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第1章 月森ヶ丘自由学園
……あの…いいんでしょうか。
一人黙々と食べるクリフェイド。自分が原因だということもそっちのけで、ついにはケーキ1ホールに手をつけていた‥。
「……あの…いいんでしょうか。室長、止める気はなさそうですし、何より‥あのままだとケーキを食べ尽くしてしまうのでは」
シフォンは、困惑顔で上司のマコーネルに目を向ける
。そんなシフォンにマコーネルは俄かに眉間を寄せ、レオから視線を外すとクリフェイドをちらりと見て言った
「……いくら室長でも、そんな常識外れなことはさすがに…」
そこで、マコーネルは途中で言葉を切ると眉間を寄せたまま顎に手をかけ考え込んだ。そして、いきなり顔を上げるや出た言葉は・・
「いえ、ちがいますね。あの室長だからこそ非常識というものが成り立つ…」
マコーネルは小さい声で呟くが、側にいたレオとシフォンには丸聞こえだった。
「これは何の騒ぎですか…?」
ヒールの音を立ててやって来るのは、品劣らぬドレスを纏った歳のとった気品あふれる女性で、その女性は歳を老いているにも関わらず、気品があり、また神経質そうに眉間に皺を寄せてアクシオンの近くに足を運ぶ。
途端、その年老いた女性の登場に会場はシーン…と静まり返り、クリフェイドはというと不愉快窮まりない顔でケーキを乗せた皿ごと持って、そっとその場を離れようとした。
───が、
「お待ちなさいクリフェイド。あなたにも言っているのですよ?」
突如現れた女性は、クリフェイドの退出を許さなかった‥。
(気のせいでしょうか?何故か会場が一気に冷え込む感じが…)
シフォンは不安そうな面持ちでクリフェイドを見つめる
「…あぁ、お祖母様ご機嫌よう。相変わらずお元気そうで……… 僕は残念です。年寄りは長生きせず、とっとと若い世代に任せて旅立つものですよ?」
旅立つ=あの世。
瞬間、会場は凍りついた。
何せ、シュバルク家は由緒ある大貴族。そして、当主であるアクシオンよりも上なのが、その父と母に当たる存在だ。
いくら隠居しようとも、生きている間はそれなりに権力もアクシオンよりも強かったりする‥。つまり、先ほどからクリフェイドの言動を気にしているのはそういうことだった。いくら、アクシオンと言えども父と母には逆らえない‥
そんな心情の父の思いも虚しく、攻防は続く。
「ピクッ)…なんですって!?」
クリフェイドの言葉に我慢ならない祖母は青筋を浮かばせて、聞き返す
「おや、聞こえなかったんですか?耳悪いですか。それとも理解出来ないのでしょうか…?ああ、もうきっと末期なんですよお祖母様。一度病院に行って頭診てもらったらどうです?きっと頭の中がすっからかんになってますよ。でなければ、僕の言葉が理解できないわけがありませんからね」
無表情に淡々と紡がれるクリフェイドの言葉‥否、毒舌に周りはア然とする。
「…いつにましてや、キッツイ毒舌だな」
すげぇな…と感心するレオの横でマコーネルとシフォンはひそかに溜息をついた。
「アクシオンっっ!!!貴方は一体どういう教育をしているのです?! 年上をも敬おうとしないのですよ!?」
怒りに震える祖母にクリフェイドはボソリと言う
「僕にも敬うべき相手を選ぶくらいの権利はありますからね…」
「クリフェイドっ!頼むから、これ以上、母を煽らないでくれ!!」
クリフェイドの何気なく呟いた言葉に、わなわな…っと震える祖母。アクシオンも慌ててクリフェイドを注意するが、逆に鼻であしらわれる‥。いつになく大層、機嫌が悪いクリフェイドにマコーネルはもう溜息が出てばかり。
そして、周りの人間はというと……
遠巻きに彼らを見守っていた。めったにパーティーに出席しないシュバルク家の末息子にいろいろな噂が飛び交っていたが、そんな噂もたまには当たることもあるものだ…と内心、思いつつ、また彼はある意味、問題児だということを幸か不幸か‥周りの人間に深く印象付けたのだった。
「まったく、アクシオンはどういう教育をなさっているのかしら!?…まぁいいわ!あなたのような子を私としてはパーティーに参加させたくなかったのですが、大統領のご温情によりあなたを招きました。
大統領には御礼を言っておくように…」
本当に… ぶつぶつと悪態つく祖母。クリフェイドはさらに言おうとしたが、気付いたアクシオンが慌ててクリフェイドの口を押さえたため、未然に防げた。
「久しぶりだな。アクシオンにヒューに……クリフェイド」
立派な髭を生やした年老いた男性がこちらへ歩んでくる
「父上…」
アクシオンは言った。
「一人足りないな。ジルタニアスの顔が見えない。あ奴は何処にいる?」
「父上、ジルタニアスは仕事の関係で今、日本にいますよ」
「…そうか。
それで、お前たちは先ほどから何を揉めている?仮にも公共の場で……少しは場を考えろ」
「すみません」
男の叱責にアクシオンは、直ぐさま謝罪した。
「…さてさて、うちの者が騒がせてしまったようですまない。 皆はパーティーを続けて楽しんでくれ」
その男の声を聞いた途端、野次馬たちは散り散りに‥。またパーティーを楽しみ始めた。
「…さて、久しぶりに顔を合わせるなクリフェイド。相変わらずのようだが‥」
祖父の言葉にクリフェイドも言う
「お祖父様も相変わらずですね。僕としてはお二人に会いたくなかった……というより顔を見るのも嫌なんですよ」
祖父の登場に、うっかりクリフェイドの口から手を離してしまったアクシオン。クリフェイドの毒舌は止まることがない
「私としても会いたくなかった。が、パーティーとなると実際そうもいかん…。話しは変わるが、ジェイムズ・ウィンディバンク伯爵がお前に話しがあるそうだ」
伯爵の名前にピクリと片眉を動かすクリフェイドは必死に記憶を手繰り寄せていた。ジェイムズ・ウィンディバンク伯爵……名前に聞き覚えがあるが、顔が全く思い出せない。───…と、そこへでっぷりとした身体に白い髭を生やした男とまだ若いクリフェイドよりも少し年上な感じな男が現れた
「シュバルク公爵殿、ご紹介ありがとうございます」
そう言って会釈する髭を生やした男に続き成人したばかりの若い男も、それに習い会釈した。
そして、その聞き覚えある声にクリフェイドが顔を歪めるのと、顔を上げた男がクリフェイドの顔を見た途端、ピシッと固まったのは、ほぼ同時だった――‥。
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