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知りたいと揺れる馬車の中で
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知りたいと揺れる馬車の中で
離宮は馬車で二日ほどのところにある。ハープの主だとバレたセラの噂は瞬く間に屋敷中に広がり、セラはレオの元に来る度浮かない顔をしていた。
「もうこの際だ。聴かせてやれ。」
そう言って戸を開けて何度か演奏させたら今度は何故侍女をやっているのかと問い詰められたそうだ。
あれ程楽師になるのを嫌がっていたセラが、今や楽師になりたいと望むほどには面倒な状況らしい。
当日、馬車に共に乗るように言うとセラはあからさまに嫌そうな顔をした。一瞬ライの言っていたことは本当なのかと疑ってしまう。
「お前も退屈だろ?話し相手ぐらいにはなってやれるぞ。」
そこまで言うとセラは折れた。
「馬車は馬とは違いますね。」
「そうだな。スピードもどうしたってゆっくりだ。ハフェンの街には行ったことがあるか?」
「一度だけ。弟を探しに寄りました。」
「海なんか行ってる余裕はなかっただろうな。」
「少し眺めました。海は心が静まります。」
「メーアベルクの離宮は気に入っていてな。海も近いが丘で静寂もある。少し馬を飛ばせば海に行けるから着いたら行くか。」
「調査はよいのですか?」
「表向きは休養なんだ。休養らしいことをしていないと怪しまれる。」
「それもそうですね。レオ様は海はお好きですか?」
「ああ。なんだ、知らなかったか?商人が来た時あんなことを言うから知っているかと思った。」
「あれは出まかせで言いました。本当でしたか。」
「本音を言えば離宮を本邸にしたい。そんなわけにもいかんがな。」
「離宮は一つだけですか?」
「いや、モルンハイトとデアモントにもある。デアモントの方は政治関係で出向くことが多いな。モルンハイトはほぼ放ったらかしだからこの間クシェルに貸した。」
「クシェル様もご苦労なさっていますもんね...」
セラの顔には同情心が広がっている。人を何だと思っているんだ。
「たまには婚約者との時間もやらないとな。振られては可哀想だろう。」
「婚約者がおられるのですか?」
「言ってなかったか?クシェルはああ見えて名家の次男だからな。いつも婚約者に尻に敷かれている。」
「なんだか想像がつきますね。」
「だろ。離宮に行ったらしたいことはあるか?」
「うーん....海には行きたいですが、特には。ただ久々に身体を動かしたい気はしますね。」
「俺と剣の手合いなんてしたらおかしな楽師だと噂になるしなぁ。狩にでも行くか。」
「そうですね。」
「.....好みの男はどんなんだ?」
「....お薬でも持って参りましょうか。」
「おかしくなったんじゃない。好きな女の好みぐらい知りたいだろう。」
ライを信用していないわけじゃない。ただ、確認したかっただけだ。
「......そうですね...あまり物言わぬ剣士のような方に惹かれた覚えはあります。」
ライは間違ってなかったらしい。同時に聞いたことを後悔した。本人の口から言われると結構ショックだ。
「......折角時間はある。とことんお前のことを教えてもらうぞ。」
「少し眠られてはいかがです?着いた時に疲れてしまいますよ。」
「お前は動揺した時ほどそういう返しをする。流石に気づいた。」
「.........」
「離宮が楽しみだな?」
ニヤリと笑うレオに、セラは諦めたように息を吐き出した。
離宮は馬車で二日ほどのところにある。ハープの主だとバレたセラの噂は瞬く間に屋敷中に広がり、セラはレオの元に来る度浮かない顔をしていた。
「もうこの際だ。聴かせてやれ。」
そう言って戸を開けて何度か演奏させたら今度は何故侍女をやっているのかと問い詰められたそうだ。
あれ程楽師になるのを嫌がっていたセラが、今や楽師になりたいと望むほどには面倒な状況らしい。
当日、馬車に共に乗るように言うとセラはあからさまに嫌そうな顔をした。一瞬ライの言っていたことは本当なのかと疑ってしまう。
「お前も退屈だろ?話し相手ぐらいにはなってやれるぞ。」
そこまで言うとセラは折れた。
「馬車は馬とは違いますね。」
「そうだな。スピードもどうしたってゆっくりだ。ハフェンの街には行ったことがあるか?」
「一度だけ。弟を探しに寄りました。」
「海なんか行ってる余裕はなかっただろうな。」
「少し眺めました。海は心が静まります。」
「メーアベルクの離宮は気に入っていてな。海も近いが丘で静寂もある。少し馬を飛ばせば海に行けるから着いたら行くか。」
「調査はよいのですか?」
「表向きは休養なんだ。休養らしいことをしていないと怪しまれる。」
「それもそうですね。レオ様は海はお好きですか?」
「ああ。なんだ、知らなかったか?商人が来た時あんなことを言うから知っているかと思った。」
「あれは出まかせで言いました。本当でしたか。」
「本音を言えば離宮を本邸にしたい。そんなわけにもいかんがな。」
「離宮は一つだけですか?」
「いや、モルンハイトとデアモントにもある。デアモントの方は政治関係で出向くことが多いな。モルンハイトはほぼ放ったらかしだからこの間クシェルに貸した。」
「クシェル様もご苦労なさっていますもんね...」
セラの顔には同情心が広がっている。人を何だと思っているんだ。
「たまには婚約者との時間もやらないとな。振られては可哀想だろう。」
「婚約者がおられるのですか?」
「言ってなかったか?クシェルはああ見えて名家の次男だからな。いつも婚約者に尻に敷かれている。」
「なんだか想像がつきますね。」
「だろ。離宮に行ったらしたいことはあるか?」
「うーん....海には行きたいですが、特には。ただ久々に身体を動かしたい気はしますね。」
「俺と剣の手合いなんてしたらおかしな楽師だと噂になるしなぁ。狩にでも行くか。」
「そうですね。」
「.....好みの男はどんなんだ?」
「....お薬でも持って参りましょうか。」
「おかしくなったんじゃない。好きな女の好みぐらい知りたいだろう。」
ライを信用していないわけじゃない。ただ、確認したかっただけだ。
「......そうですね...あまり物言わぬ剣士のような方に惹かれた覚えはあります。」
ライは間違ってなかったらしい。同時に聞いたことを後悔した。本人の口から言われると結構ショックだ。
「......折角時間はある。とことんお前のことを教えてもらうぞ。」
「少し眠られてはいかがです?着いた時に疲れてしまいますよ。」
「お前は動揺した時ほどそういう返しをする。流石に気づいた。」
「.........」
「離宮が楽しみだな?」
ニヤリと笑うレオに、セラは諦めたように息を吐き出した。
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