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序章 英国フォルティア学院
どうやって抜け出そうか。。
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――‥
あれから数日と経ったが、やはり動きがないということは… 噂は単に噂に過ぎないということか――‥
クリフェイドは一息つくと首を横に振った
いや、そもそも僕には関係ないことだ。僕が気に留める必要はない。それよりも、今の状況を何とかしたい…
クリフェイドは切実に願った。
今の状況、それは…
今日はこの国の建国日。国を祝う祭り…要するに建国祭。よって、ここの大聖堂では建国日を祝い、それを感謝祭とも呼んだ。
感謝祭では国を挙げての祭り…
大聖堂ではその建国祭を祝い、神に感謝し聖歌隊たちの合唱を神に… 王に捧げるのがしきたりだ。そんなことをすっかり忘れていたクリフェイド、逃げだそうにも逃げ出せない状況だった。
何故かというと既に全員、裏方のステージに上がり出番を待っている状況、広い礼拝堂の中は一般人や貴族も含め、
二階の席には若き王とその他の王族に護衛の騎士たちがいるため、下手に行動を起こせば目立つに限るためだ――‥。
しかも、王の隣には父アクシオンやヒュー、ジルタニアスまでもがいた。
元々、人前に出ることをあまり好まないクリフェイド、ステージの上にいるということさえも非常に堪え難いことだった。
はぁー…
クリフェイドの口からは溜息が漏れる‥
聖歌隊は全員、純白の服に着替えた。無論、クリフェイドも…。皆、王族や貴族を前にして謳を唄うことに些か緊張気味だ。
だが、そこはやはりクリフェイド。逃げ出すことしか考えていなかった。
……よし!
「フェルディス牧師、すみません… 友人の形見を……落としたみたい…なんです」
無口で無表情で通ったクリフェイドは口数少なく牧師に落ち込み気味な声で嘘をつく。
チャールズ・フェルディス牧師、彼は最年長の牧師でここ、大聖堂の中で一番の権力を持つ長というべき存在だ。次期後継者のことでポール・ヒューマン牧師と何かと揉めていることは… もはや牧師たちの中では知り渡った話である。。
フェルディス牧師は聖歌隊の子たちに向けていた視線をクリフェイドに移し、壁に掛かった時計を確認した
「シュバルクのとこの坊やか。うむ…。 時間が惜しいが、友人の形見とならば仕方あるまい」
行って来なさい、と老いぼれた牧師は溜息と共にクリフェイドに告げる
「……ありがとうございます」
俯き、クリフェイドは小さな声で告げると裏の出口から抜け出した
「…………」
そんなクリフェイドを意味ありげに見つめるフェルディス牧師は小さく溜息つく
「あの子の秘密にヒューマンが気づかなければ良いが…」
ヒューマン牧師を目の端でちらりと捉えたフェルディス牧師は意味深な言葉を呟いた
「…あの子に神のご加護があらんことを」
「なんとか抜け出せたな…。しかし、父さんたちに後でなんて言い訳しようか‥」
合唱は聖歌隊全員で唄うため、クリフェイドが出ていないこともすぐにアクシオンたちは気付くだろう
クリフェイドはそこを心配していた。腕を組みながら、ブツブツ呟きながら適当な言い訳を考えるクリフェイド…
つい最近まで通っていた学園には父や兄の部下が密偵として報告していたのだ。クリフェイドに友人もなにも、そんな親しい人間がいないことは明白。よって、フェルディス牧師についた嘘はアクシオンやヒューには通じないのだ。
どうしたものか、と腕を組んだまま唸りつつ…
裏口から出たクリフェイドは聖堂の敷地内の芝生を歩く。
ふと、クリフェイドは足を止めた
「……………」
礼拝堂から漏れる聖歌隊の賛美歌、どうやらもう合唱は始まったようだ。だが、クリフェイドの足を止めさせたモノは聖歌隊による賛美歌ではなく――‥
「………ねこ?」
芝生に横たわる微動だにしない仔猫だった…。
何気なく、足を一端止めたクリフェイドは小さく息をついた
ふぅ…
様子がおかしい仔猫にクリフェイドは無視するわけにもいかず、仕方なしに仔猫の元へ足を運ばせる。
そこで初めて気づいた。仔猫が微動だにしない理由が…。
その小さき身体には鉤爪が食い込んだような痛々しい傷痕、まだ生えきっていないふわふわだったであろう毛には乾ききった赤黒い血がこびりついていた。
恐らく、この小さい仔猫は烏かなにかに捕まり、巣に持って帰ろうとした烏が巣へ運ぶ途中、何かの弾みで空中から落としてしまったのだろう…
「…………」
親から引き離された仔猫、まだ幼い仔猫の死ぬ直前まで感じていた恐怖を思うと、どうにもいたたまれない気持ちになる‥。
クリフェイドとて、なにも冷酷な性格ではない。優しき心も少なからずあれば、哀しむこともある。クリフェイドは既に息絶えている憐れな仔猫を壊れモノのように優しく抱き上げると口を開いた
それは――‥
仔猫の魂の冥福を祈り、風と共に紡がれる弔いの唄――‥。
あれから数日と経ったが、やはり動きがないということは… 噂は単に噂に過ぎないということか――‥
クリフェイドは一息つくと首を横に振った
いや、そもそも僕には関係ないことだ。僕が気に留める必要はない。それよりも、今の状況を何とかしたい…
クリフェイドは切実に願った。
今の状況、それは…
今日はこの国の建国日。国を祝う祭り…要するに建国祭。よって、ここの大聖堂では建国日を祝い、それを感謝祭とも呼んだ。
感謝祭では国を挙げての祭り…
大聖堂ではその建国祭を祝い、神に感謝し聖歌隊たちの合唱を神に… 王に捧げるのがしきたりだ。そんなことをすっかり忘れていたクリフェイド、逃げだそうにも逃げ出せない状況だった。
何故かというと既に全員、裏方のステージに上がり出番を待っている状況、広い礼拝堂の中は一般人や貴族も含め、
二階の席には若き王とその他の王族に護衛の騎士たちがいるため、下手に行動を起こせば目立つに限るためだ――‥。
しかも、王の隣には父アクシオンやヒュー、ジルタニアスまでもがいた。
元々、人前に出ることをあまり好まないクリフェイド、ステージの上にいるということさえも非常に堪え難いことだった。
はぁー…
クリフェイドの口からは溜息が漏れる‥
聖歌隊は全員、純白の服に着替えた。無論、クリフェイドも…。皆、王族や貴族を前にして謳を唄うことに些か緊張気味だ。
だが、そこはやはりクリフェイド。逃げ出すことしか考えていなかった。
……よし!
「フェルディス牧師、すみません… 友人の形見を……落としたみたい…なんです」
無口で無表情で通ったクリフェイドは口数少なく牧師に落ち込み気味な声で嘘をつく。
チャールズ・フェルディス牧師、彼は最年長の牧師でここ、大聖堂の中で一番の権力を持つ長というべき存在だ。次期後継者のことでポール・ヒューマン牧師と何かと揉めていることは… もはや牧師たちの中では知り渡った話である。。
フェルディス牧師は聖歌隊の子たちに向けていた視線をクリフェイドに移し、壁に掛かった時計を確認した
「シュバルクのとこの坊やか。うむ…。 時間が惜しいが、友人の形見とならば仕方あるまい」
行って来なさい、と老いぼれた牧師は溜息と共にクリフェイドに告げる
「……ありがとうございます」
俯き、クリフェイドは小さな声で告げると裏の出口から抜け出した
「…………」
そんなクリフェイドを意味ありげに見つめるフェルディス牧師は小さく溜息つく
「あの子の秘密にヒューマンが気づかなければ良いが…」
ヒューマン牧師を目の端でちらりと捉えたフェルディス牧師は意味深な言葉を呟いた
「…あの子に神のご加護があらんことを」
「なんとか抜け出せたな…。しかし、父さんたちに後でなんて言い訳しようか‥」
合唱は聖歌隊全員で唄うため、クリフェイドが出ていないこともすぐにアクシオンたちは気付くだろう
クリフェイドはそこを心配していた。腕を組みながら、ブツブツ呟きながら適当な言い訳を考えるクリフェイド…
つい最近まで通っていた学園には父や兄の部下が密偵として報告していたのだ。クリフェイドに友人もなにも、そんな親しい人間がいないことは明白。よって、フェルディス牧師についた嘘はアクシオンやヒューには通じないのだ。
どうしたものか、と腕を組んだまま唸りつつ…
裏口から出たクリフェイドは聖堂の敷地内の芝生を歩く。
ふと、クリフェイドは足を止めた
「……………」
礼拝堂から漏れる聖歌隊の賛美歌、どうやらもう合唱は始まったようだ。だが、クリフェイドの足を止めさせたモノは聖歌隊による賛美歌ではなく――‥
「………ねこ?」
芝生に横たわる微動だにしない仔猫だった…。
何気なく、足を一端止めたクリフェイドは小さく息をついた
ふぅ…
様子がおかしい仔猫にクリフェイドは無視するわけにもいかず、仕方なしに仔猫の元へ足を運ばせる。
そこで初めて気づいた。仔猫が微動だにしない理由が…。
その小さき身体には鉤爪が食い込んだような痛々しい傷痕、まだ生えきっていないふわふわだったであろう毛には乾ききった赤黒い血がこびりついていた。
恐らく、この小さい仔猫は烏かなにかに捕まり、巣に持って帰ろうとした烏が巣へ運ぶ途中、何かの弾みで空中から落としてしまったのだろう…
「…………」
親から引き離された仔猫、まだ幼い仔猫の死ぬ直前まで感じていた恐怖を思うと、どうにもいたたまれない気持ちになる‥。
クリフェイドとて、なにも冷酷な性格ではない。優しき心も少なからずあれば、哀しむこともある。クリフェイドは既に息絶えている憐れな仔猫を壊れモノのように優しく抱き上げると口を開いた
それは――‥
仔猫の魂の冥福を祈り、風と共に紡がれる弔いの唄――‥。
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