52 / 117
- 陰の王国と廻りだす歯車 -
『不器用な優しさと - 杞憂 - 』
しおりを挟む
「チッ、まったく忌々しい奴らめ…」
最後に僕を睨みつけると叔父上はサッと踵を返し部屋を出て行きました。
ドキドキと、五月蝿く鳴る心臓に… その鼓動を押さえるようにギュッと胸元を握る。叔父上の『忌々しい青二才』『おとぎ話』『精霊』そして、『支配』という言葉が頭にこだまする。
それらは全て謀反と取られてもおかしくない発言で、そればかりかあの発言だけで寧ろ、国家反逆罪に問われ処刑されてもおかしくない。……あの乙女ゲームのオーディットと同じ道を辿るように───。
トックン、トックン… と激しく動く鼓動に恐怖にギュッと目を瞑って、動けないでいると、
ぽふっ!
ふと、頭に重みを感じた。
「……え?」
目を開けるそこには、先ほどとは打って変わって困ったように溜め息を吐いたジークがあまりこういうことに慣れていないのか、ぎごちなく、けれども僕をあやすように不器用に僕の頭に手を伸ばしていていました。
「…気にするな。アレは昔からそうだ。ジキルドに敵意を向けるのも、別に今に始まったことじゃない。まあ、だからと言ってこのまま好き放題させておくつもりもないがな」
ぽんっ!
「しかし、悪かった。まさかあの男がお前に接触してこようとは思わなくてな… 怖がらせた。今度から何か言われて来ようものなら俺の名前を呼べ。いつでも駆けつけるから」
「え」
どうしましょう…!?な、なんだかおかしいです!!こんな展開… ゲームにはなかったような気がします。やはり、此処はバクの言うように実在する…
「プッ…」
「へっ!?わ、わわッ!??」
クシャクシャと今度は髪をクシャクシャにされて思わず待ったをかける。んもうっ!優しくなったと思えば急に何なんですかっ!
少し離れて非難の目を向ければ、ジークの肩が揺れている… 酷いです!!
「クツクツ…!いや、悪い。お前が難しそうな表情で百面相するものだから」
そう、むくれるなと今だにクツクツと声を抑えて笑うジークに僕が半眼の目で見るのは当然のことだと思います。
しかし、何故でしょうか。
先ほどまであった不安は無くなっていて… これもジークのお陰かと思うとなんだか複雑な気がします。
コツン!
「った!」
額に走った突然の痛みに手で撫でてると、腕を組んだジークが口角を上げていました。
「…また百面相したらデコピンな?」
「!」
え、今のジークの仕業なんですか!?地味に痛いんですが、っていうか… なぜデコピン?
じんわり痛みが来る額を撫でながら恨みがまし気にジークに生理的に浮かんだ涙目で睨むと、またクシャクシャと少し雑に頭を撫でられました…。
「あまり、一人で抱え込むな」
それは誰に言ったのか、僕に言っているように見えたけれども、それはまるでジーク自身にも言っているようにも感じた。
「もう、同じ過ちは───。」
「・・・え?」
少し垣間見えたジークの瞳には悲しみ一色で。それは誰に向けられたものなのか、まるで僕を通して誰かに言っているように… そう感じなくもありませんでした。
「ジーク…?」
「いや… なにもない」
そう無理やり話を終わらせるジークに、首を傾げつつも、あまり触れてはいけない気がして話を変えることにしました。
「ジーク、さっき名前を呼べばすぐに駆けつけると言いましたが、さすがにそれは無理なのでは?でも、その気持ちは…」
「いや、駆けつけられる。名前さえ呼んでくれれば… 寧ろ、そのほうが早く駆けつけられるから俺としてはそのほうが有り難い」
てっきり、気休めに言ってくれた言葉なのだとそう思っていたのに、本人の真顔に思わずキョトンと目を瞬く。召喚し契約した精霊は名前を呼ばれると召喚者の元に何処にでも馳せ参じる。元々あったゲームのオーディットの知識から知った。名前さえ呼べばすぐに駆けつける、それはまるで精霊のようで…
「どうした?」
驚きに目を見開いたからか、ジークを見て微動だにしなくなった僕に怪訝な目を向けるジークに僕はハッとして、慌てて取り繕うように何でもないと首を横に振る。
一瞬、ジークが目を細めたような気がして身を竦めるとジークは困ったように右手で髪を軽く掻き上げた。
最後に僕を睨みつけると叔父上はサッと踵を返し部屋を出て行きました。
ドキドキと、五月蝿く鳴る心臓に… その鼓動を押さえるようにギュッと胸元を握る。叔父上の『忌々しい青二才』『おとぎ話』『精霊』そして、『支配』という言葉が頭にこだまする。
それらは全て謀反と取られてもおかしくない発言で、そればかりかあの発言だけで寧ろ、国家反逆罪に問われ処刑されてもおかしくない。……あの乙女ゲームのオーディットと同じ道を辿るように───。
トックン、トックン… と激しく動く鼓動に恐怖にギュッと目を瞑って、動けないでいると、
ぽふっ!
ふと、頭に重みを感じた。
「……え?」
目を開けるそこには、先ほどとは打って変わって困ったように溜め息を吐いたジークがあまりこういうことに慣れていないのか、ぎごちなく、けれども僕をあやすように不器用に僕の頭に手を伸ばしていていました。
「…気にするな。アレは昔からそうだ。ジキルドに敵意を向けるのも、別に今に始まったことじゃない。まあ、だからと言ってこのまま好き放題させておくつもりもないがな」
ぽんっ!
「しかし、悪かった。まさかあの男がお前に接触してこようとは思わなくてな… 怖がらせた。今度から何か言われて来ようものなら俺の名前を呼べ。いつでも駆けつけるから」
「え」
どうしましょう…!?な、なんだかおかしいです!!こんな展開… ゲームにはなかったような気がします。やはり、此処はバクの言うように実在する…
「プッ…」
「へっ!?わ、わわッ!??」
クシャクシャと今度は髪をクシャクシャにされて思わず待ったをかける。んもうっ!優しくなったと思えば急に何なんですかっ!
少し離れて非難の目を向ければ、ジークの肩が揺れている… 酷いです!!
「クツクツ…!いや、悪い。お前が難しそうな表情で百面相するものだから」
そう、むくれるなと今だにクツクツと声を抑えて笑うジークに僕が半眼の目で見るのは当然のことだと思います。
しかし、何故でしょうか。
先ほどまであった不安は無くなっていて… これもジークのお陰かと思うとなんだか複雑な気がします。
コツン!
「った!」
額に走った突然の痛みに手で撫でてると、腕を組んだジークが口角を上げていました。
「…また百面相したらデコピンな?」
「!」
え、今のジークの仕業なんですか!?地味に痛いんですが、っていうか… なぜデコピン?
じんわり痛みが来る額を撫でながら恨みがまし気にジークに生理的に浮かんだ涙目で睨むと、またクシャクシャと少し雑に頭を撫でられました…。
「あまり、一人で抱え込むな」
それは誰に言ったのか、僕に言っているように見えたけれども、それはまるでジーク自身にも言っているようにも感じた。
「もう、同じ過ちは───。」
「・・・え?」
少し垣間見えたジークの瞳には悲しみ一色で。それは誰に向けられたものなのか、まるで僕を通して誰かに言っているように… そう感じなくもありませんでした。
「ジーク…?」
「いや… なにもない」
そう無理やり話を終わらせるジークに、首を傾げつつも、あまり触れてはいけない気がして話を変えることにしました。
「ジーク、さっき名前を呼べばすぐに駆けつけると言いましたが、さすがにそれは無理なのでは?でも、その気持ちは…」
「いや、駆けつけられる。名前さえ呼んでくれれば… 寧ろ、そのほうが早く駆けつけられるから俺としてはそのほうが有り難い」
てっきり、気休めに言ってくれた言葉なのだとそう思っていたのに、本人の真顔に思わずキョトンと目を瞬く。召喚し契約した精霊は名前を呼ばれると召喚者の元に何処にでも馳せ参じる。元々あったゲームのオーディットの知識から知った。名前さえ呼べばすぐに駆けつける、それはまるで精霊のようで…
「どうした?」
驚きに目を見開いたからか、ジークを見て微動だにしなくなった僕に怪訝な目を向けるジークに僕はハッとして、慌てて取り繕うように何でもないと首を横に振る。
一瞬、ジークが目を細めたような気がして身を竦めるとジークは困ったように右手で髪を軽く掻き上げた。
16
あなたにおすすめの小説
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る
竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。
子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。
ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。
神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。
公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。
それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。
だが、王子は知らない。
アレンにも王位継承権があることを。
従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!?
*誤字報告ありがとうございます!
*カエサル=プレート 修正しました。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる