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- 運命の分岐点と守りたいもの -
『加護の返上と - 皇国の滅亡 - 』
しおりを挟む『フフッ、ご名答…』
『そうよ。彼らは神に近い金の髪を持って生まれてくることを誇りとした。他国の民が光の民と呼ぶようになったことも、まるで自分たちが神に選ばれた特別な民であるとばかりに、選民思想がやがてファルス皇国の民に根付いていった。
そしてそれはついに神を蔑ろにする傲慢さまでに至った。
彼らは全ては自分たちが為に存在していると思うようになっていた。自分たちの国だけでは飽き足らず、他国にまでその領土を広げようとしていた。武力行使で神の加護を盾にし、自分たちの都合の良いように解釈した彼らは他国に自分たちの身勝手な理由で神の名を良いように使い、戦を始めようとした。
───けれど、神を蔑ろにする行為とその傲慢さ、あまりにもの身勝手な理由に、唯一まともだった皇太子がそれを止めようとした。でも、たった一人の力では戦を止めることが出来ない。ならば、と彼は祭壇に赴き、ファルスの民の懺悔と謝罪を。そして、時の神の加護の取り消しを、加護の返上を… 祈った。
…そして、
時の神クロノスはそれを聞き入れた』
「………」
『街は国は… 大パニックだった。次から次へと親が友人が兄弟が隣近所のおじさんおばさんが… 皆、ゆっくり流れていた時間が急激なスピードで流れていく。何がどうなっているのかもわからず、パニックになっているうちに、身体から次から次へと金の分子が空を舞っていく。そうして、一人また一人と消えていった』
でも、例外がいた、そう告げたメラフィルはまっすぐにバクを見据える…
『ただ一人、例外がいた。それがあの子よ』
「! ルティが…」
『そう、魔素を持って生まれたばかりに黒髪のあの子は忌避され、されど殺してしまっては万が一外にその件が漏れたとき、それに対する醜聞が近隣国に漏れることを何よりも恐れていた。なぜなら、彼らが選民思想だったから。
そんな腐ったファルス皇国の… 皇族の中で唯一、あの子を対等に接し、優しくしていた人物が皇太子だった。彼は年の離れた不遇な弟を、城内の人目を忍んでよく会いに行っていたわ。魔素を持って生まれたあの子を忌避することもなく、いつもあの子に微笑んでいた唯一の味方だった』
『彼だけは… 選民思想を持っていなかった。そして、他国に公務で出た際に魔素についても調べていた。魔素を、魔力を多く持っているほど、特に食事を必要としなかった。なぜなら、魔素は大気中にありふれた物質であって、魔力持ちはその大気に含まれる魔素を無意識のうちに食事の代用に取り入れることがある。そんなことも、彼はあの子のために… 少しでも、自分と同じところを見つけて父親である皇帝に報告しようとした。でも、皇帝はそれを聞き入れず決して耳を傾けなかった』
でも、彼はそれが許せなかったのね、そう呟きを漏らしたメラフィルにバクの目が大きく見開いた。
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