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第1章 月森ヶ丘自由学園
いつだって、自分に忠実!
しおりを挟む…そんな二人に葵だけでなく、崙とその部下が顔を引き攣らせる。葵と同じで、崙もまた岬の運転する車には乗ったことがない
だが、
二人のあまりの剣幕に、若干、岬の運転には興味があったが、まだ死にたくない崙は遠回しに断った。
「ボス、悪いネ!このジェット機はまだ使いたいヨ。それに、操縦は彼がやってくれるから、心配いらないネ」
(そんな、自分の身を危険に晒すような自殺行為を誰がやるネ! 私、まだ死にたくないヨ)
崙にまで言われた岬は機嫌を損ねるも話を変える。
「で、何処で降りるんだ?」
「敵のアジトには少し遠いですが、なにぶん、その敷地が広いので‥ その、少し離れた所に雑木林がありますので、そちらなら見付かる心配はないかと…。そちらに着地しますので、後は徒歩になります」
崙の部下が淡々と告げる
「そうか…。それじゃ、作戦を言う。まず、涙が捕まったらしい」
「な゙!? 涙が?!!」
「いいから聞け。涙は今のところ無事だ。奴の屋敷は二階立て。…恐らく、涙は二階の離れに閉じ込められている。葵と幸村は二人で捕まっている涙を救出、無駄な殺生はするな… 騒ぎになると敵に聞き付けられるからな。
二人は涙を救出し逃げることだけに専念しろ。敵と鉢合わせした時などやむを得ない場合は別だが。
そして、
僕とシフォンは地下に捕まっている……… 不服だが、知り合いを助けに行かなければならない。でないと、あの馬鹿が殺されたら今までの苦労が全て水の泡だからな…。」
((……馬鹿??))
葵と幸村は二人して首を捻るが、そんな二人の反応に気付かない岬は、さらに話しを進めた。
「…巻き込んでしまったとは言え、これ以上一般人であるお前達を危険に晒すわけにはいかないからな。涙を救出したら、即逃げろ。僕とシフォンは馬鹿を助けてから、奴にケリをつける…」
「な…っ 委員長っ わいも一緒に…「だめだ。」
自分も手伝う!と言い張る幸村に、岬は眼鏡のブリッジを指先で軽く押し上げると、幸村を鋭く見据える…
「断る。…第一、そもそも、この件は僕とシフォンの後始末がきちんと出来ていなかったことに要因がある。
巻き込んでしまったとは言え、これは僕とシフォンの問題でもあるんだ。理解したのなら、必要以上に、こっちの内情に関わるな。
…でなければ、死ぬぞ。人間の闇に関われば関わるほど、いつしか自分も闇に染まり、抜け出せなくなる。学園長がいい例だ。あぁなりたくなければ闇に関わらないことだな。スクワットの奴は… 人間の醜い闇そのもの。…甘い蜜で欲深い奴らを誘惑し、手の内で転がす
そして、
欲という誘惑に負けた連中は奴の手駒。奴に逆らわない忠実な駒、学園長みたく、なりたくなければ僕の言うことを聞くんだな」
椅子に腰をかけて踏ん反り返る岬、
「…つまりですね、隊長は貴方々が心配なんですよ」
シフォンは小さく溜息しつつ、岬のキツイ言葉に落ち込む葵と幸村を慰めるように言う、が‥‥
「…シフォン、冗談は寝て言え。はっきり言わせてもらうが、迷惑なんだ。お前達がいて何になる?ただの足手まといだ」
鋭く威圧されるような強い瞳で恐縮する二人を見据える岬にシフォンは諌めた
「ッ!隊長っ今のは、さすがに言い過ぎです!」
「…だったら、お前も降りろ、シフォン。その甘い考えが命取りになる。特にスクワットのような奴が相手の場合はな…」
「隊長っ!あんた、本気で言ってるんですか!?」
岬の言葉に驚きを隠せないシフォンは、さらに声を張り上げた。
「…冗談でこんなことを言うわけがないだろう」
シフォンを冷ややかな目で眺める
「………」
(…あいやぁ!なんか、雲行きが怪しくなってネ!私、イヤ、ヨー…この空気、苦手ネ)
岬とシフォンの様子を伺っていた崙は、参ったネ!とお手上げ。
「………」
だが、崙もシフォンも幸村も葵も忘れていた‥。岬という人間は、自分の為に動く人間だということを――‥
「………」
(フゥ、まったく面倒くさい。何故、僕がこんな回りくどいやり方をしなきゃいけないんだ!)
そう、岬の言っていることは…
(スクワットが危険人物だって?笑わせる!奴はただ、卑劣でねちっこい男なだけだ。それだけに執念深く、しつこい。まったく、自分で言っておきながら言うのもあれだが、僕が今、言ったことは、半分嘘で半分本当だというのに…
何故、シフォンは気付かないんだ? 怒りで冷静さを失っているのはわかるが‥‥僕がどういう人間か一番知っているだろうに。まぁ、お陰で僕は動きやすいが)
そう… 全て、演技だ。
(スクワットを始末したら、僕はズラかるつもりだがシフォンがいれば、それも敵わないからな‥。僕が行方をくらます、なんて… あのシフォンが許すわけがないだろうし、な‥。
許せ、シフォン。僕は自分に忠実に生きていくんだ)
…そんな岬の、密かな計画を知りもしないシフォン達は、重い沈黙に耐え兼ねていた。何も知らない幸村達、特に岬の演技に、まんまと黙されているシフォンは… 気の毒だ。
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