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第1章 月森ヶ丘自由学園

無謀すぎるネ!!

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しばらく様子を見ていたヒューが下ろしていた銃を構えようとした

  と、そのとき――‥

ヒューの部下の一人のグレイが上司であるヒューのいる場所へ駆けつけて来た。

「シュバルクさんっ!!だめです!その方はマコーネル・レイドと言って、ある意味有名なんですから!!」

走ってきた為か、ぜぇぜぇ…と息を乱すレイドにヒューは驚く


「……大丈夫か?」

「…ゼェッ…―ハァ……だ、大丈夫で…す……。 それよりも!彼は厄介です!!」

「?…どういう意味だ?」


「あれ…?知らないんですか!?彼はマコーネル・レイドと言って、あの若さにして優秀すぎる秀麗な青年。けど、あの性格にて恨みを買うこともしばしば‥。毒を吐くことも度々。仕事には生真面目、神経質なところもあり、仕事のことになると鬼になるとか‥。

常に徹底的に完璧に物事を熟すため、そのために強行手段を取ることも度々で、敵に廻したくないとかで…上も、ろくに口出ししないとか言う話しで有名なんですけど……知りません?けっこう、この業界じゃ有名な話しなんですけど」

(……それはある意味、問題児じゃないか?)


ヒューは、ひそかに思った。

「とにかく!!彼は、あの性格とあの毒舌で上も逆らえないほど……厄介な人物なんです!!上下関係なしに、毒を吐くことで有名なんですから、彼は」

「しかし、私の弟が…」

 
「大丈夫ですって…!彼は性格に難があっても、人としては落ちぶれてはいませんよ;;


相手に非があるときぐらいしか怒ることはないらしいですし、それにマコーネル・レイドと言ったら、あの若さにして我が英国が誇る国家機密情報機関特殊組織の副室長を勤めている方なんです。会話を聞くかぎり、恐らく室長と呼ばれている貴方の弟さんに非があるのではないかと……;」


「…クリフェイドが!? 私も父も何も聞いてないぞ!!?」

「あのですねぇ…。今まで、その室長の存在は明らかになっていなかったんですよ。噂で聞いた話によると、前の室長が国を裏切り情報を売っていたそうです。それに気付いた今現在の室長が前室長を失脚させ、組織内の混乱を納めたと聞いてます」

グレイの話しはさらに続いた。


「前の室長がスクワット・ブランドン。そして、今の室長が前室長に恨まれていてもおかしくありませんしね…。そういうこともあって、命を狙われることを避けるために今の現在室長の情報はトップ・シークレット。

顔も情報も一切外部に漏らされず、謎の人物として今、注目を浴びているという話ですよ?で、その中でも特に有名な話しですが。。現在の室長は、かなりのサボり常習犯だとか。仕事を放棄し職場から抜け出すこともしばしば…

そんな彼のお目付け役として、マコーネル・レイドが副室長に抜擢されたらしいです。なんでも、ほぼ毎日、所轄内でマコーネル・レイドの怒鳴り声が聞こえるらしいですが、今思えばそれはサボろうとする室長を怒鳴りつけていたと考える方が辻褄が合いますね。……何せ、彼らの日常茶飯事らしいですから」


その話しにヒューは驚きを隠せなかった…。

「まさか……クリフェイドが!? いや、それよりも何故、君はそんなに詳しいんだ…!?」

寧ろ、そっちに驚きを隠せないヒュー・シュバルク。


「あ!僕、これでも噂とかスキャンダルに敏感なんですよ。単に僕がそういうのが好きなだけなんですけどね」

あはは‥と苦笑いするグレイにヒューは、そうか…と言葉少なめに頷く

「まぁ、スクワット・ブランドンが生きていたとは思いもしませんでしたが…」

(それでも、収穫はありましたね)


不謹慎ながらも、そう思うグレイだった――…。


──────………
───……


「クリフェイド室長、今度という今度は逃がしませんよ?どんな手を使ってでも本国へ連れ戻させてもらいます」

言い切るマコーネルの目は本気。いや、彼はいつも常に本気だ。

「……とりあえず、崙。お前は逃げろ。お前に何かあると、お前の部下達に暴れられる」

憮然と崙に言い放つクリフェイドだが、崙は首を傾げる

「え゙~‥ボス、どうやって逃げたらいいネ?走って逃げるには無理だヨ。すぐ後ろは断崖絶壁ネ!」

なに言うネ!?と崙は顔を引き攣らせた。

「…だから、そこの断崖から海に飛び降りろと言っている」

わかれよ、と呆れた視線を向けるクリフェイドに崙は寧ろ、こっちの方に命の危機を感じる

「む…ムリ!!無理無理ヨ!!!!ここから海に飛び降りろ、なんて無謀ネ!無謀すぎるネ!!私、死ぬヨ!?ボス、私を殺す気!?」

必死な形相で、ブンブンと首を横に振る崙は全身の血の気が引くばかりだった。
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