室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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序章 英国フォルティア学院

師匠の扱いは難しい

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「会長は、貴方々の悪行を耳にしましてね… 
『学園に入って半年後、もし本当なら身内の醜聞を広めるわけにはいかない。その二人を探ってくれないか』と依頼してきたんですよ。自分が動けば二人の耳に入る、そしたら警戒されるからと…。お金も貰いましたし、断れませんし。

なにより、師のご友人の頼みだから断るに断れないし、あのジ…師匠は依頼金半分を持ち逃げするし」

    師匠?


「クリフェイド、師匠とは一体なんのことだ? というより、いつ知り合った?」

「え?そこの補導警官に強引に補導されそうになったとき… ですかね」

"そこ"を特に強調してアゼルをチラ見するクリフェイドにヒューは俄に眉を寄せた。

「なんかさぁ、言葉に刺があるよね。一応弁解させてもらうけど、俺は悪くないよ?深夜に出歩くガキが悪いんだから」

ヒューに睨まれたアゼルは弁解すると同時に"ガキ"を強調して言った。

「…で、自称、師匠と名乗る人+α+βが見事に撒いてくれたんですよ」

「いや、人の次のα+βが全く意味がわからないんだけど」

「………気にしないで下さい。僕も極力、あの人たちと関わりあいたくないので」

というクリフェイドは遠い目をして言った。

…唯一言葉が通じる師匠は、女の尻を追いかけ回す飲んだくれの糞ジジイに… 手癖の悪いサル。
一番まともと言える師範は会う度にやたらと跳び蹴りをかますカンガルー… このトリオが知る人ぞ知る三大師範だ。

しかも、関わりを持つ接点さえなかった僕は何故か成り行きで、この三人(匹)の弟子になってしまったわけだが…

全くもって不覚である。唯一尊敬しているカン=ガ=ルー 師範は自分で言うのもあれだが物凄く短気だ。カン=ガ=ルー師匠は三人(匹)の中で一番好きだが、なにかとすぐに人を踏み付ける悪い癖はやめてほしいと僕は切実に願うばかりだ。

で、今回の依頼は三大師範の中で唯一、人間である糞ジジイの友人である会長からの依頼だが、あの憎たらしい糞ジジイに弱みを握られてなきゃ誰がこんな依頼を受けるか!


「会長の伝言をお伝えします。

貴方々二人は会長の厳しい監視の下、咎人の塔にて幽閉します」


淡々と言い放つクリフェイド、その瞳は理事長親子に向けられる。


「咎人の塔だって!?」

アゼルが驚愕に顔を歪ませるのも無理はない。…咎人の塔、別名 罪人の塔と言われし天を仰ぐようにそびえ立つ古き巨大な塔は、千年も前から密かに存在する古の塔。
伝承などは殆ど残っておらず、ただ密かに囁かれる噂だけにその存在を知る者は数少ない。無論、王族であるアゼルも今まで伝説とばかりに思っていた塔の存在を初めて知ったくらいだ――‥。

「なんで君が…」

塔の存在を知っているんだ!? とばかりに、クリフェイドに目を向けるアゼル。その表情からアゼルの言いたいことを察したクリフェイドは踵を反し、扉に顔を向けたまま言った

「……僕は何も知りませんよ?僕はただ、言われたことをそのまま告げただけなんですから。まぁ偶然とはいえ、依頼を受ける前にそこの生徒会長に襲われかけたんです。その仕返しとでも思ってくれて構いませんよ」

クリフェイドは、やっと終わったとばかりに寮へ帰ろうと扉のほうへ足を進める。その刹那――‥

    ガシャァァァァァン!!!!


派手に割れたガラスの音…


ーーそして、部屋に広がるアルコール臭。

クリフェイドが扉に手をかけた途端、理事長は取り押さえる男の隙をついて デスクの隣に立つ棚に走り、その棚に立ち並ぶワインを掴むや、クリフェイドに向かって怒り任せに投げたのだった…。
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