室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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第1章 月森ヶ丘自由学園

こんなもの、まだ序章にすぎませんよ


「な、なんや、えらい恐ろしい声が聞こえんねんけど…;」

学園から抜け出した幸村は学園長の罵り叫ぶ声に思わず身がすくむ


「なにを言っているんですか。こんなもの、まだ序章にすぎませんよ」

呆気らかんと無情に言い放つ岬、葵と幸村はそんな岬から放たれた言葉に少なからず不安を覚えたのだった…

(なんかなぁ、ものすごく不安を感じるんだけどυ)

(…こうして、非日常がごく当然の日常になってしまうんや… )


そんな二人の心境を知るはずもない岬は、淡々と言い放つ

「…まずは、南京町に向かいます。木葉を隠すなら森の中。ならば、人を隠すのなら街の中。南京町で知り合いと待ち合わせしていますので…

それに、中国人の知り合いが持つテリトリーでもありますので、ただ街中で待ち合わせするよりも、そちらの方が見つかりにくいでしょう」


このとき、葵と幸村は見た。一瞬だったが、眼鏡をくいっと押し上げる岬が中国人と言ったとき僅かに顔を歪めたのを――‥

(……え!? どういう関係なんやろ?? なんや、恐いねんけど……… めっちゃ気になるっ!!!)

(岬にここまで表情を変えさせるとは……凄いっ!)


なにげにひどい二人だった…。

岬達のいる学園は神戸市内の学園であり、南京町には車で1、2時間の距離、歩きだとそれ以上に時間がかかることになる‥‥。

学園から出て最初こそは岬の後を無言でついて行った葵と幸村。だが、そんな二人にとうとう体力の限界がきた

「「…ゼェッ…―ハァ……ゼェッ…」」

「…………」


「も…もぅ、ムリや!」

「…ゼェッ…な、なんで岬は平‥‥気なんだ!? 俺達だっ…て並よりは体力があ…る、のに…」


懸命に息つぎし、尚話す葵に岬は呆れた顔で諭す

「当たり前ですよ。 そもそも僕と貴方達とでは住む世界が違うのですから」

「!?…住む世界が違うって、どういうことやねん!!」


「別に。大して深い意味はありませんが……… そうですね。あえて言えば環境が違うんですよ。 それはもう、家から抜け出したいほどに。

僕専属の執事がまた有能で、抜け出しても抜け出しても僕を捕まえるんですよ…」


(ん? ちょっとまてや。これって、ひょっとするとプライベートの話なんとちゃう?!)

(あれ??そんな執事がいながら、岬がここにいるってことは‥)

「本当にあんなにも鬱陶しい過保護な家族はごめんですよ。ま、限界に来た僕は、専属執事が毎日煎れて飲むコーヒーのポットに睡眠薬を盛って、眠りについている間に屋敷を抜け出したんですよ」


事もなげに淡々と言い放つ岬に二人は思う

((こわっ!!!))


「………あぁですが、彼怒っているでしょうね。薬を盛られただけでなく、眠っている間に、ロープでぐるぐる巻きにして庭に放り投げたまま放置してしまいましたし……」

困ったようにしかめる岬、


(………普通に考えて怒るだろ!!)

心の中で、一人突っ込む葵…


(それって…… 人として、どうなんやろうか)

顔をしかめる幸村に岬は見据えて言った


「さて、休憩は終わりです。なるべく日が暮れないうちに目的地へ向かいますよ」

時間は待ってくれませんから…


太陽が傾きかける空を見て岬は、足を早めた――…。
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