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君を飾る理由、それは下心
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君を飾る理由、それは下心。
隣のセラは何かを手放したかのような穏やかな顔で歩いている。きっと、セラの中に思うことがあるのだろう。
「なあ、帰るのは明日か?」
「はい、明日の朝立ちます。」
「ならデートしないか?観劇、興味あるって言ってただろ。」
「良いのですか?身なりも侍女ですが……」
「それなら問題ない。観劇までは時間がある。街に出るぞ。」
馬車で向かう先は街の貴婦人向けのサロン。こうなることを見越して服は用意してきてある。
「ほら、ここで着替えて綺麗にしてもらってこい。」
「こ、ここですか?」
「いらっしゃいませ……お、王弟殿下!?」
「ああ、こちらの女性をこの服に着替えさせて髪と化粧、香を整えてくれないか。」
店員はレオとセラを交互に眺めその関係を思案しながら頷いた。
「勿論でございます。ご案内いたしますわ。」
外で待つこと半刻ほど。待つのは得意ではない。だが待った先に楽しみがあるとなれば話は別だ。周りがざわついているのを感じる。今日は特に王族であることを隠しもしていない。隠せば街は楽しめただろうがレオにも多少の思惑があった。そろそろ関係性を周りに示しておきたい、というのがその思惑だ。そして相手が美しいと評判が立てば結婚相手として民衆も納得する。
そんな目論見を考えていると、セラが出てきた。
毎回我ながら愚かだと思う。上品なサーモンピンクのドレスに綺麗に巻いて編まれた髪。施された化粧はセラを可愛らしいから美しいへと変化させてしまう。
「まあ、美しい方……」
「どこかの令嬢かしら?」
「きっとそうよ。王弟殿下と共におられるんだもの。」
「でも王弟殿下、本気だわ。美しさに声も出せないなんて……」
周りで密やかに囁かれる声が聞こえる。どれも見事に的を射たものでレオの思惑通りではあるのだが。
「なんでそんなに綺麗なんだ……」
口の上手い男はどこに行った。店員も若干呆れている。
「本当に美しい方でしたので施し甲斐がありましたわ。またお越しくださいませ。」
気を遣って去る店員。手を差し出すと重ねられる手に躊躇いはなかった。
「本当に……綺麗だ。そのドレスの色もよく似合う。」
「ピンク、可愛いですね。」
「一度、着てみたいと言っていただろう。」
「覚えててくださったんですか?」
「お前の言ったことは基本忘れないつもりだ。しかしやっとお忍びでなく出掛けられるな。」
「噂になりませんか?」
「なっても構わん。婚約した時にあーやっぱりな。で終わるだろ。」
「そういうものですか。」
「そうだ。ここ、入るか。」
「宝飾店ですか?」
「ああ。そうだ。」
下心。セラといる時なんて下心ばかりだ。男なんてそんなものだと思う。さっきは見せつけたい下心。今は好みの指輪が知りたい下心。
「いらっしゃいませ……殿下!?」
店の雰囲気が瞬時に変わる。宝石を並べていた店員の手は止まり、セラへの椅子と茶の用意、恐らく主任と思われる接客担当が奥から出てくる。毎回のことだがこの光景がレオには酷く滑稽に見えた。
セラは恐ろしいまでのVIP待遇に居心地が悪そうだがレオといる以上避けられない。頑張って慣れてもらわねば。
「殿下、本日はどのような物をお探しでしょう。ご令嬢のお召し物に合わせたものも用意できますが。」
「では首飾りと耳飾りを一つずつ。あと指輪もいくつか見せてもらえないか。」
セットでの贈り物と判断したのだろう。店員は迅速に色、形の違う物を5セット、それからサイズやデザインの違う指輪を6本ほど出してきた。
「折角ですので試着室でお召しになられてはいかがでしょう?瞳の色が美しい方ですので照明の下では更に映えるかと。」
抵抗する気力も失ったセラはなされるがままに試着室へ連れて行かれている。
「あの、レオ様、これは……」
「いいだろう。恋人に贈り物をして何が悪い。」
「あ、ちょっと……」
店員に聞こえるように言ったのはわざとだ。これで粗相は出来まい。明日には宮廷で噂になるだろう。好きなだけなってくれればいい。
「まずは首飾りと耳飾りから。ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドをご用意いたしました。今日のお召し物でしたらダイヤモンドなどは映えるかと。」
手早くセラに付けていく店員たち。
「確かに今日はドレスの色が華やかだからな……セラはどれがいい?」
「……選ばないと言うのは」
「ない。」
「はぁ……それでしたら私もこのダイヤが良いと思います。」
「よし、そちらはそれで決まりだ、あとは指輪を見せてもらえるか?こちらは今日は買うつもりがないのだが……」
そう言い店員に目配せすれば意図に気づいた店員は俄然やる気を出した。
「お嬢様の白い指にはこちらの大粒のエメラルドなんかも映えますわ。もしくはこのようにサイドに装飾の入ったものなんかも……一つずつ試していきましょう。」
店員も固くなったセラをほぐそうとあの手この手で頑張ってくれた甲斐あって少しずつセラも反応が出るようになっていった。
「こちらはいかがでしょう?」
「少し派手すぎるような……」
「お嬢様は華やかなものがお似合いになります。こちらの装飾のついたものはいかがでしょう?粒自体は大きくありませんが拘った逸品です。」
「まあ、可愛い……」
「それが好きか?」
「あ、いえそれは……」
「可愛いならいいだろう。今まで見た中ならかそれが1番好きか?」
「えっと、はい。」
「そうか。ならとりあえず今日はその首飾りと耳飾りでいい。」
「かしこまりました。」
良い商談ができた店員は嬉しそうにレオとセラを見送った。
隣のセラは何かを手放したかのような穏やかな顔で歩いている。きっと、セラの中に思うことがあるのだろう。
「なあ、帰るのは明日か?」
「はい、明日の朝立ちます。」
「ならデートしないか?観劇、興味あるって言ってただろ。」
「良いのですか?身なりも侍女ですが……」
「それなら問題ない。観劇までは時間がある。街に出るぞ。」
馬車で向かう先は街の貴婦人向けのサロン。こうなることを見越して服は用意してきてある。
「ほら、ここで着替えて綺麗にしてもらってこい。」
「こ、ここですか?」
「いらっしゃいませ……お、王弟殿下!?」
「ああ、こちらの女性をこの服に着替えさせて髪と化粧、香を整えてくれないか。」
店員はレオとセラを交互に眺めその関係を思案しながら頷いた。
「勿論でございます。ご案内いたしますわ。」
外で待つこと半刻ほど。待つのは得意ではない。だが待った先に楽しみがあるとなれば話は別だ。周りがざわついているのを感じる。今日は特に王族であることを隠しもしていない。隠せば街は楽しめただろうがレオにも多少の思惑があった。そろそろ関係性を周りに示しておきたい、というのがその思惑だ。そして相手が美しいと評判が立てば結婚相手として民衆も納得する。
そんな目論見を考えていると、セラが出てきた。
毎回我ながら愚かだと思う。上品なサーモンピンクのドレスに綺麗に巻いて編まれた髪。施された化粧はセラを可愛らしいから美しいへと変化させてしまう。
「まあ、美しい方……」
「どこかの令嬢かしら?」
「きっとそうよ。王弟殿下と共におられるんだもの。」
「でも王弟殿下、本気だわ。美しさに声も出せないなんて……」
周りで密やかに囁かれる声が聞こえる。どれも見事に的を射たものでレオの思惑通りではあるのだが。
「なんでそんなに綺麗なんだ……」
口の上手い男はどこに行った。店員も若干呆れている。
「本当に美しい方でしたので施し甲斐がありましたわ。またお越しくださいませ。」
気を遣って去る店員。手を差し出すと重ねられる手に躊躇いはなかった。
「本当に……綺麗だ。そのドレスの色もよく似合う。」
「ピンク、可愛いですね。」
「一度、着てみたいと言っていただろう。」
「覚えててくださったんですか?」
「お前の言ったことは基本忘れないつもりだ。しかしやっとお忍びでなく出掛けられるな。」
「噂になりませんか?」
「なっても構わん。婚約した時にあーやっぱりな。で終わるだろ。」
「そういうものですか。」
「そうだ。ここ、入るか。」
「宝飾店ですか?」
「ああ。そうだ。」
下心。セラといる時なんて下心ばかりだ。男なんてそんなものだと思う。さっきは見せつけたい下心。今は好みの指輪が知りたい下心。
「いらっしゃいませ……殿下!?」
店の雰囲気が瞬時に変わる。宝石を並べていた店員の手は止まり、セラへの椅子と茶の用意、恐らく主任と思われる接客担当が奥から出てくる。毎回のことだがこの光景がレオには酷く滑稽に見えた。
セラは恐ろしいまでのVIP待遇に居心地が悪そうだがレオといる以上避けられない。頑張って慣れてもらわねば。
「殿下、本日はどのような物をお探しでしょう。ご令嬢のお召し物に合わせたものも用意できますが。」
「では首飾りと耳飾りを一つずつ。あと指輪もいくつか見せてもらえないか。」
セットでの贈り物と判断したのだろう。店員は迅速に色、形の違う物を5セット、それからサイズやデザインの違う指輪を6本ほど出してきた。
「折角ですので試着室でお召しになられてはいかがでしょう?瞳の色が美しい方ですので照明の下では更に映えるかと。」
抵抗する気力も失ったセラはなされるがままに試着室へ連れて行かれている。
「あの、レオ様、これは……」
「いいだろう。恋人に贈り物をして何が悪い。」
「あ、ちょっと……」
店員に聞こえるように言ったのはわざとだ。これで粗相は出来まい。明日には宮廷で噂になるだろう。好きなだけなってくれればいい。
「まずは首飾りと耳飾りから。ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドをご用意いたしました。今日のお召し物でしたらダイヤモンドなどは映えるかと。」
手早くセラに付けていく店員たち。
「確かに今日はドレスの色が華やかだからな……セラはどれがいい?」
「……選ばないと言うのは」
「ない。」
「はぁ……それでしたら私もこのダイヤが良いと思います。」
「よし、そちらはそれで決まりだ、あとは指輪を見せてもらえるか?こちらは今日は買うつもりがないのだが……」
そう言い店員に目配せすれば意図に気づいた店員は俄然やる気を出した。
「お嬢様の白い指にはこちらの大粒のエメラルドなんかも映えますわ。もしくはこのようにサイドに装飾の入ったものなんかも……一つずつ試していきましょう。」
店員も固くなったセラをほぐそうとあの手この手で頑張ってくれた甲斐あって少しずつセラも反応が出るようになっていった。
「こちらはいかがでしょう?」
「少し派手すぎるような……」
「お嬢様は華やかなものがお似合いになります。こちらの装飾のついたものはいかがでしょう?粒自体は大きくありませんが拘った逸品です。」
「まあ、可愛い……」
「それが好きか?」
「あ、いえそれは……」
「可愛いならいいだろう。今まで見た中ならかそれが1番好きか?」
「えっと、はい。」
「そうか。ならとりあえず今日はその首飾りと耳飾りでいい。」
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良い商談ができた店員は嬉しそうにレオとセラを見送った。
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