和泉くんの受難

文字の大きさ
1 / 7
- 出逢い -

別に飴玉に釣られたわけじゃない

しおりを挟む
――‥ そこは古い古い洞窟


ただ静かに佇むそれは人に忘れ去られた古い古い祠。

暗黒の神、蛇神-じゃのめ-を封印したと云われており、かつては邪の神として祭られていた。どんな願いを叶えることが出来るも、その代償は大きく、贄となる多くの人間の血を欲した。

時は過ぎ、時代が経つと共にその信仰は途絶えたものの、

山と海の狭間にある集落には『古い祠』と、祭られている『蛇神-じゃのめ-』そして、払うべき『大きな代償』は伝承として今もなお伝えられていた。


――――――――――‥
――‥ 

シャン!

                          シャンシャンッ!!

儀式の鈴の音と…

般若のお面を被った大人が5人…


そして、

洞窟の岩壁に両手両足を鎖で繋がれ、涙で濡れた目を覆う白い布…


『な、んで…?助けて…っおと、ぅさんッ!助けて…ッ お、かあっさんッ!ふ、ぅッ… ひっく、』

どうして助けてくれないの? と泣きじゃくるまだ幼い少年…


だけど、

本当は理解していた。


自分は邪(蛇)神-じゃのめ- の器になるべく生け贄に選ばれたことを――‥ 。じゃのめ の器として、より相応しくする為に生まれてまだ一度も汚れのないその純粋無垢なる身体を穢し、そして、穢した後は儀式のナイフで心臓を一突きに、抉り出す心臓は邪(蛇)神-じゃのめ- の祠に捧げられることを。助けを求めても誰も助けてくれないことを…。

村の男5人に犯され、感じたくもない快楽に何度も何度も悲痛な声で喘ぐ


だけど、

当然、誰も助けてくれない。誰も助けに来てくれない…


だって、



いらない子供だから。

母は言った。新しい父との間に子供が出来たと。前の父との子であるお前は要らないと。


新しい父は言った。

可愛げがない子供だと。俺が躾けてやろうと。鞭で叩かれ、それでも泣き声一つ上げなかったことに腹を立てた新しい父はさらに言った。


泣き声一つ上げればまるで女子のようなのにと。そして、服に手をかけられた瞬間、突然入って来た母は眉をひそめると、唇を吊り上げた。

『村長がね、邪神- じゃのめ様の儀式の生け贄を探していらっしゃるそうよ?お前、お行き』


「え…?」

母の言葉に涙が頬を伝っていく。

その伝承を知る里の者ならば生け贄に選ばれた者がどうなるのか誰でも知っていた。顔を青くする俺に父もにやりと笑った。


『あぁ、それには名案だ。里の為だ。…それに、うちにはもう息子がいる。二人もいらない』

与えられる快楽に悲痛な声をあげる少年は生まれて来たことを呪った。なぜ、自分がこんな目に合わなければならないのか。ただ家族としての温もりを求めただけの何が悪いのか、と――‥ 。


5日間もの間、

少年は休まることも赦されず、5人の大人に交代に輪姦され続けた。けれど、その屈辱と生き地獄に終止符打たれたのは突然で…


―― ザクッ!

『かはっ、』


コポリ、と血を吐く。けれども、鎖で繋がれた手は虚しくガチャガチャと音を鳴らす。

苦しくて苦しくて…


消えかかる生命いのちの灯火。

死の瀬戸際、


苦しみもがいたことによりズレた白い目隠しの布…
そこから垣間見えたのは自分を穢し、手にかけた――‥ 新しい父だった。

そのショックに涙がつぅーと伝っていく


初めて人間ヒトが憎い、と思った…。
全てが。生きとし生ける者たちが。

許せなかった。


なぜ、自分だけがこんな目にも合わなければいけないのか…。

自分はなぜ生まれて来たのか――‥ 。


黒くドロドロとした感情で満たされていく。あぁそうか…。俺が生まれて来た存在意義は――。

気付くと、そこは血の海で、義父を含め村の男5人は無惨に死んでいた。血塗れの少年は仄暗い目で横たわる彼らが被る、血が滴った般若の鬼のお面を拾うと、その血濡れた般若のお面を顔に被った。


古い祠に手を伸ばし、そして赤く染まった短刀を突き刺した。

短刀を突き刺した古い祠、そこから黒い靄がじわりと溢れ出す


『――‥ なかなか面白い余興だったよ』


憎しみに満ちた目を向ける。その日は赤い満月の夜だった。


―――――――――‥
――‥ 

『――…くん、和泉いずみくん』

ゆさゆさと揺すられて寝惚け眼の目を向けると、和服を着た翁お面の男が俺の頭を撫でていた


「お、き… な……?」

まだ眠い目を擦りながら体をゆっくり起こすと、目の前の男と周囲を見渡して首を傾げた


「翁…?それに… ここ、何処?」

『此処は、物の怪… 我々、妖たちが住む世界。
キミも… 何度か来たことはあるでしょう?』


妙に確信めいたその言葉に記憶の断片を手繰り寄せる‥ 

それでも、これといったインパクトがなかったのか中々思い出せない

『キミのそれにも困ったものですねぇ…。
"次元渡り"キミが中でも得意とするものですよ』


次元渡り、その言葉に『あぁ、』と俺は思い出した。確かに何度か来たことがある。

堕ち神だとか邪神とか云われていた蛇の神-じゃのめの器として一度は命も尽きたこの身体。だけど、憎しみに駆られた魂は堕ち、器ではなくなった。けれど、人工的に故意に作られしこの魂と身体は生き神の器ではなくなり、もはや神と堕ち神の狭間の異質なる存在となった。


あれから、気が向くままに幾人もの人間を殺し、この虚ろな心を埋めるかのように多くの血を捧げた。


――‥ もうあれから何年、何十年と経ったんだろう。永遠とも思える生き地獄に殺めることに、何も感じなくなり、ただ淡々と人間を殺めることで自分の存在意義を見出だしていた。

長い長い年月を、気が遠くなるような月日をただ独りで彷徨い続けた俺は何がきっかけでこんなにも人間を憎むのか、その理由さえも遠い昔の記憶は朧げで曖昧なもので正直興味もなかったし、思い出そうともしなかった。
ただ、自分という存在意義を見出だすだけで満足し、周りのことにも特に関心を持つこともなかった。


そんな俺の日常を変えたのが… 目の前にいるこの男だった。好き勝手に次元を渡り歩いていたときに、運悪く?この男に見つかった。


『………』

初めて会ったときは向こうも無言で、俺は俺で翁のお面を付けた和服の男を見て顔をしかめていた。
    妖?幽霊?…それとも神??パッと見て瞬時に相手が何者かわかるのに、翁だけはわからなかった。

得体知れない者には近付きたくないというのが本音だった俺はすぐ様、回れ右して次元を渡って引き返そうとした俺を引き留めたのは…


ぐぅー…

俺の空腹の鳴る音で。


『こっちへおいで…』

だから別に… あの男の、翁の… 手のひらにあった飴玉に決して釣られたわけじゃない!

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

学園ものに転生した悪役の男について

ひいきにみゐる
BL
タイトルの通りにございます。文才を褒められたことはないので、そういうつもりで見ていただけたらなと思います。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。 生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!? 聞いてた話と何か違うんですけど! ※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。 他のサイトにも投稿しています。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は未定 ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い ・本格的に嫌われ始めるのは2章から

処理中です...