室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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序章 英国フォルティア学院

飲酒はだめですよ

――‥ 

ようやく満足したのか、今度は皿に乗せたデザートの山を上から順にフォークでつまんでいく。

と、ふとクリフェイドの目に止まったのは美味しそうな色をした液体が入ったグラス、


そう、それはカクテルだった。

甘いもの好きなクリフェイドの鼻に纏わり付くのはカクテルの甘い香り…

クリフェイドが興味津々にグラスへと手を伸ばす、その刹那――‥


― - ピイイイィィーーッッ!

けたたましい笛が会場に響いた。招待客はもちろんのこと、クリフェイドも突然のことにびっくりし、グラスへ伸びていた手が止まる。

どうやら、笛を鳴らしたのは父アクシオンのようだ。アクシオンはジルタニアスに教えられ、振り返ると、


なんと、クリフェイドがカクテルの入ったグラスに手を伸ばしているではないか!

酒癖の悪いクリフェイド、あの惨劇を三度も繰り返してはならん!と焦ったアクシオンは懐に入れていた笛を思いっきり吹いたのだ。


笛が会場に響くや、

ズザザザッ

…いきなりクリフェイドの前に現れたのは、黒い燕尾服のシュバルク家に仕える執事たち。

突然現れた彼らに、驚きいっぱいのクリフェイドは少々マヌケ顔。

「だめですよ坊ちゃん、貴方まだ未成年でしょう?」

執事たちに両脇を拘束され唖然とするクリフェイドにまた突然現れた昴は唇に人差し指を突き立てて、片目ウィンク。

「飲酒はだめですよ」


さりげなく、クリフェイドの前からグラスを遠ざける昴は苦笑を浮かべていた‥。

ーーーーーーーーーー…
ーーーーー…


「…ふぅ、危なかった!」

そう言って、額に浮く冷や汗を拭うアクシオンの焦燥には誰もが驚いていた。

――‥ が、先日巻き込まれた人間にはアクシオンの焦燥ぶりにも理解できてるようで、少し同情の視線を向けていたことは本人は知らない‥

「…あれがお前たちの愛する末っ子か」

王は目の前のカクテルを昴に下げられて少しガッカリしているクリフェイドに視線を向けながら訊く。


「えぇ、とても可愛いでしょう」

自慢げに話すアクシオンに王も頷いた

「…そうだな。可愛いと言われれば可愛いが、中性的な容姿なのだな」

アクシオンと王が談話していると、何やらクリフェイドのほうで、ざわめきが増した。

「ん?どうかしたのか」

幾分ざわめきが大きくなったため、王は眉毛をピクリと吊り上げて近くの者に問う

「あ… いえ、その…

恐縮ながら、あまり表に出て来ない国家機密情報機関特殊組織の現室長がお見えになってるそうで…

その室長様が会いに来た相手というのが――‥」

男が向ける視線の先にようやく気付いた。そこには非常に迷惑そうに顔をしかめるクリフェイドがいたのだ。
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