室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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第1章 月森ヶ丘自由学園

何も考えてなかった…!



あれは、ターナー・ウィンディバンク!? なぜ、彼がこんな所に‥

先ほどクリフェイドに熱烈な求婚を申し込んでいた人物の思わぬ登場にシフォンは驚いていた。二人の会話を聞き取ろうとシフォンは気配を消し、そっと柱の影から様子を窺う

普段なら、そんなシフォンの気配にも気づくクリフェイドだが、思っていたよりも緊迫しているのかシフォンの存在に気づかない‥


「ターナー・ウィンディバンク。僕が皆の前で下手に動けないことをいいことに… よくもまあ、あんなふざけたことを言ってくれたな」

ニコリともせず、クリフェイドは淡々とした口調で言っていく


「この、シャンメリー‥‥ ボーイ、給仕の男がくれたが、あれは、貴様の手下だろ?ターナー。僕を毒殺でもする気だったんだろうが‥

あいにく、僕にはそういった分野に多少知識がある」


 パッ…

        ガシャンッッ!!


クリフェイドは持っていたグラスを離し、床に落ちたグラスは割れ、シャンメリーの赤い液体が大理石の床を滑るように流れていく‥


「だから、貴様の思うようにはいかないぞ。ターナー…もしくは、こういうべきか‥

スネークの創立者、ターナー・ウィンディバンク殿」


クリフェイドは、もはや敬語を外し地に戻っていた。

「フッ…一体、何のことやら‥。それに喋り方も変わったな?なるほど。それが本来のお前か」


んな゙?!室長を毒殺!?そ、それに… ターナー・ウィンディバンクがスネークの創立者!? ちょっ…ちょーっと待ってくださいよ!!俺、室長からそんな話し、一つも聞いてないんですけどっ!?


心の中で突っ込み所が満載なシフォン。

「まさかスネークの創立者が若い奴とは思っていなかったが…… それを言うのなら僕にも当て嵌まるか。上に立つだけの力さえあれば年齢に関係なく誰でもなれるからな。話しが脱線したが、お前の父、財務大臣のジェイムズは全くの無関係。ならば、別にわざわざ僕に関わる必要はなかった。

…が、関わらなければなくなったのは貴様の父親のジェイムズ財務大臣と特に険悪な僕。そして、その相手が国の誇る国家機密情報機関特殊組織の室長であるということを知ったため。


最初こそは、ただ様子見だったが…

つい、この間に全世界向けに生中継で放送されたあの事件。あれによってスネークは世間に明るみになりかけた。

…と同時にスネークの組織に、やたらと詳しく知っている僕を放っておくことを危険と見做した君は、裏切り者のスクワット・ブランドンを始末する前に情報を知り尽くす邪魔な僕を先に片付けることにした‥。」


「クッ…おかしなことを。だったら何故、俺はお前に求婚を申し込むんだ?おかしいだろ?」

「フンッ!あいにく、僕もそう馬鹿じゃない。貴様の考えてることくらい大体は分かる。


ここ最近のストーカーは屋敷を調べる為ともう一つ、僕を好きだということをアピール…。その、はた迷惑なストーカーによるアピールにより、貴様は僕を熱烈に好きだという行動。

パーティー…今日の求婚を申し込むためだけに周りに不審がられない為、父親を騙す為… そう、全てはこの日のための茶番劇。両家を不本意ながらでも納得させるには十分に値する行動。身内を味方に引き入れ、僕を強引に無理矢理にでも貴様と結婚させれば、二人で新しい家に住むとでも言って、家から出て行っても何らおかしくない。



……そして、お前は僕を殺す。身内から僕の姿が見えないとか言われても、夫婦なら嘘をつけるのは、たやすいからな。

僕を常に病気がちで床に伏せている‥とでも言えば、父や兄も納得するだろ。俺がいるから大丈夫だ、とでも言えば… それこそ完璧。父や兄はCIAやFBI。普通に片付ければすぐにバレてしまう。


だから、お前はより自然に‥怪しまれない為にも、この方法が一番だと思った。

 ………ちがうか?」


クリフェイドは前で腕を組み目の前の相手を見据えて言った


「ターナー?」

「くっくっくっ… なるほど。情報だけでなく、洞察力や推理力も大したものだ。けどな、お前の推理、一つ間違っているところがあるぞ。給仕の男がお前に渡したそのシャンメリー…。実際、毒は入っていない。

盛っていたのはシャンメリーの方ではなく、そのグラスの口で含む部分に当たる場所。…因みに毒ではなく睡眠薬だが。


───それから、あの求婚の理由については確かに合っている。中々お前が承諾しそうにないもんだから、組織の男に給仕を頼んだんだよ。睡眠薬を盛らせて会場から連れ出せ。…ってな?表では、男と関わりを持たないからな。俺は疑いをかけられることもなく、容易にお前を連れ出せるってわけだ。

…ま、そんな必要もなかったみたいだがな」


ククッ… ターナーは小さく笑い声を漏らすと話しを一端切り、クリフェイドを鋭い目で見据えた


「で、なぜ俺がスネークの創立者だと分かった?」


「僕もはじめから知っていたわけじゃない。スネークの創立者は死んだ…そう思い込んでいたが、あれはお前の双子の兄だった。追いつめたのは僕だが、最終的に自殺という形で彼は死んだ。 が、あの後、彼の遺体を調べたところ大麻を服用していたことが分かった。

その服用を促していたのは……お前だなターナー? 闇取引によって手に入れた数々の薬を常に病気がちだった兄に元気になる薬だと称して飲ました。事の発端は優秀な兄に嫉妬して……というところか? 病気がちな身体の弱い兄。だが、兄はそれを補えるほど優秀な人間だった。

 双子だから、と‥


何もかもが似るわけじゃない。兄が優秀に比べ弟は普通だった‥。何かとある度に周囲の人間に双子なのに、あぁも違うのか…とか言われていた。ちがうか?だから、お前は兄を殺そうと思った。兄さえいなくなれば… と、まぁそんな感じに‥。

薬、大麻を服用するようになった兄はしだいに幻覚を見始め、父はそんな彼をあしらい頼るべき存在は弟だけ‥。スネークを調べている僕のことを聞き付けた君は兄を利用した。自分と瓜二つの姿を持つダミーとして、自分の駒として」



「くっく!ああ、そうだよ。俺がアイツを死に追いやった!!!双子なのに俺と違って優秀な兄。妬ましかった。だから、死へと追いやった」

「僕が君の潜伏場所を向かう情報は一部しか知られていなかった。僕の情報を漏らしたのは、やはり……スクワットか?」


 くっくっくっ…

「ああ、そうさ!スクワットも俺と兄の存在を知らなかった。もはや気力もない兄の身体に注射器で埋め込んだ盗聴器のマイクロチップから俺が情報を得、

兄に取り付けた高性能なマイクから俺が指示していたとは知らずにな?」



ターナーは豪快に笑った。

「兄は常日頃から幻覚を見るようになっていた。そして、その幻覚から恐怖から自分の身を守るために内ポケットにナイフを所持していた。

そこへ、突然な乱入者。見知らぬ顔に問い詰める男。幻覚に病んでいた兄は自分を殺しに来た、そう思ったんだろうな。最後は自らナイフを振り下ろし、己の命を絶った兄…」


なるほどっ!あの不可解な自殺事件の裏にはそういうことが…!!

「くっくっ… 本当に愉快だ。お前という存在がいなければな? まったく、お前は邪魔でしょうがない。 それに、ここまで知っているのなら尚更、生かしてはおけない」


ターナーは口の端を上げると懐から銃を出し、クリフェイドに向けた


「さぁ…どうする? さすがのお前でも銃を前にすれば動けんだろう?室長殿」

・・・まずい。流れに任せたとはいえ、この状況から抜け出す策を考えてなかった!!!


クリフェイドのその顔は無表情のままだが、その内心ではかなり焦っていた。…いくら僕が優秀でもさすがに、この状況は不利だ。証拠となるものは不十分だし、くそっ!!!

「…どうした?やはり銃を前にすればいくら優秀な室長でも手足が出まい。ましてや、室長と言えど情報に長けていても所詮は情報。こういったことにはあまり慣れていないんじゃないか?」


じりじり…とクリフェイドを壁に追い込むターナー。


「フンッ…よく言う。武器がなければ勝因すら危うい負け犬が偉そうに…」

追いつめられているこの状況の中でもクリフェイドの毒舌は健全だった‥。
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