室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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第1章 月森ヶ丘自由学園

……で、シフォン。言い訳は…?


「……ボス、大丈夫ですか?」

相変わらず、顔色の悪い崙を按じる少年は日系中国人だ。崙と少年をさておき、クリフェイドと満はというと…

「今日は鬘じゃないんだな‥‥。お前も大変だな。ま、俺んとこも、あまり変わらない気がするけど……」

「けど、よかったのか?お前、たしか私立学園の理事長だろ?…黒河学園だったっけか‥?よくも、まぁ……執事…キースさんだっけ?許してくれたな?」

こんなところに一人で行かせるなんて… と言うクリフェイドに満と呼ばれた少年は言う

「はぁ?あいつに言うわけないだろ?言って許してくれるタマかよ?…それと、な?黒河学園じゃなくて緑河学園な?よく間違われられるけど、全くの別学園だから」

「…………」

きちんと訂正する満という少年にクリフェイドは、悪いと詫びを入れた

「別に気にしてはいないけどな。それにしても、そろそろ出してもいいか?」

「あぁ…悪いが頼む」

クリフェイドの返事を聞くなり、満はモーターボートのエンジンをフル全開にし、あっという間にその海域を後にする…

その一連の様子を崖の上から見ていたマコーネルは、クリフェイドを確実に窮地に追い詰めていたものを、まんまと逃げられた手前、悔しさあまり拳を握り締め、わなわなと… 怒りで震えていた。

 そして、残されたシフォンとレオはというと…


マコーネルの怒りに、自分の身の危険を感じていた‥。

 ブルルルン…

         ブォー…

エンジン全開で、この海域を後にするモーターボートを睨みつけていたマコーネルは唐突に言った

「………で、シフォン。言い訳は…? 」

眉をピクピクッとさせて、低い声で問うマコーネルは…恐ろしかった。

「ひっっ…!!な、ないですっ!!!」


憐れ、シフォン‥。

「…まったく、そもそもの事の原因は室長と貴方が二年前のスクワット・ブランドンの事件の事実を隠蔽し、私に嘘の報告をしたことです。あのときに報告をきちんとしていれば、こんなことにならなかったのでは…?」

マコーネルから冷ややかな視線を浴びながらも、尤もな指摘にシフォンは何も言えず身が縮こまるばかり‥

そんな二人を見兼ねたレオは、まぁまぁ‥とマコーネルを宥める

「それよりも、室長が先だろ?」

「えぇ…。シフォン、室長が向かった先を存知ないですか?」

「い、いえ…俺も、そこまでは…」

口ごもるシフォンに、これ以上、聞いても無駄だとわかるとマコーネルはアクシオンらに視線を向けた

今だ、放心状態の兄、ヒュー。部下は抜け殻状態の上司を必死に声をかけているが、あまり変化が見られないようだ‥


父、アクシオンに至っては、かなり取り乱していた

「…お……お、俺の息子が…息子がーっ!」

地面に泣き崩れるアクシオンは、息子が崖から飛び降りたことのショックがハンパないのか、部下達が慰めようとするも腕で振り払い、自己嫌悪に陥る始末。

部下達は困惑していた。自分の上司が使い物にならないと‥。

クリフェイドが飛び降りた後すぐにパラシュートを開き、モーターボートに乗って逃亡したのは、誰もが見ていた。

 二人を除いて…。

つまり、皆、クリフェイドが無事なことも、まんまと窮地から逃げおおせたことも知っている。

…………が、アクシオンとヒューに限っては、クリフェイドが崖から飛び降りたという衝撃の方が強かったようで、それから二人はずっとあんな調子だった。部下達は困り果て、マコーネルは迷惑そうに眉間を寄せていた

  そのとき――‥

「おやおや…… 逃げられてしまいましたか…クスッ」

残念です、と笑顔を張り付けた始終笑顔に、さらさらとした短髪に銀髪。ハーフを思わせるその容姿に黒い燕尾服を着た男が‥‥

いや、まだ若い青年が立っていた。

「…誰です?」

新たな来訪者にマコーネルは俄に皺を寄せる

「クスッ… 人にお尋ねになる前に先ずは、ご自分を名乗られるのが礼儀では…?」

ニコニコと笑顔で答える黒い燕尾服の青年にマコーネルの眉がヒクつく。

(……この二人、相性悪っっ!!!)

周りの人間は瞬時に悟る――

この二人の相性は最悪だ、と…。初対面にも関わらず、マコーネルと青年の互いの印象は…

((…また、生意気そうな顔してますね))


見るからに最悪だった。


「それはそれは…

いきなり声をかけられて来られたので、てっきり取り逃がした連中かと思いまして‥。挨拶が遅れましたね。私は英国の国家機密情報機関特殊組織の副室長を勤めるマコーネル・レイドと言います。

………以後、お見知り置きを」


以後なんて無いことを願いますが。

と、皮肉るマコーネルに今度は相手の青年がヒクつく。

「これはこれは……ご丁寧なご挨拶を。私は私立緑河学園の理事長代理を務めていますキース・ディーンズと申します。

以後、宜しくするつもりもありませんので‥」


気になさらないで下さいと、こちらもまた引き攣る笑顔で、そう返す

バチ…バチッ…とお互いに視線がぶつかり合い火花を散らせる。そんなマコーネルとキース二人の背後には……………ブリザードが吹き荒れていた――…。


ヒュゥウゥ――‥

        ゴォオォオオ…

(さ…さむ゙っ!!マジでハンパなく寒いんですけど)

二人が纏うブリザードに絶対零度に冷え込む寒さ、周りの人間はいい迷惑だった。
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