509 / 516
第1章 月森ヶ丘自由学園
…あの家族とだけは関わりたくありません
しおりを挟むそして、パーティー当日‥
-会場-
「やぁ!ヒュー・シュバルク殿、ご無沙汰だな。父君にも挨拶をしたいのだが……父君がどちらへ行かれたかご存知ないか?」
大統領主催のパーティーに呼ばれたヒュー・シュバルクは、突然声をかけてきた男を見て、あぁ!と声を上げた。
「マーカー・レイジェント殿、お久しぶりです」
マーカー・レイジェントはアクシオンと同じくCIAの上層部で同僚の男だった。以前にも父の関係で顔を合わせたことがあったため、その見知った顔に苦笑して応えた。
「……父なら、あそこですよ」
困ったように、ハハ…と乾いた笑いを漏らすヒューを訝しげに見つめた後、マーカー・レイジェントはヒューと同じく目を移してようやく苦笑した意味を理解できた
目を移したその先には…
そこは、ケーキやデザートが並べられた上質な白い布一色に統一されたテーブルクロス。
何故か、そこには一人の少年といい年した一人の大人が陣取っていた‥。
いや、正確に言えば…
何やら彼ら二人が揉めているらしい‥。と、いっても男が一方的に言っていて少年はそれを無視。ひたすら、黙々とケーキを漁っていた
それを見ていた周りの人間は、気まずいためか近づき難い空気なためか…
そこだけ、円を書くように半径2m程ぽっかりと空いていた
「………(モグモグ」
「クリフェイド!!俺が悪かった!な?だから、そろそろ機嫌を直してくれないか?」
「…………(モグモ…ゴクン‥」
ひたすら無視を続ける
「なぁ!そろそろ父さんとも口を聞いてくれ… ヒューにジルタニアスや昴とかとは口を聞くのに、父さんとは口も聞いてくれないのか!?」
と、先ほどから延々とこんな調子が続き、野次u…周りの人間はそんな二人を少し離れた所から生温かく見守っていた。
「僕はパーティーに出席すると言った覚えはないんですがねぇ? なぜ目が覚めたらタキシードに着替えた状態で車に乗っているんでしょうか…。 まったく、最悪としか言いようがないですね」
やっと口を聞いたかと思えば、父に嫌味しか出てこない
「く、クリフェイド!!怒ってるのか!? いや、お前が怒るのも無理はないと思う。けどな? お前に幾つか言わないといけないことがあるんだが。このパーティーは大統領主催のモノだが、クリフェイドは他の意味でも招かれていてだな」
「……お前に出席するよう言ったのは、俺の父上で‥つまり、お前のお祖父様とお祖母様だ」
瞬間、クリフェイドの纏うオーラが変わった。まるで、そこだけが絶対零度の世界のように───。
「あぁ!まだ生きてらっしゃったんですね。あの老いぼれ共」
「クリフェイドっ!!」
アクシオンは慌ててクリフェイドを窘める。
「ああ!すみません。思わず本音が漏れてしまいました」
「クリフェイド~っ!!」
父は頭を抱える。
「お前や父上達が仲が悪いのは分かっている。だが、せめて今日だけは愛想よくしてくれっ!!」
「……愛想よくしていれば、何してもいいってことですか」
なるほど…と頷くクリフェイド。
「ち、がーっう!違う違う!!誰もそんなこと言ってないぞクリフェイド!?」
今度は二人でコントを始めた‥。
「………」
「………」
マーカー・レイジェントは無言の後、ヒューに尋ねた
「…あの光景はいったい何かね!?」
驚かずにはいられなかった。
「あはは‥。え~っとですねぇ…彼、私の末弟なんですが。見たとおり、パーティーが嫌いなんですよ。ですが、お祖父様とお祖母様の言い付けで父があの子が眠っている間に無理矢理に車に運んで連れて来たんですよ」
そういって、クリフェイドを困ったように見つめるヒュー…。
「簡単に言えば、クリフェイドは拗ねてるんですよ。パーティー以前にお祖父様とお祖母様に会うのを嫌がってるものですから…」
「ふむ」
ヒューの言葉に頷くも、マーカー・レイジェントは目の前の光景に目を見開くばかりだった。いつも、職場では仕事上もあってか、他人に対しても自分に対しても人一倍厳しいアクシオンが…
今では末息子の言動に頭を抱えるという同じ職場で働く人間として、同僚として、ありえない見たことのない驚きの光景にア然とするばかりだった‥。
「あれはもう…… 親バカの範囲を超えていないか」
同時に呆れの溜息が漏れる。
「ですが、あぁいう拗ねたところも‥
また、可愛いと思えるんですけどね。本人に言ったら本気で嫌がられるんで言わないんですが」
と言うヒューにレイジェントは無言でガン見する。
「………」
(…………いたよ!此処にも兄バカが一人いるよ。)
レイジェントは内心呆れた心境でクリフェイドらとヒューを交互に見ていたのだが、ヒューは何を勘違いしたのか、
「?…どうしました?Σはっ!! もしや、レイジェント殿も…。だめですよ!いくら父の同僚でもクリフェイドはお譲りしません」
ヒューの、まるで、うちの娘をあげるものか!と言ったような発言に、レイジェントが驚きの声を上げるよりも早く上げたのは――…
「なんだって!?レイジェント貴様、俺の息子を誑かす気か?! 俺の可愛いクリフェイドをどこの馬の骨かも解らない奴に渡すものか!」
レイジェントが、『は!?』という驚きの声を上げるよりも先にアクシオンが声を上げる。その瞬間、今まで温かく見守っていた野次馬達が一瞬にしてレイジェントに憐れみと同情の目を向けてきた‥。
シュバルク家の噂はいろいろと聞いてきたレイジェント。今の今まで仕事上の付き合いだけだからと大して気にもしなかったが、
このパーティー会場でいつのまにかよく分からないことに巻き込まれたあげく、野次馬の同情と憐れみの視線を浴びさせられ、さらに人目の注目も浴びる始末。さすがのレイジェントも、これには堪えた。
これほどシュバルク家が厄介とは思わなかったレイジェントはパーティーに出席したことを直ぐさま後悔する。
パーティー好きなレイジェントがパーティーに来て早々、来なければよかったと後悔したのは今日が初めてだった。
「………」
「………」
銀髪の青年は、何か言いたげに憮然とした表情の金髪美形の男をちらりと見る
やがて、その視線に耐えられなくなった男は溜息つくと口を開いた
「………何です?シフォン。話しがあるのなら聞きますから、その、ちらちらと視線を向けるのはやめて下さい」
鬱陶しいです、と俄かに皺を寄せて言う男にシフォンは慌てて、すみません…と謝る。
「あ、あの…
マコーネルさん!ですが、止めなくてもいいんでしょうか?レイジェント殿が困ってるようですけど‥」
はぁー…。マコーネルはその言葉にうんざり気味に盛大に溜息つく
「馬鹿ですか? いいですかシフォン…。私達の問題児は室長だけで十分です。わざわざ、問題児の+αに関わりに行かなくていいんです。…あの家族とだけは関わりたくありません」
そう言ってマコーネルが顔を歪ませていることから本心で言っていることを窺わせる‥。
上司の嫌がる理由にシフォンも頷いた。
確かに、あまり関わり合いたくない人種だとそれは思うのだが…。
遠い所から、その様子を見つめるマコーネル達‥
が、しかし。シフォンはやはり巻き込まれたレイジェントを見ていられない。何せ、今まで揉めていた室長もといクリフェイドとアクシオンだったが、
ヒューの誤解から生まれた発言により、クリフェイドと揉めていたアクシオンはレイジェントに詰め寄り、五月蝿い奴がいなくなったとクリフェイドは、またケーキを漁り始めていた…。
止めようと足を進めようとしたシフォンをマコーネルは腕を掴むなり引き戻した
「やめなさい。あなたが行ったところでどうもなりませんよ。尚さら状況が悪化するだけです。それどころか、変な言い掛かりをつけられてレイジェントの二の舞を辿ることになるのが目に見えています。
………それが嫌なら、事が収まるまで動かないことです」
「そうそう!ここは……料理を美味しく頂くってもんだぜ?」
いきなり二人の会話に入ってきたのは、皿に盛ってやって来たレオだった。
「…レオ、誰も食べるなとは言いませんが、今回は仕事で来ているということを忘れてはいませんよね?」
「だ~いじょーぶ大丈夫。覚えてるって!…だから、その疑う目で見るのはやめてくれ」
マコーネルのレオを見る瞳は疑わしい目つき。
「それはそれは……
すみません。どうにも、仕事そっちのけでパーティー会場に出る料理を堪能しているようにしか見えないもので…」
そんなマコーネルにレオは嫌味かよ!?と突っ込んだのだった――…。
7
あなたにおすすめの小説
王道学園に通っています。
オトバタケ
BL
人里離れた山の中にある城のような建物。そこは、選ばれし者だけが入学を許される全寮制の男子校だった。
全寮制男子校を舞台に繰り広げられる様々な恋愛模様を描いた短編集。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね
【完結】その少年は硝子の魔術士
鏑木 うりこ
BL
神の家でステンドグラスを作っていた俺は地上に落とされた。俺の出来る事は硝子細工だけなのに。
硝子じゃお腹も膨れない!硝子じゃ魔物は倒せない!どうする、俺?!
設定はふんわりしております。
少し痛々しい。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
説明は初めの方に詰め込んでます。
えろは作者の気分…多分おいおい入ってきます。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫だと……思います(?)
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
5/25
お久しぶりです。
書ける環境になりそうなので少しずつ更新していきます。
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる