室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

文字の大きさ
510 / 516
第1章 月森ヶ丘自由学園

……あの…いいんでしょうか。



一人黙々と食べるクリフェイド。自分が原因だということもそっちのけで、ついにはケーキ1ホールに手をつけていた‥。

「……あの…いいんでしょうか。室長、止める気はなさそうですし、何より‥あのままだとケーキを食べ尽くしてしまうのでは」

シフォンは、困惑顔で上司のマコーネルに目を向ける
。そんなシフォンにマコーネルは俄かに眉間を寄せ、レオから視線を外すとクリフェイドをちらりと見て言った


「……いくら室長でも、そんな常識外れなことはさすがに…」

そこで、マコーネルは途中で言葉を切ると眉間を寄せたまま顎に手をかけ考え込んだ。そして、いきなり顔を上げるや出た言葉は・・

「いえ、ちがいますね。あの室長だからこそ非常識というものが成り立つ…」


マコーネルは小さい声で呟くが、側にいたレオとシフォンには丸聞こえだった。

「これは何の騒ぎですか…?」

ヒールの音を立ててやって来るのは、品劣らぬドレスを纏った歳のとった気品あふれる女性で、その女性は歳を老いているにも関わらず、気品があり、また神経質そうに眉間に皺を寄せてアクシオンの近くに足を運ぶ。

途端、その年老いた女性の登場に会場はシーン…と静まり返り、クリフェイドはというと不愉快窮まりない顔でケーキを乗せた皿ごと持って、そっとその場を離れようとした。


 ───が、

「お待ちなさいクリフェイド。あなたにも言っているのですよ?」

突如現れた女性は、クリフェイドの退出を許さなかった‥。

(気のせいでしょうか?何故か会場が一気に冷え込む感じが…)


シフォンは不安そうな面持ちでクリフェイドを見つめる


「…あぁ、お祖母様ご機嫌よう。相変わらずお元気そうで……… 僕は残念です。年寄りは長生きせず、とっとと若い世代に任せて旅立つものですよ?」


 旅立つ=あの世。

瞬間、会場は凍りついた。


何せ、シュバルク家は由緒ある大貴族。そして、当主であるアクシオンよりも上なのが、その父と母に当たる存在だ。


いくら隠居しようとも、生きている間はそれなりに権力もアクシオンよりも強かったりする‥。つまり、先ほどからクリフェイドの言動を気にしているのはそういうことだった。いくら、アクシオンと言えども父と母には逆らえない‥

そんな心情の父の思いも虚しく、攻防は続く。

「ピクッ)…なんですって!?」


クリフェイドの言葉に我慢ならない祖母は青筋を浮かばせて、聞き返す

「おや、聞こえなかったんですか?耳悪いですか。それとも理解出来ないのでしょうか…?ああ、もうきっと末期なんですよお祖母様。一度病院に行って頭診てもらったらどうです?きっと頭の中がすっからかんになってますよ。でなければ、僕の言葉が理解できないわけがありませんからね」

無表情に淡々と紡がれるクリフェイドの言葉‥否、毒舌に周りはア然とする。


「…いつにましてや、キッツイ毒舌だな」

すげぇな…と感心するレオの横でマコーネルとシフォンはひそかに溜息をついた。


「アクシオンっっ!!!貴方は一体どういう教育をしているのです?! 年上をも敬おうとしないのですよ!?」

怒りに震える祖母にクリフェイドはボソリと言う


「僕にも敬うべき相手を選ぶくらいの権利はありますからね…」

「クリフェイドっ!頼むから、これ以上、母を煽らないでくれ!!」


クリフェイドの何気なく呟いた言葉に、わなわな…っと震える祖母。アクシオンも慌ててクリフェイドを注意するが、逆に鼻であしらわれる‥。いつになく大層、機嫌が悪いクリフェイドにマコーネルはもう溜息が出てばかり。

そして、周りの人間はというと……


遠巻きに彼らを見守っていた。めったにパーティーに出席しないシュバルク家の末息子にいろいろな噂が飛び交っていたが、そんな噂もたまには当たることもあるものだ…と内心、思いつつ、また彼はある意味、問題児だということを幸か不幸か‥周りの人間に深く印象付けたのだった。


「まったく、アクシオンはどういう教育をなさっているのかしら!?…まぁいいわ!あなたのような子を私としてはパーティーに参加させたくなかったのですが、大統領のご温情によりあなたを招きました。

大統領には御礼を言っておくように…」


本当に… ぶつぶつと悪態つく祖母。クリフェイドはさらに言おうとしたが、気付いたアクシオンが慌ててクリフェイドの口を押さえたため、未然に防げた。


「久しぶりだな。アクシオンにヒューに……クリフェイド」

立派な髭を生やした年老いた男性がこちらへ歩んでくる

「父上…」

アクシオンは言った。


「一人足りないな。ジルタニアスの顔が見えない。あ奴は何処にいる?」

「父上、ジルタニアスは仕事の関係で今、日本にいますよ」


「…そうか。

それで、お前たちは先ほどから何を揉めている?仮にも公共の場で……少しは場を考えろ」


「すみません」

男の叱責にアクシオンは、直ぐさま謝罪した。


「…さてさて、うちの者が騒がせてしまったようですまない。 皆はパーティーを続けて楽しんでくれ」


その男の声を聞いた途端、野次馬たちは散り散りに‥。またパーティーを楽しみ始めた。

「…さて、久しぶりに顔を合わせるなクリフェイド。相変わらずのようだが‥」


祖父の言葉にクリフェイドも言う

「お祖父様も相変わらずですね。僕としてはお二人に会いたくなかった……というより顔を見るのも嫌なんですよ」

祖父の登場に、うっかりクリフェイドの口から手を離してしまったアクシオン。クリフェイドの毒舌は止まることがない


「私としても会いたくなかった。が、パーティーとなると実際そうもいかん…。話しは変わるが、ジェイムズ・ウィンディバンク伯爵がお前に話しがあるそうだ」

伯爵の名前にピクリと片眉を動かすクリフェイドは必死に記憶を手繰り寄せていた。ジェイムズ・ウィンディバンク伯爵……名前に聞き覚えがあるが、顔が全く思い出せない。───…と、そこへでっぷりとした身体に白い髭を生やした男とまだ若いクリフェイドよりも少し年上な感じな男が現れた


「シュバルク公爵殿、ご紹介ありがとうございます」

そう言って会釈する髭を生やした男に続き成人したばかりの若い男も、それに習い会釈した。


そして、その聞き覚えある声にクリフェイドが顔を歪めるのと、顔を上げた男がクリフェイドの顔を見た途端、ピシッと固まったのは、ほぼ同時だった――‥。
感想 42

あなたにおすすめの小説

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。 生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!? 聞いてた話と何か違うんですけど! ※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。 他のサイトにも投稿しています。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。