全確認を行う。
「対向車なし! 今のうちに行こう!」
「了解!」
(……危険箇所では先頭が確認してから全員に指示を出す。なるほど、これがしまなみブルーのチームワーク……!)
「志保さん! 初めての来島海峡大橋はどうですか!?」
「景色が近くてとっても綺麗だわ。高速道路から見える景色とは、全然違うのね!」
「気に入った?」
「ええ、とっても。みんなのおかげで、新たな扉が開いた気分よ」
「ふふっ。まだまだしまなみの本領はこんなもんや無いで? 楽しみにしといてな志保さん!」
「ええ、楽しみにしてるわね。うふふ……」
こうして、“しまなみの魔女”水野志保を正式メンバーに迎えた、6人のツーリングが始まった。
新たな鼓動が加わったこのチームは、どんな風景を駆け抜けるのだろう。
物語は、まだ始まったばかり。
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