王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22

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退屈な誕生日

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いつも通りの屋敷の目覚め。グレータが口にした言葉に今日が何の日であったかを思い出す。
「おはようございます殿下、25歳のお誕生日、おめでとうございます。」
「....そうだった。面倒臭いパーティーとやらに出ないといけない日だな。」
「我慢なさいませ。お立場上、仕方のないことです。」
 いつも通り執務を終え、パーティー会場である王宮に向かう。
 外交、政治に絡むレオがこれを避けることは許されない。だが今日は心の底から気分が乗らなかった。
「お前も25か。そろそろ身を固めねばな。」
 兄王の余計な一言に群がる貴族どもを適当に相手をしていれば、ブルメリアとユラヌスがやってきた。
 このくだらない世界の中で彼らは唯一の癒しに見える。
「伯父様、おめでとうございます!これは私とユラヌスからのプレゼントですわ!」
「用意してくれたのか?」
「絵と手紙。それからお揃いの飾り紐にしましたの!受け取ってくださるかしら....?」
 不安気な姪はとても可愛らしい。
 紙にはブルメリア、ユラヌス、レオと思われる3人の顔が描かれ、[おじさま、だいすき]とまで拙い文字で書いてくれている。思わず緩んだレオの顔にブルメリアは笑顔になった。
「ありがとう。ブルメリア、ユラヌス。最高のプレゼントだ。」
「本当はもっといたいのですけど...お父様に長居してはならぬと言われておりますの。伯父様、また来てくださいな!」
「ああ。そうする。気をつけて帰れよ。」
 こんな大人どもの元にこんな純粋な子を置いていてはいけない。早く帰らせるのは賛成だ。しかしどうも子供たちの顔を見るとセラに会いたくなる。
 一通り挨拶も終えた。もういいかーーーー
「王よ、私は体調が優れません。明日の公務に響いてはいけませんので帰らせていただきます。」
「おお、そうか。まあ誰もお前に残ることなんぞ期待しとらん。好きにしろ。」
 早く、早く帰ってあの音に触れたい。そうすればこのざわついた心は収まってくれるだろうか。
「おかえりなさいませ。早かったですね。」
「ああ。セラを呼べ。」
「かしこまりました。」
 部屋で着替えてもどこか落ち着かない。誕生日なんてどうでもいい。だがそれでも今年は願うものがあった。
「お呼びでしょうか。」
 ざわついていた波が引いていく。それはさながら魔法のようだ。
「お疲れですか?あのようなパーティーは人も多く疲れてしまいそうです。」
「ああ。本当にやってられん。お前に癒されたくてさっさと抜けて来た。」
「私でお役に立つかは分かりませんが....」
「お前の顔を見るだけで癒される。誕生日なんてどうでもいいがお前の顔だけは見たかった。」
 セラの困った顔。優しいセラは何も言わない。
「.....あの。」
 何か意を決したようなセラ。
「お誕生日と聞いていたので、一応贈り物を...と思い用意してみたのですが。」
 硬い声で紡がれる言葉はレオが予想していなかったものだった。
「俺に?」
 セラがごそごそとポケットから取り出した。
「はい。香り袋です。大したものではないのですが、お守りがわりになれば.....と。いらなければ捨ててくださって構いません。」
 どうにも信じられない。セラは贈り物をするタイプに見えなかった。それも男に。言葉を失ったレオをセラは拒否と見做したようだ。
「....申し訳ありません、一介の侍女が、過ぎた真似をしました。」
「待て!違うから。お前が俺に贈り物をくれるなんて想像もしてなかった。嬉しくて信じられなかったんだ。」
「ご迷惑ではありませんか....?」
「迷惑どころか。人生で1番いい誕生日だ。これなら誕生日も悪くない。ありがとう、セラ。」
ホッとしたセラが笑顔になった。
「よかったです。」
 香り袋にはご丁寧にレオの印である鷲まで刺繍されている。手間をかけてくれた。そのことが何よりも嬉しい。
「刺繍、苦手なんじゃなかったのか。」
「だ、誰から聞いたんですか?」
「誰だろうな?頑張ってくれたのか?」
「.....いつもお世話になっている方への敬意です。大したものではありません。」
 強がるセラが思っている以上に苦労してくれたことはわかる。
「来年はお前のも祝うし、俺のも2人で祝うか。そしたら邪魔も入らん。」
「それは無理があるかと.....」
 ああ、なんだかとても。
 気分がいい。朝の憂鬱が嘘みたいだ。嫌いだった誕生日。1人の女がいるだけでこんなに愛おしくなるなんて。
「セラ、俺は本気だぞ。」
 セラはまた、困った顔をした。.
 
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