王弟が愛した娘ー音に響く運命ー現代パロ

Aster22

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恋人みたい?

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恋人みたい?
外に出ると、まだお昼にもなっていない時間。
「なんか、すごい長い間いた気がしたのに」
「異世界にいるような気がするよな。今日は時間もたっぷりある。ゆっくりするか。」
「うん、そうだね。」
重く落ち込んでいた心が晴れていく。緩んで、腕を絡めてしまいたいなんて言えるはずもないけど。
「この通りは色々店もある。気になったところは入ればいい。」
「そうだね。あ、あれ美味しそう!」
「お前そればっか.....ってあの店か。」
「美味しくないの?」
「まあ美味しいだろうが....あれだ、うちの競合店だ。」
「それはちょっと入りにくいねえ」
「デザートならちゃんと美味しいとこ調べてあるからまずは店行くぞ。」
「調べてくれたの?」
「当たり前だ。お、あの店どうだ?可愛い。」
「ん?わ、ほんと!アクセメインかな?」
「分からん。入るか。」
何の躊躇いもなく入るレオ。セラは友達と来てもカジュアルな店しか入らない。入っても買うお金はないし、気後れしてしまうから。
でもレオといたら不思議と怖くない。新しい扉を開けることを許されているみたいで、ワクワクしてしまう。
「ちょっと服もあるけどアクセメインみたい。わあ、このピアス綺麗...!」
「今日の服にも合いそうだな。」
「どう?」
「....買うか。」
「もう!何ですぐそっちに走るの。いっぱい見たら楽しいでしょ。レオはアクセは?」
「はいはい。俺は一応ピアスは空いてるけどな。」
「シンプルなゴールドとかカッコいいよね。映えそう。」
「そうか?」
「うん。」
店内を見回っていく。小物を扱うセンスの良い店は見ているだけで楽しい。 
トントン
肩を叩く音に振り返るとメガネをかけてニヤリと笑う彼。
(ちょっとそれは....反則....)
「え、見惚れた?」
「惚れてない。」
「今赤くなっただろ。メガネ?」
「知ってるわよ、私はメガネに弱いの.....!」
「は?そうなの?」
「昔からついメガネの人を追っちゃうの。好きでもないのに。好みなのよ....」
「なんだ、それならコンタクト止めるか。」
「え、コンタクトなの?」
「ああ。外すと何も見えん。」
「じゃあ家では....」
「メガネだな。」
レオの、顔自体は正直好みじゃない。でもメガネをかけて緩んだ服を着ていたら....
ちょっと、耐えられないかもしれない。
「学校でもメガネならその反応してくれるのか?」
「が、学校はダメ!」
「何でだよ。」
「だって.....」
他の女の子に見られたくない、なんて。
「.....ああ。嫉妬する?」
「っ....!しない!」
「素直じゃないなあ。なら今度家来いよ。そしたらお前だけだ。」
「家、行ってもいいの...?」
「家族にずっと呼べって言われて煩いんだ。なんなら今日帰り寄るか?」
「え、私何にも準備して来てない」
「いいだろ。母さんも持ってくること期待してねえよ。嫌か?」
「嫌、ではないけど」
「ならすぐ連絡する....あ、もしもし母さん?」
側から聞いても分かるほどトントン拍子に事は決まったようだ。
「大歓迎。夕飯は準備しててくれるって。お前んとこも連絡しとけよ。ちゃんと夜には返すから。」
「わ、分かった。」
「よし。....メガネ、買って今日かけようか?」
ニヤリと笑うこの男は確信犯だ。
「ダメ。集中できなくなっちゃうから....」
「俺の顔に興味ないなんて顔しといて悪い女だ。俺なんていつもお前を見て集中できてないのに。」
この甘い言葉を何人に使って来たんだろう。そう思うと効果も半減だ。
「いいから今日はダメ。ほら、次の店いこ?」
「仕方ないな。向かいの服屋行くか。」
店内はすっかり夏服だ。夏らしく明るい色に薄い生地は気分を明るくさせる。
「夏服かぁ....もう暑いもんね」
「そうだな。夏は海にでも行くか?」
「行きたい!」
「好きなのか?」
「あんまり行った事ないけど、なんか落ち着くイメージがあるの。」
「確かに落ち着くぞ。砂浜歩いて影に座って。白いワンピースなんか海にはいいな。俺が見たい。」
そう言われて無意識に探してしまっているのが悲しい女の性だ。人に言われたぐらいで好みを変えるようなタイプではなかったのに。
「お、これどうだ?」
「確かに可愛い....けど。」
「けどなんだ?」
「ちょっと、空きすぎじゃない...?」
白のキャミワンピはウエストを絞った綺麗なラインで胸元もそれなりに空いているように見える。
「軽く羽織ればいいだろ。脱いだところは俺しか見ない。」
「そう言う問題なの?」
「そう。とにかく試着してみろよ。」
言われるがままに試着してみる。
(悪くは....ないと思うんだけど。なんか、これ着ると本当に女の子みたい。)
カーテンの隙間から覗いてみる。
「着れたか?」
「うん、まあ....」
「なら見せろよ。」
「どう....?」
「......綺麗すぎる。買いたいって、言ったら怒るか?」
「レオそればっか....」
「それ着て、海行きたい。ダメか?」
「ダメではないし確かに海には合うと思うんだけど」
「なら――――」
「買ってもらってばっかじゃ落ち着かないの。私が買う。」
「は?何でそうなるんだ。」
「私がこれ着てレオと海デート行きたいの。悪い?」
耳を赤くしたレオを見ると勝った気分だ。
正直痛い出費だ。でもレオには散々してもらってる。自分で行きたいデートの服ぐらい買って、その分働きたい。
会計をして、包んでもらう。いつも買う服より何だか特別な気がして、嬉しくなった。
「お前がそれ着て海歩いてんの想像しただけでやばい。絶対行くからな。」
「うん、楽しみにしてる。レオは服見ないの?」
「俺に似合うの、見てくれるか?」
「レオは何でもいけそうなのがな....頑張ってみる。」
レオはいつもシンプルな服が多い。ジャケットや、ブルゾンでもサマになる。
「レオって、明るめの色は着ないの?」
「普段あんまだがお前が好きなら着るぞ。」
「この色のシャツとかどう?夏だし。」
「ライトブルーか。着てみる。合ってたらこれにして海行くか。」
「うん。」
よくメアの買い物に付き合って試着室の前に何時間もいるなんてことはザラだ。
けれど今日の待ち時間は嫌じゃない。
何の恥じらいもなく開くカーテンにセラとの慣れの差を見せつけられる気がする。
「わ、似合うね!レオくんが柔らかく見える。」
「普段は硬そうか?」
「揚げ足取らないの。優しそうに見えるってこと。」
「お前の服にも合いそうだしこれにするか。
買って来るから待ってろ。」
即決してしまった。買い物袋片手に戻って来た彼は上機嫌だ。
「甘いものでも食べに行くか?」
「行く!」
「袋、貸せよ。」
「これぐらい...」
「ダーメ。そういうのは男が持つもんなの。」
こんな軽い紙袋一つ。でも持ってもらっただけで女の子になった気がする。
街中で、手を繋いで店を眺めていると窓ガラスにその姿が映っていた。お洒落をした女の子、優しい顔で見つめる男の子。
(ほんとに恋人みたい....)
いや、そうなんだけど。見えた姿に気恥ずかしくなって顔を逸らした。
「着いた。ここ。」
立ち止まった店はチョコレートの専門店らしい。店内から外にまでチョコレートの匂いが広がっている。
「ここは競合店じゃないの?」
「まあうちとちょっと狙いが違うからな。来ても問題ない。」
大人びた店。レオはこんなところいつも来てるんだろうか。
「ここはパフェが上手い。本格派のショコラティエだから何食べてもいけるけどな。」
「よく来るの?」
「父親がたまにな。いい味は覚えとけってことなんだろ。」
「2人で来てる姿は微笑ましいけども」
「父さんはなあ....何考えてるかよく分かんねえ。」
「お母さんは?」
「俺は母さん似だからな。お前もすぐ慣れるんじゃないか?父さんは怒らないんだよ。だから余計分からん。」
「怒らないんだ。」
「そう。普通社員がミスしたりしたら苛つくだろ。それか騙されたりさ。でも父さんは怒らない。怒ったところで無駄なんだと。」
「見せてないのか、それとも怒り以外の方法で解決する術を持ってるのかどっちだろうね。」
「案外お前の方が分かるかもな。まあ今日会うだろうから話してみてくれ。」
そう言われて思い出した。恋人、ましてや会社の社長宅にいきなりお邪魔するのだ。粗相のないようにしなければ....
「私、手土産も何も用意できてないんだけど。」
「いらん。お前が土産みたいなもんだ。」
きゅんっ....なんてしてる場合じゃない。
「服もちゃんとしてないし」
「それでか?俺の目から見れば完璧だ。自信持っとけ。」
「レオの目はアテにならない気がしてて...」
「おい。心配するな。そのアテにならない目を持った一族だ。シャッツェルなんぞお前をいつ連れて来るのかと煩くてたまらん。」
「それなら.....なんか緊張してきた。」
「俺がそばに居る。ないと思うがお前に不快な気分でもさせたら俺が許さん。」
その言葉に少し安心していると、パフェが運ばれて来た。
「これはまた....見た目だけでお腹いっぱいになりそう....」
「写真撮らないのか?」
「え?あ、ほんとだ。考えたことなかった。」
「なら俺が撮ってやる。セラ、こっち向け。」
「....変な顔してない?」
「どう見ても可愛い。心配すんな。」
「レオ」
「お、おい。」
「だってレオばっかりズルい。私もレオの写真撮りたい。」
「それは....お前のためならいくらでも撮るけど。」
「じゃあ今度は自然系のとこ行く?そしたら写真も撮れるよ」
「そうだな。海の前に一回行くか。」
「うん....ってこれやばい。」
「味か。」
「うん。これ全部チョコで違うのに絶妙なハーモニー.....何事なの?」
「美味しさに怒ってどうする。」
「こんなのすぐ無くなっちゃうよう。味わって食べたいのに。」
「また来ればいいだろ。店はそんな簡単に逃げないから。」
「こんな贅沢何回もしたら罰が当たっちゃう」
「当たらん。俺が連れて来たいだけだから罰なら俺に当たる。」
「それはダメ.....」
本当にあっという間だった。あまりにも美味しかったこと以外記憶にないけどこれは忘れられないものリストに入会してくれそうだ。
「お前が喜んだならよかったよ。そろそろ行くか。夕飯前絶対あいつら騒ぐから。」
「うん、ありがとう。」
 
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