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涙の再会、大きくなった弟
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涙の再会、大きくなった弟
音を立てずに食べる習慣を持つ2人が共にする朝食は言葉がないと静かだ。
「レオ様、眠れましたか?少し顔がお疲れのようですが。」
「ああ……うん、まあ、寝た。気にするな。」
そんな気にする言い方をしておいてそれは無理があると思うのだけど。
「なあ、お前昨日のキス、意味分かってやったのか?」
「えっと……どのキスでしょう……」
「寝る前の、ほっぺのやつ。」
「それが正直よく分からなくて……やってみたんですが、違いましたか?」
「いいや、返しとして100点だ。俺を苦しませるのにも100点だな。」
「合ってたら良いのですが……レオ様を苦しませるのはいけませんね。」
「……まあ苦しんだのは俺の自業自得だからいいんだけどな。今日にでもアラに文を出す。何も整ってなくていいからとにかく行かせろとな。もう限界だ。」
「なんだかアラリック王子に申し訳なくなってきました。体調もまだよくないでしょうに……」
「まあ奴ももう王になる。周りが無理はさせんだろう。さて、食べ終わったら行くか。」
「お忍びでなくて良いのですが?」
「ああ。俺はずっと王弟として行ってたからな。今日もまた俺は眠れない病人だ。お前は侍女として付いてきた。この設定で行くぞ。」
「いつも通りですね。」
「……まあな。」
馬車で向かった王都の治療院は大規模のものでこの国一と言っていい大きさを誇る治療院だった。
馬車から降り、裏口から入る。王族が来た時のための入り口だ。何度も訪れているため慣れているのだろう。診察する院長も、それなりに気を緩めている。
「コアルシオンでの外交、大変だったと聞きました。ご体調はいかがでしょうか?」
「ああ、それがな。やはりまた眠れなくなってしまったようだ。それで薬をもらいに来た。」
まさかこの嘘で通していたわけではあるまいな。よく院長が気づかなかったものだ。まあ気づいたところで何も言えないだろうが。
「こちらが薬になります。それから……」
「ああ、ライを呼んでくれ。」
「かしこまりました。」
「一応俺はあの少年と話すと心が休まると理由をつけてある。」
「もう何でもありですね王族ともなれば……」
「お陰で見つかったんだから文句言うな。」
心臓が早鐘を打っている。信じられない。今から、私は本当にライに会うのだ。人違いだったらどうしようなんてあり得ないことすら考えてしまう。
ドアのノックが鳴った。
瞬間息が止まる。
ガチャッと音がして入ってきたのはもう2度と会えないと思っていたその人。
「え、セラ姉……」
「ライ……!」
何を言おうか、どんな顔をしようかと考えていたことなんて顔を見たらどうでもよくなって、堪らず抱きついた。
「ちょ、セラ姉……何でここに」
「あんたが見たつかったって聞いて、なのに会えなくて、信じられなくて……でも、生きてる。本当に、生きてるのね。」
「うん。生きてるよ。俺、ちゃんとここで働いて生きてるよ。だから泣かないで、セラ姉。」
「ごめっ……泣くつもりなんてなかったのに。傷は治ったの?」
「傷?ああ……殴られたやつか。あんなの治ったよ。それよりセラ姉、変わったね。」
「え?」
「セラ姉がこんなに素直に泣いて、表情がクルクル変わるの、俺初めて見たよ。」
「そう……?」
「うん。王弟殿下のお陰だね。……ご挨拶が遅れました。お久しぶりです……って何で貴方まで泣いてるんですか。」
「いや、姉弟の感動の再会についな……。中々会わせてやれなくて済まなかった。」
「「謝らないでください」」
声が重なる。この感じは久しぶりだ。
「うむ……お前たちはまごうことなき姉弟だ。」
「セラ姉は今どこにいるの?まだ王弟殿下のお屋敷?」
「いや、今はベルシュタイン家にいるのよ。」
「ベルシュタイン家!?コアルシオンと戦争が始まりかけたとか麻薬だとかなんか色々噂ばっかり聞いて……何がどうなってるの」
「まあそれは話せば長くなるんだけど」
「簡単に言えば俺がベルシュタイン辺境伯に結婚の申し込みに行ったら一旦娘を返せと言われたわけだ。」
「そこだけ話せばそうですね。」
「なるほど……セラ姉嫌な思いしてない?大事にされてるの?」
「ライは心配性ねえ。大丈夫よ。皆よくしてくれて平和に暮らしてるわ。」
「それならよかった。コアルシオンとか麻薬とかセラ姉は関わってないよね?」
「それは……」
言葉に窮する。真実以外全てが嘘になってしまう。
「関わったの!?どうせまた敵に突っ込んだり狙われたりしたんだろ!」
「な、なんで分かるの……」
「セラ姉はいつもそうだ!人の気も知らず戦地に嬉々として飛び込んでいく!」
「き、嬉々としてかはどうか……」
「ライ、俺の苦労が分かるか……」
「はい、殿下のお気持ちがよく分かります。姉は目を離すとすぐにこれです。」
男2人で共鳴し合っている。セラがライと肩を組むつもりだったのにこれでは逆だ。
「ちょ、ちょっと。2人して言うのやめてよ。」
「好みの男もお前の言った通りだった……流石は弟だ。」
「姉のことなら誰よりも見てきた自信があります。」
ドヤ顔で言うことじゃない。そこは。
「でもお二人を見て安心しました。殿下なら姉を幸せにしてくれます。」
「お前の太鼓判ほど自信のつくものはないな。」
「……何でそう思うの。」
「だってセラ姉俺が入ってきてから一度も嘘ついてないよ。」
「それは……」
「いつも俺を心配させないようにすぐ嘘が本当か分かんないことばっかり言うのに。それに今日はちゃんと女の子の顔してる。」
図星な上にちょっとそれは恥ずかしい。自分の顔の管理なんてどうやってするんだ。なんとなくいたたまれない。
「おい、ライ。セラをあんまり苛めてやるな。泣き出すぞ。」
「泣きません!」
「最初に泣いただろう。一回緩んだ涙腺は弱いらしいぞ。」
「レオ様まで揶揄わないでください。もう……」
「ははっ」
「ライ?」
「俺、あんなに心配して馬鹿みたい。セラ姉は俺に会いたくないんじゃないかとか、会ったらまた迷惑かけちゃうんじゃないかとか。そんなの不要だったね。」
「それは私もよ。ライは私になんか会いたくない。世話なんて焼かれたくないし迷惑だって思ってたわ。」
「お前たちは少し苦労しすぎたな。これからはもう少し平和を味わえ。……ライはここで平和にやってるのか?」
「はい。ここでの仕事は大変ですがやり甲斐があります。」
「それならいい。そろそろお前を仕事に返さないといけないが、また来るからな。」
「はい。セラ姉、会えて嬉しかった。また会いに来てね」
「うん。ライ、無理しちゃダメよ。」
「もう子供じゃないよ。またね。」
小さくて身体の弱い男の子だったライの背。ずっとその背を、守らないといけないと思ってた。だけどもう、そんな必要はないんだね。
今日初めて大きく見えたライの背に守るべき手を手放した。
音を立てずに食べる習慣を持つ2人が共にする朝食は言葉がないと静かだ。
「レオ様、眠れましたか?少し顔がお疲れのようですが。」
「ああ……うん、まあ、寝た。気にするな。」
そんな気にする言い方をしておいてそれは無理があると思うのだけど。
「なあ、お前昨日のキス、意味分かってやったのか?」
「えっと……どのキスでしょう……」
「寝る前の、ほっぺのやつ。」
「それが正直よく分からなくて……やってみたんですが、違いましたか?」
「いいや、返しとして100点だ。俺を苦しませるのにも100点だな。」
「合ってたら良いのですが……レオ様を苦しませるのはいけませんね。」
「……まあ苦しんだのは俺の自業自得だからいいんだけどな。今日にでもアラに文を出す。何も整ってなくていいからとにかく行かせろとな。もう限界だ。」
「なんだかアラリック王子に申し訳なくなってきました。体調もまだよくないでしょうに……」
「まあ奴ももう王になる。周りが無理はさせんだろう。さて、食べ終わったら行くか。」
「お忍びでなくて良いのですが?」
「ああ。俺はずっと王弟として行ってたからな。今日もまた俺は眠れない病人だ。お前は侍女として付いてきた。この設定で行くぞ。」
「いつも通りですね。」
「……まあな。」
馬車で向かった王都の治療院は大規模のものでこの国一と言っていい大きさを誇る治療院だった。
馬車から降り、裏口から入る。王族が来た時のための入り口だ。何度も訪れているため慣れているのだろう。診察する院長も、それなりに気を緩めている。
「コアルシオンでの外交、大変だったと聞きました。ご体調はいかがでしょうか?」
「ああ、それがな。やはりまた眠れなくなってしまったようだ。それで薬をもらいに来た。」
まさかこの嘘で通していたわけではあるまいな。よく院長が気づかなかったものだ。まあ気づいたところで何も言えないだろうが。
「こちらが薬になります。それから……」
「ああ、ライを呼んでくれ。」
「かしこまりました。」
「一応俺はあの少年と話すと心が休まると理由をつけてある。」
「もう何でもありですね王族ともなれば……」
「お陰で見つかったんだから文句言うな。」
心臓が早鐘を打っている。信じられない。今から、私は本当にライに会うのだ。人違いだったらどうしようなんてあり得ないことすら考えてしまう。
ドアのノックが鳴った。
瞬間息が止まる。
ガチャッと音がして入ってきたのはもう2度と会えないと思っていたその人。
「え、セラ姉……」
「ライ……!」
何を言おうか、どんな顔をしようかと考えていたことなんて顔を見たらどうでもよくなって、堪らず抱きついた。
「ちょ、セラ姉……何でここに」
「あんたが見たつかったって聞いて、なのに会えなくて、信じられなくて……でも、生きてる。本当に、生きてるのね。」
「うん。生きてるよ。俺、ちゃんとここで働いて生きてるよ。だから泣かないで、セラ姉。」
「ごめっ……泣くつもりなんてなかったのに。傷は治ったの?」
「傷?ああ……殴られたやつか。あんなの治ったよ。それよりセラ姉、変わったね。」
「え?」
「セラ姉がこんなに素直に泣いて、表情がクルクル変わるの、俺初めて見たよ。」
「そう……?」
「うん。王弟殿下のお陰だね。……ご挨拶が遅れました。お久しぶりです……って何で貴方まで泣いてるんですか。」
「いや、姉弟の感動の再会についな……。中々会わせてやれなくて済まなかった。」
「「謝らないでください」」
声が重なる。この感じは久しぶりだ。
「うむ……お前たちはまごうことなき姉弟だ。」
「セラ姉は今どこにいるの?まだ王弟殿下のお屋敷?」
「いや、今はベルシュタイン家にいるのよ。」
「ベルシュタイン家!?コアルシオンと戦争が始まりかけたとか麻薬だとかなんか色々噂ばっかり聞いて……何がどうなってるの」
「まあそれは話せば長くなるんだけど」
「簡単に言えば俺がベルシュタイン辺境伯に結婚の申し込みに行ったら一旦娘を返せと言われたわけだ。」
「そこだけ話せばそうですね。」
「なるほど……セラ姉嫌な思いしてない?大事にされてるの?」
「ライは心配性ねえ。大丈夫よ。皆よくしてくれて平和に暮らしてるわ。」
「それならよかった。コアルシオンとか麻薬とかセラ姉は関わってないよね?」
「それは……」
言葉に窮する。真実以外全てが嘘になってしまう。
「関わったの!?どうせまた敵に突っ込んだり狙われたりしたんだろ!」
「な、なんで分かるの……」
「セラ姉はいつもそうだ!人の気も知らず戦地に嬉々として飛び込んでいく!」
「き、嬉々としてかはどうか……」
「ライ、俺の苦労が分かるか……」
「はい、殿下のお気持ちがよく分かります。姉は目を離すとすぐにこれです。」
男2人で共鳴し合っている。セラがライと肩を組むつもりだったのにこれでは逆だ。
「ちょ、ちょっと。2人して言うのやめてよ。」
「好みの男もお前の言った通りだった……流石は弟だ。」
「姉のことなら誰よりも見てきた自信があります。」
ドヤ顔で言うことじゃない。そこは。
「でもお二人を見て安心しました。殿下なら姉を幸せにしてくれます。」
「お前の太鼓判ほど自信のつくものはないな。」
「……何でそう思うの。」
「だってセラ姉俺が入ってきてから一度も嘘ついてないよ。」
「それは……」
「いつも俺を心配させないようにすぐ嘘が本当か分かんないことばっかり言うのに。それに今日はちゃんと女の子の顔してる。」
図星な上にちょっとそれは恥ずかしい。自分の顔の管理なんてどうやってするんだ。なんとなくいたたまれない。
「おい、ライ。セラをあんまり苛めてやるな。泣き出すぞ。」
「泣きません!」
「最初に泣いただろう。一回緩んだ涙腺は弱いらしいぞ。」
「レオ様まで揶揄わないでください。もう……」
「ははっ」
「ライ?」
「俺、あんなに心配して馬鹿みたい。セラ姉は俺に会いたくないんじゃないかとか、会ったらまた迷惑かけちゃうんじゃないかとか。そんなの不要だったね。」
「それは私もよ。ライは私になんか会いたくない。世話なんて焼かれたくないし迷惑だって思ってたわ。」
「お前たちは少し苦労しすぎたな。これからはもう少し平和を味わえ。……ライはここで平和にやってるのか?」
「はい。ここでの仕事は大変ですがやり甲斐があります。」
「それならいい。そろそろお前を仕事に返さないといけないが、また来るからな。」
「はい。セラ姉、会えて嬉しかった。また会いに来てね」
「うん。ライ、無理しちゃダメよ。」
「もう子供じゃないよ。またね。」
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