王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22

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怖い、それでも知りたい

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怖い、それでも知りたい
護衛が来たことと賊が1人になったことに気が緩んだ。ナイフで間合いが短かったのも分が悪かった。
頬から血が流れているのに気づいた。
倒れた賊の向こうに、レオの姿が見えた。
「申し訳ありません。油断しました。」
戦いが終わったのに、レオは先程よりも強い殺気を発している。
(怒ってる.....?)
その目は怒っているようにも、恐怖にも見えた。
「謝るのはお前じゃない........お前たち。」
レオが護衛の男たちの方を見た。
「一体何をしていた?」
見下ろすレオの顔に場が凍った。
(優しい顔ばかり見ていたから忘れていた...)
彼は軍を持つ王弟だ。セラが知らない男の顔。
それは一瞬あの日を思い出させた。辺境伯邸に入ったあの日――――
本当は怖かった。震える手足を悟られぬよう必死だった。家族を守らなければならなかったから。
「賊は捕らえ損ねた。その上セラの身まで危険に晒し、怪我をさせた......その首で償うか?」
護衛の男たちは自身の失態に青ざめ、誰1人言葉を発することはできなかった。
聞こえた声に我に帰る。本当にやりかねない勢いに、慌てて止めに入った。
「レオ様、私は大丈夫です。ただ少し掠っただけで。レオ様こそ――――」
腕を怪我している。それを言おうとしたのだがレオによって遮られた。
「だけ?それがどれ程のことか分かっているのか?」
怖い。優しいレオが違う人になってしまったみたいだ。後ろに避けたセラにレオがはっとした。
「違う。悪かった。何もしないから。セラ、帰ろう。」
「.....はい。」
帰り道、レオは口を開かなかった。レオが何を感じて、考えているのか。
(心が、読めたらいいのに。)
人一倍敏感なセラが感じたことのない気持ち。
恐怖を感じたのに知りたいと思う――――
その感情が何なのか、もう嘘を吐くのは難しかった。

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