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王家の談話、隠せぬ恋情
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王家の談話、隠せぬ恋情
王宮に向かうと兄王アーノルトの子供達――――
ブルメリアとユラヌスが出迎えてくれた。
「レオ伯父様!」
「何故前回は教えてくださらなかったのですの?」
頬を膨らましているのはブルメリアだ。
前回セラのことで来た時は何も言わず、子供達にも会わずに帰ったため、拗ねているようだ。
「悪かったな。ほら、土産があるから機嫌を直せ。」
「土産?」
目が輝いている。
「大したものじゃないぞ。ブルメリアにはこれだ。」
「まあっ....!素敵な色ですわ!伯父様、これで結ってくださいな!」
選んだのはシルクの薄いピンク、だが金糸が散らされ華やかな雰囲気を纏うブルメリアに似合うものにした。
「ああ、いいぞ。だが兄上との話が終わってからだ。」
「伯父様は来てもお父様とお話ばかりですわ。」
「そう言うな。ちゃんと結ってやるから....ユラヌスにはこれだ。」
後ろで静かにしているユラヌスに渡したのは小瓶に入った鉱石のサンプルセットだ。
「これは?」
「鉱石のサンプルが入っている。音や重さ、触感なんかを試すと面白いぞ。」
早速触ってみるユラヌスは気に入ったようだ。それなりに口数の多い王家から生まれたにしてはユラヌスは物静かな子だったが、深い洞察力を持ち合わせた子であることもレオは理解していた。
「ありがとうございます。レオ伯父様。」
見上げる青い目は澄んでいた。未来の王となるであろう彼の目に映る自分が今後どうなっていくのか。出来れば良好な関係でありたいと思うが、それが簡単でないこともまた事実だった。
「さて、俺は兄上のところに行ってくる。後で遊んでやるから待ってろよ。」
頷く子供達を後に、兄のところへ向かう。
「来たか。報告があるとか?先の娘のことではないな。」
「いえ。鉱山の件です。」
「ああ、あれか。どうなった?」
「鉱山の開拓は無事に終わり、利権も売り払いました。私が王になるとの約束で買ったものは今頃その未来がないことに気づき、没落していくでしょう。ただ、最後の足掻きとして兄上やユラヌスを狙う可能性もあります。それ故お耳に入れておいた方が良いかと。」
「相変わらずお前は容赦ないな。買ったのはどこだ?」
「アルベオン、フォーレン、トゥーリヒト家です。」
「ああ、あの太った男とその腰巾着2人だな。丁度良い。先代の功績で成り上がっていたやつらだ。排除できたなら良い。よくやった。」
兄はレオほど皮肉屋ではないが容赦ないのはレオと同じどころか上手なくらいだ。
「問題の麻薬の件ですが――――」
「どうなっている?」
「アラリック王子より密輸経路の情報を受け取りました。来週よりメーアベルクの離宮にて調査を始めます。」
「うむ。貴族だけでなく庶民にまで流行り始めている。コアルシオンが流したとの噂付きでな。出来るだけ早く片付けろ。」
「そのことは私も気になっています...開戦を望む声すらあるとか。」
「ああ。俺が王になってから戦争は殆ど起きていない。それが気に入らない貴族や商家も多い。これを機にと声を上げている。」
「厄介ですね...あまり気取られぬよう、調査を進めていきます。」
「そうしてくれ。....で?その娘とはどうなってるんだ?」
「それを聞きますか......」
「お前を手玉に取り、ベルシュタイン辺境伯を納得させる女だ。相当胆力のある女であろう。」
楽しそうな兄の姿を見るのは珍しいが、自分が原因では面白さも半減だ。
「自覚がないのが余計に問題です。離宮へは楽師として連れて行きますが...」
「楽師?」
「ハープの名手です。兄上も気にいるかと。」
「ほう。お前がそう言うか。聴いてみたいところだな。」
「いずれお耳に入れる機会もあるでしょう。弟は見つかりました。灯台下暗し、王都の治療院に運び込まれそのまま助手になっていたようです。」
「なるほどな。しかしその弟の存在は表には出せんぞ。分かっているな?」
「もちろんです。表向き死んだことにしたいのですが...」
「いいだろう。手伝うと言ったからな。可愛い弟のために一肌脱いでやろう。」
「楽しそうですね...」
「こんなつまらん王宮にいれば楽しみの一つや二つ欲しいものだ。お前の色恋はいいネタになる。」
自由にやっているレオはと違い、兄の生活は窮屈そのものだ。楽しみのネタがレオの恋なのは不本意だが。
「ブルメリアとも遊んでやってくれ。あれはお前を1番いい男だと思ってるぞ。ユラヌスもお前には懐いている。たまには顔を出してやれ。」
「ブルメリアはいい女になりますよ。気は強いが、愛らしい。」
「我が妻に似たのであろう。いい男に嫁に出してやれればいいが、そうもいかんのが悲しいところだな。」
「姉上のようなケースは稀ですからね。」
レオとアーノルトの姉――――フェルシオーネは遊牧民族に嫁いでいる。レオそっくりな性格で輪をかけて男勝りな姉は、遊牧民族として馬で駆け回る生活を幸せに感じているようだ。
「あれは運が良かったというべきであろう。シャッツもそう悪くないと俺は思うがな。」
歳の離れた妹、シャッツェルが嫁いだ先は隣国のエイマールだ。シャッツェル自身は幸せだとの頼りを寄越してくるが....
「......私は、どうも気に入りません。」
「お前は結婚当時からそう言っているな。シャッツを可愛がっていたから口うるさくなってないか?」
「....どこか、胡散臭いんですよ。あの男は。ブルメリアとユラヌスの所に行って参ります。あまり待たせるとまたブルメリアが拗ねるので。」
「ああ、そうしてやれ。次は麻薬の件が片付いた報告を待っているぞ。」
「仰せのままに。」
王宮に向かうと兄王アーノルトの子供達――――
ブルメリアとユラヌスが出迎えてくれた。
「レオ伯父様!」
「何故前回は教えてくださらなかったのですの?」
頬を膨らましているのはブルメリアだ。
前回セラのことで来た時は何も言わず、子供達にも会わずに帰ったため、拗ねているようだ。
「悪かったな。ほら、土産があるから機嫌を直せ。」
「土産?」
目が輝いている。
「大したものじゃないぞ。ブルメリアにはこれだ。」
「まあっ....!素敵な色ですわ!伯父様、これで結ってくださいな!」
選んだのはシルクの薄いピンク、だが金糸が散らされ華やかな雰囲気を纏うブルメリアに似合うものにした。
「ああ、いいぞ。だが兄上との話が終わってからだ。」
「伯父様は来てもお父様とお話ばかりですわ。」
「そう言うな。ちゃんと結ってやるから....ユラヌスにはこれだ。」
後ろで静かにしているユラヌスに渡したのは小瓶に入った鉱石のサンプルセットだ。
「これは?」
「鉱石のサンプルが入っている。音や重さ、触感なんかを試すと面白いぞ。」
早速触ってみるユラヌスは気に入ったようだ。それなりに口数の多い王家から生まれたにしてはユラヌスは物静かな子だったが、深い洞察力を持ち合わせた子であることもレオは理解していた。
「ありがとうございます。レオ伯父様。」
見上げる青い目は澄んでいた。未来の王となるであろう彼の目に映る自分が今後どうなっていくのか。出来れば良好な関係でありたいと思うが、それが簡単でないこともまた事実だった。
「さて、俺は兄上のところに行ってくる。後で遊んでやるから待ってろよ。」
頷く子供達を後に、兄のところへ向かう。
「来たか。報告があるとか?先の娘のことではないな。」
「いえ。鉱山の件です。」
「ああ、あれか。どうなった?」
「鉱山の開拓は無事に終わり、利権も売り払いました。私が王になるとの約束で買ったものは今頃その未来がないことに気づき、没落していくでしょう。ただ、最後の足掻きとして兄上やユラヌスを狙う可能性もあります。それ故お耳に入れておいた方が良いかと。」
「相変わらずお前は容赦ないな。買ったのはどこだ?」
「アルベオン、フォーレン、トゥーリヒト家です。」
「ああ、あの太った男とその腰巾着2人だな。丁度良い。先代の功績で成り上がっていたやつらだ。排除できたなら良い。よくやった。」
兄はレオほど皮肉屋ではないが容赦ないのはレオと同じどころか上手なくらいだ。
「問題の麻薬の件ですが――――」
「どうなっている?」
「アラリック王子より密輸経路の情報を受け取りました。来週よりメーアベルクの離宮にて調査を始めます。」
「うむ。貴族だけでなく庶民にまで流行り始めている。コアルシオンが流したとの噂付きでな。出来るだけ早く片付けろ。」
「そのことは私も気になっています...開戦を望む声すらあるとか。」
「ああ。俺が王になってから戦争は殆ど起きていない。それが気に入らない貴族や商家も多い。これを機にと声を上げている。」
「厄介ですね...あまり気取られぬよう、調査を進めていきます。」
「そうしてくれ。....で?その娘とはどうなってるんだ?」
「それを聞きますか......」
「お前を手玉に取り、ベルシュタイン辺境伯を納得させる女だ。相当胆力のある女であろう。」
楽しそうな兄の姿を見るのは珍しいが、自分が原因では面白さも半減だ。
「自覚がないのが余計に問題です。離宮へは楽師として連れて行きますが...」
「楽師?」
「ハープの名手です。兄上も気にいるかと。」
「ほう。お前がそう言うか。聴いてみたいところだな。」
「いずれお耳に入れる機会もあるでしょう。弟は見つかりました。灯台下暗し、王都の治療院に運び込まれそのまま助手になっていたようです。」
「なるほどな。しかしその弟の存在は表には出せんぞ。分かっているな?」
「もちろんです。表向き死んだことにしたいのですが...」
「いいだろう。手伝うと言ったからな。可愛い弟のために一肌脱いでやろう。」
「楽しそうですね...」
「こんなつまらん王宮にいれば楽しみの一つや二つ欲しいものだ。お前の色恋はいいネタになる。」
自由にやっているレオはと違い、兄の生活は窮屈そのものだ。楽しみのネタがレオの恋なのは不本意だが。
「ブルメリアとも遊んでやってくれ。あれはお前を1番いい男だと思ってるぞ。ユラヌスもお前には懐いている。たまには顔を出してやれ。」
「ブルメリアはいい女になりますよ。気は強いが、愛らしい。」
「我が妻に似たのであろう。いい男に嫁に出してやれればいいが、そうもいかんのが悲しいところだな。」
「姉上のようなケースは稀ですからね。」
レオとアーノルトの姉――――フェルシオーネは遊牧民族に嫁いでいる。レオそっくりな性格で輪をかけて男勝りな姉は、遊牧民族として馬で駆け回る生活を幸せに感じているようだ。
「あれは運が良かったというべきであろう。シャッツもそう悪くないと俺は思うがな。」
歳の離れた妹、シャッツェルが嫁いだ先は隣国のエイマールだ。シャッツェル自身は幸せだとの頼りを寄越してくるが....
「......私は、どうも気に入りません。」
「お前は結婚当時からそう言っているな。シャッツを可愛がっていたから口うるさくなってないか?」
「....どこか、胡散臭いんですよ。あの男は。ブルメリアとユラヌスの所に行って参ります。あまり待たせるとまたブルメリアが拗ねるので。」
「ああ、そうしてやれ。次は麻薬の件が片付いた報告を待っているぞ。」
「仰せのままに。」
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