室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

序章 英国フォルティア学院

僕はそれを望まない

「……ばぁーか。」


シリアスな雰囲気から一転して、クリフェイドは顎を掴む昴の手を叩き、呆れた顔…



「はぁぁー…

確かに、昴に頼ればすぐに解決するかもしれない。だが、僕は基本--」


『人に頼らない…』



ぼそりと昴が呟く


「そうだ。

昴に頼ったらすぐに問題は解決するだろう。だが、僕はそれを望まない。……特に自分自身のこととなると、僕自身で解決したいんだ。

そんなことに一々頼ると、自分じゃ何もできなくなりそうだから…」


 ｶﾞﾗﾗﾗﾗ…

窓を開けると、カーテンが風で靡く


「悪いな、昴――。」



窓に足をかけ、くるりと振り替える‥


「だから、お前の申し出に甘えるわけにはいかない」



「けど、僕をそこまで想ってくれる昴は…

――‥ 好きだよ」


月の光にクリフェイドの髪が反射する――。


月を見上げ、クリフェイドは眩しげに目を細めた



「……暫くは帰らない」


「何処へ?」



「そうだな…

ま、ちょっとした家出かな？アシスの所に行ってくるよ」



……仕事も残ってるし、口実としてはちょうどいい。


「……わかりました。貴方がそこまでおっしゃるなら…



今は・・、もう何も言いませんよ」


………気のせいか？今、ものすごく”今は”を強調された気がするが･･･


「どうか､お気をつけて」


腰を折って上品な笑みで見送る昴に、片手を振って飛び降りた――‥。