室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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序章 英国フォルティア学院

キナ臭い匂いと怪しい雲行き


「君がクリフェイド君かい?」

両手を上げ、おどけたような仕草をする男にクリフェイドの眉毛がピクリと吊り上がる


「……誰ですか貴方は?人に尋ねる前に、先にご自身の名前を名乗るのが礼儀かと思っていましたが」

あからさまに面倒だと顔をしかめて皮肉るクリフェイドに周りのざわめきが増した。

「それはそれは…

とんだ失礼を。では改めまして、私はスクワット・ブランドンという者です。なに、国家機関に就く官僚の一人に過ぎませんが」

めったに表に出てくることのないことで有名な室長がクリフェイドと、そんなやり取りを交わすことに周囲は驚きを隠せない

『なんだ、あの子供は!?』

『いったい、ブランドン室長とどういう仲なんだ?』


ざわめきが一層増していく周りにクリフェイドは不愉快げに些か眉間に皺を寄せる

「…そんなお偉いさんが一体、僕に何の用なんですか?父にまぁ、余計なことを吹き込むまでして僕をこのパーティーに出させるなんて……

何を企んでるんですかね」

ま、僕では貴方の考えてることなど図り知れませんが…

クリフェイドのその皮肉った意味深な言葉に、さすがにスクワットも顔色を変えた。

 「…何が言いたいのかね?君は…」

「……別に。今のは独り言ですので」

気になさらないで下さい…と、さも、つまらなさそうな表情でいうクリフェイドにスクワットは些か片眉毛を吊り上げた


「っ… まぁいい。私は君を勧誘したいのだよ?いやぁ、感謝祭での君の活躍を見た。多少、トラブルがあったようだが、

君のあの歌は最高だった!いやはや、どうだね?私の下に就く気はないかい?」

両手を上げて、わざとらしく身振りするそれは大袈裟にも見える‥


「…………」

その、あまりに大袈裟な彼の身振りにクリフェイドは暫し無言の後、そっと溜息つく

はぁ…

「誠に申し訳ありませんが僕はそういったことには興味がないので、そのお話はお断りします」


そのクリフェイドの言葉に誰もが吃驚した。一番驚いていたのは言うまでもないスクワット本人だ。待遇のいい官僚への勧誘を断り、

あろうことか、室長の誘いを断るなど恐れ多いこと…

普通は室長の面目が潰れることを気遣かうものだが、クリフェイドは気遣うどころか、即答で答えたのだ。

「な゙…っ!」

「それに――‥『      』」

国を敵に廻すなんて面倒はごめんですから…

そう、彼、 スクワットの母国語であるロシア語で話すクリフェイドにスクワットの目がカッと開かれた。


「―― ッ ! 馬鹿な…っ なぜ、お前ごとき子供がっ」

その荒々しい言葉に周囲は驚きを隠せない


「…今の言葉はどういう意味だ?スクワット…」

人だかりの間から優雅に前に出てきたのは威厳のある低いバリトンの声で問う、この国の若き王様‥。

「申し訳ございません陛下、子供の戯れ事についカッとなってしまい…」

前へと出てきた王に取り入るかのように急いで猫を被るスクワットにクリフェイドは異論することもなく、ただ小さく溜息を漏らし踵を反す。

――‥

「…まずいな」

それは上司の口から漏れた小さな呟き、

「何がです?クロス裁判官」

側にいるマコーネルはクロスに訝しげな視線を向けた


「彼だよ。たぶん、スクワットに目をつけられたんじゃないかな…? 勧誘した彼の面目も丸つぶれだし、あの意味深な発言も……」

手に持っていたグラスをテーブルに置き、腕を組んで顎に手を当てる

No.2アンリがいるでしょう?」

「……アレは恐ろしく方向音痴だぞ」

「そういえばそうでしたね… 彼」


ふぅーと疲れた表情で息をつくマコーネル、

「では、No.1キサラに彼を見張らせたらどうです?」

 ふと思いついた提案を言ってみるが、


「残念なことに彼は他の任務に出かけてるんだな、これが」

眉毛を下げて、困惑の表情を見せる上司にマコーネルは盛大に溜息、

「あはは‥

たぶん、大丈夫だろう。アンリはまぁ方向音痴を除けば優秀だからな」

「クリフェイド!何かあったのか!?」

騒ぎを聞き付け駆けてくるアクシオンに視線を移すクリフェイドは事もなげに言った

「何でもありませんよ父さん」

「そうか」

それならよかった、と安堵の溜息を漏らす父に後を追ってきたジルタニアスは呆れ顔、

「だから言ったのに…」

そう漏らすジルタニアスにアクシオンから視線を変えると、その後ろに二人の老人が冷ややかな目で自分を眺めるのに気が付いた


「…………」

無言で問うクリフェイドにアクシオンは、あぁ!と声を上げる

「こちらは私の父と母だ。父上、母上… 彼がクリフェイドです」

形式上、クリフェイドの祖父母となる老夫婦にアクシオンは紹介する。だが、その二人からクリフェイドに向けられる視線は酷く冷たいものだった‥。

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