室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

序章 英国フォルティア学院

嵐の前触れ

暫くして部屋から出ていく昴を見送ると、クリフェイドはノートパソコンの電源を入れた

 もちろん調べるのは…

― - ｶﾀｶﾀｶﾀｯ… 


「『スクワット・ブランドン』」

ｶﾁｯ‥ｶﾁ…

　　　　　　　　ｶﾀｶﾀｶﾀｯ

「………かなりの悪人か。なになに… 自分の就いている地位を利用して…国の情報を横流し､かーー。


ＩＱは高いが小心者、そのため、めったに表に出てくることはなく、常に引きこもりがち…。やむを得ない場合や気分が乗ったときは表に出てくる、か…」

また、面倒くさそうな奴に目をつけられたな…

はぁー…とクリフェイドは最近の不運続きに口から盛大な溜息が零れた。

――――……

　ﾋﾟﾁｬｯ…

「ひぃーっっ!!!た、頼む！命だけは…っ そ、そうだ！金を払おう!!金を払うから俺を見逃してくれ」

ﾋﾟﾁｬｯ…


尻をつき、恐怖に青ざめ後ろへと逃げる男を阻むのは壁…

腰が抜かした男を見下ろすのは黒い服に、ついているフードを深く被った少年…

「ジズ・ペナント…

今日までの三度の警告を無視し、改善を行わなかった…
よって、執行裁判所の監視のもと、速やかに刑を執行します」

　ザンッ――…

男の首が宙を舞う


ﾋﾞﾁｬーｯ…

周囲に飛び散る血、

  ﾋﾟｯ

「…何？」

「終わったか？」


「今ね」

「そうか。次のターゲットは… この国の国家機密情報機関特殊組織の現室長、スクワット・ブランドンだ。

地位を利用して国の情報を横流ししている疑惑がある… 直ちに監視の下、調査するように」


ﾌﾟﾂｯと切れた携帯を見つめる少年は、小さく息をつく

「…本当に人使い荒いね、まったく。

違法な武器商人を匿い支持していた貴族の次は、国の室長か…」

床に散らばる血の水溜まりを踏み、黒いローブに身を包んだ少年はそこを後にした。


――‥

「…例の疑惑の件、彼に任せたのですか？クロス裁判官」

きっちりとした制服を着た憮然とした表情の金髪美形の青年は本を抱えたまま、椅子に深く腰をかける３０代くらいの男に声をかける


「んー？ なんだ、マコーネルか…。やっぱ心配か？」

クロス裁判官と声をかけられた男は椅子をくるりと動かし振り返る…

「当たり前です。よりによって、

No.2アンリに行かせるなんて… 」
　　　　

彼ほど、この・・仕事にあまり緊迫感のない人間はいませんよ、とマコーネルと言われた青年は顔をしかめる。


「いや、そう言われてもなぁ… お前も少し堅すぎじゃないか？」

「…貴方は緩すぎですけどね」


思いっきり皮肉を込めて言ったマコーネルにクロス裁判官は苦笑だ

「ま、面白いものが見れるかもしれんぞ？…何せ、今日のパーティーにはあの、シュバルク公爵家の末っ子が社交界デビューするらしい。

しかも、だ……

シュバルクはまだ表に出す気はなかったらしいが先日の感謝祭で、一騒動あったらしいぞ？

そのときに例の疑惑を持つ現室長がシュバルク公爵家の末っ子を見て気に入ったのか、やたらと社交界デビューを薦めたという話だ」

どうだ？面白そうなパーティーになりそうだろう？と立派なデスクに肘をついて顔の前で指を組む彼はマコーネルの冷めた視線に苦笑を浮かべながら言った。


――‥それが、クリフェイドとの最初の出会いになろうとは…

このときのマコーネルが知るはずがなかった…。