室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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序章 英国フォルティア学院

『モーゼ』



「あ、はい!え、えと…っ 副会長様は手段を選ばない怖い人だって。ふ、副会長様が通るときにまるで海が二つに分かれるみたいに僕たち一般の生徒が両端に、

その中心を堂々と歩くのを見た先生たちは、副会長様のことを…『モーゼ』と呼んでるんですっ」


恐々とクリフェイドの顔を伺いながら、緊張からか途中言葉を詰まらせながらも一生懸命に話してくれる親衛隊の子に、クリフェイドはただ困惑した表情を浮かべた


モーゼ、ね・・・。

「怖いかどうかは別として、まぁ手段を選ばないのは事実だな」


腕を組む。


「しかし、それはあくまで…

相手に非がある場合のみだ。人身売買とかクスリとか… まぁ、他にもあるが、そういうことだ。別に取って喰おうなんて考えてないから、僕相手にそう緊張するな」


「え… え!?」

「大体、役員だからといって別に偉いというわけでもないんだ。様付けで呼ぶ必要なんてないんだぞ?」


「い、いやっあの…」

「そ、それは…」


「別にこれは強制じゃないから、そう困った顔するな」


きらりと眼鏡のレンズが光る。その奥の鋭く威厳に満ち溢れた瞳に彼らは 、ぽぅっと赤くなる‥

「あ、あのっ じ、じゃあ… シ、シュバルク様っ」


………やはり、そう簡単にはいかないか。

「ん?どうした?」

「ど、どうしていつもは敬語なんですかっ?!」


わたわたと赤い顔を手で隠す親衛隊に、クリフェイドは目を細める。

「ああ… 敬語のほうがいろいろと都合がいいんだ。」

「あ、あれ…

その紙は…」


隊員の一人が気づいた。

「ああ、生徒会の仕事だ」


「あ、あの…
なんで生徒会室でなさらないんですか?」


「マ…じゃなかった。藤野が五月蝿くてしかたないんだ。おまけに英理たちが藤野の尻を追っ掛け回して… 仕事を全くしてくれないんだ。

はぁー… おかげでこっちは…」


クリフェイドが視線を向ける先、そこには山と積まれた書類…

「あれは、先日取った全生徒の文化祭に向けての希望アンケートだ。」


「「「え゙!?」」」


「あれもまとめなきゃならない… 予算案の再度提出もまだ!校外学習の費用見積り書、他にもまだまだあるし…

はぁ、あっちの仕事もあるっていうのに…」


額に手を当て、はぁー…と吐息つくクリフェイドに隊員が提案した。

「あ、あのっ!
ぼ… 僕でよければ手伝わせてもらえませんか?」

「え?」


聞き間違いだろうか…?

「それっ いいと思う!!だって、このままじゃっ副会長が倒れちゃうよ!!」


真剣な顔で本当に心配そうに見る隊員に… クリフェイドは苦笑。


「だが、お前たちに迷惑は…」


せっかくの申し出を断ろうとしたクリフェイドだったが、


「ち、ちがいますよ … シ、シュバルク様…っ

僕たち、迷惑じゃないです!!それにこういうときは『ありがとう』って言うんですよ」


プイッと真っ赤な顔を背ける彼にクリフェイドは、ふわりと笑う


「クスッ そうだな…

         ありがとう」

――‥ この日の出来事をきっかけにクリフェイドの親衛隊が増えたことは言うまでもない。
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