室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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序章 英国フォルティア学院

誰が掃除すると思ってんの?

――――――……
――‥…

何故、こうなった……?

クリフェイドもといカリヤが今いるのは政務室、
今開かれているのは会議で王の隣の椅子に座っている状況だった‥


貴族や大臣に臣下、補佐官、他に様々な役職に就く人間が会議に出席していた。臣下たちが座るのは円状の大理石でできたテーブル席、王の席は一番奥の段差の上にあり、全員を見渡せるような部屋の造りになっていた。

そして王を挟むような席になっており、右が第二王子のアゼル、左が第三王子のアシスという席になっていた…。


王の右にはアゼルが座っていたのだが、左の席にはカリヤが座っていた。黒いローブを身に纏い、深くフードを被って‥‥。

なぜ、こうなったのかというと――‥


――…

『実はな、今から会議があるわけだが…

私の両端の席は弟たちが座ってたんだが、三男の私の弟がな… 原因不明の病で床に伏せていてな』

『……医者なら他当たれ』


『いや、ちがう。私が言いたいのは空席だと目立つ。それに、三男のアシスをあまりよく思わない奴らも多い。

悪いが、弟のフリをしてくれないか?』

……フリ?

あからさまに嫌な顔をするカリヤに王は憮然とした表情で言ってのけた。

『ただ、フードを被って席に座ってくれるだけでいい。別にバレたらバレたで友人として招いたとでも言えば良かろう』


――…

「……という報告です」


「次に、国家機密情報機関特殊組織の前室長の行方が今もまだ掴めておりません。一部、目撃者からの証言によりますとセイントポール大聖堂付近で牧師らしき人間と接触していたそうです…」

「室長の不祥事に組織内は乱れ、派閥に分かれ対立。その混乱に生じて情報がまた持ち出されないか懸念されています。早急に手を…」

退屈でしかたがないカリヤ、フードの奥から王に視線で訴えるが無視される。

…と、そのとき会議に参加していた父、アクシオンの隣に座っていた、古株の髭を生やした貴族の老人がカリヤのほうに視線を向けた


「…おや、おかしいですな?アシス殿下のご様子がいつもと違う気がしますが…」

そう意地悪い笑みを浮かべるのは恒例のこと…

「如何がされましたかな?」

「……いつもと違うのも仕方ないだろうな?何せ、座っている人間が元から違うのだからな」


「は!?」

王のまさかの衝撃発言に老人は声を上げ、


「え?」

何も聞かされていなかった次男のアゼルは兄である王に不満な表情を見せた

「ちょっと兄さん!俺、何も聞いてないんだけど?」


弟の責めるような口調に苦笑い

「アシスは体調を少し崩してな、代わりに私の友人を招いた。…異論は認めん」


王の発言に一斉にカリヤに視線が移るわけだが、本人はというと、本当に退屈でしかたがないのか、特に何か話すこともなく、腕を組み脚を交差に組んだまま、ドーン!と構えていた。

カリヤの態度は物凄く偉そうだった‥。おまけに黒いローブにフードを深く被っているため、素顔がわからず…

王の友人といっても怪しいところである。そのため――…


「恐れながら陛下、本当にご友人なのでございますか?」

「王のご友人と言えど、王に対し、礼儀を弁えるべきでは…」

「ご友人と言えど、王への態度があまりにも不躾なのでは」

そんな彼らの言葉に耳を傾ける王もといアクスは、アクシオンの声が聞こえないことに気づく

「シュバルク、珍しく元気がないな?」

と、同時にアクシオンに向けられる視線の数々


「あ…

申し訳ございません」


「……末っ子か?」

アクスの確信めいた問いにアクシオンは俯く

「はい…

実は昨夜、クリフェイドが屋敷を抜け出したようで… 昴の話によると、その… 友人宅に泊まりに行っているらしくて…


昴も場所を教えないので、心配で心配で……」

父の口から、まさかの自分の名前が出てきたことに驚いたが、表情には出さなかった。

……友人宅に泊まりか。やっぱ昴の、あのネチネチした説教は覚悟するべきか、


屋敷に帰るのが少なからず憂鬱に感じた--

「―― ッ!」


と、その刹那――…

――キィィン…


カリヤは動いた。袖から出した短剣で微かな殺気に気づいたカリヤは素早く王を庇い、刺客の剣を弾く。

そのときに被っていたフードが風圧で取れ、赤い短髪に黒縁眼鏡の顔が表になっていることに、刺客の攻撃を躱し、仕掛けるカリヤは気づかない

「ちっ」

刺客の男は舌打ちし、新たな攻撃を仕掛けようと構えるが、それよりも早くカリヤは刺客の懐に入り、アッパーを食らわした

「ぐはっ!ぅ゙…ッ」

怯む刺客にカリヤは片足を軸に、素早く体を回転させると、もう片方の足を刺客の急所へと叩き込む…

「ぐ…ぁ゙っ!…かはっ!!!」


床に崩れたところをカリヤは刺客の首筋に短剣をスーッと沿える。


その瞳が本気だということに気づいたアゼルはわざと茶化すように言った

「ちょっと…

後の掃除、誰がすると思ってんの?」



「もういい。お前が何も手を下さなくとも良い」

アクスは衛兵を呼び、刺客を部屋から連れ出させた。

「しかし、よく気付いたな?」


面白そうに口角を吊り上げるアクスに、

「出たよ、兄さんの悪い癖…」


アゼルは小さい声で小突いた。
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