断罪フラグを回避したらヒロインの攻略対象者である自分の兄に監禁されました。

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- 運命の分岐点と守りたいもの -

『呪われた世界の真実と - 廻りだす歯車 - 』

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『直接的ではないとは言え、結果的に殺したことに変わりはないわ。その時の神に間接的に殺した皇太子の体を奪えって言ってるようなものだもの… 時の神にとっても、あの子にとっても、残酷な仕打ちよねぇ。まあ、最高神の怒りにしたらそれも仕方がないのかもしれないけれど』


『そして、時の神だったときの記憶を消した上であの子の側で見守れるようにと、取り計らったの。それが味方であろうと敵であろうと… 時の神が犯した過ちを全て、無かったことにした上で愛するあの子の側に、たとえどんな形でもいられるようにと───。

それが、最高神が時の神への最初で最期の慈悲よ』



『そして、いくら人間が嫌いだとは言え、本来の運命を変えられたあの子に慈悲を与えないわけにもいかなかった最高神は…

新しい箱庭を作った上で、時の神と同様にその記憶を消した今、あの子はファルス皇国のことを全て覚えていない。時の神だったら… 神の力の名残り故にまだ思い出す可能性はあるけれど───。


この世界は… 一つの箱庭に過ぎないのよ。あの子の前の世界も…。その前の世界も。神々によって作られた箱庭の世界がたくさんあるの。その一つに、あの子と彼の体と融合した時の神クロノスを転生させた。同じ道を歩まないように、陰の血を引く者と陽の血を引く者を用意した上で土台を作り、発展させたその世界に後にあの子を転生させるつもりだった。

……けれど、

運命はそう簡単には変えられないのね』


「え、どういうこと!?だって、その二人は…」


『一時的にあの子の前の世界にあの子を移したとは言え、一時的なものだもの。まさか、トラックにはねられて、こっちに来るなんて… 私だって、最高神だって思ってもいなかったことなの。そう、考えれば本当にあの子はイレギュラーよね…。

まぁ、土台とレールを整えても歩み選ぶのは彼ら。そこまでは面倒を見切れないわ。…2回目の死であの子はバルキア帝国の兵士に殺された。そして、輪廻に入り、3回目となったとき、偶然にも同じ世界にそう時間が経たないうちに転生してしまったの。

……後は、あんた達が知っての通りよ。

ファルス皇国のときとは違って、それに関しては神は関与していない。2回目にバルキア帝国の兵士に殺されたときも、その経緯も… 全て記憶を引き継いでいたあの子は悲観したのよ、この残酷な世界に』


───だから、3回目、あの子が追い詰められたとき、

『呪わずにはいられなかった。理不尽なこの世界に残酷な世界に、どう足掻いても自分に死をもたらせるこの世界に…。そして、自分を追い詰めた人間たちに。何も知らずのうのうと生きてる者たちを… 全てを憎み怨んだ。

そしてそれを願ったあの子の瞳は金色に輝いていて… あの子自身、知らずして時の力を使ったの。追い詰めた彼らに向かって 、

《死は始まりに過ぎない。思い知るがいい、僕を、俺を追いつめたことを。思い知るがいい。永遠に死なぬことが出来ないその苦しみに、永遠に彷徨い続ければいい》

─そう彼らに放った言葉は自らにももたらした。時の力を呪いと怨みの言葉と共に放ったが為に、この世界は呪われた世界となり、誰も輪廻に入ることもなく、死んでもまたこの世界に生まれ変わる… 何度も何度も同じ役割、同じ道を歩んでしまうようになってしまった。

───これが、タイムループの真実よ』


「しん、じつ…」

唖然とするバクに、さらに追い打ちがかかる。


『時の力を無意識に使ってしまっとはいえ、この世界の理を根本的に変えてしまった。それによってこの呪われた世界に生まれた者たちは誰一人元の運命から外れてしまったのよ。

時が止まった世界に、呪われた世界に進んで神は手を加えようとは思わない。───そう、今まではね』


『だけど、今回は違う。この世界にももう限界が訪れようとしている。それは崩壊へのカウントダウン。だから、最高神が少しだけ手を加えたの。ドラゴンの王族であるジキルドを入れることによって。そしてそれにより、時が止まったこの世界はようやく少しだけ前を進み出した。

……ちなみに、トラックにはねられた前の世界からあの子はこちらへ来たけど、正確には前の世界は仮の世界。

もう一度言うけど、

流れを変えるために、最高神は一時的にあそこへ入れたの。結局は理由がどうあれ、またこの世界に帰って来た』


「な、んで… なんで、僕にそれを教えたの?」

そう口にするバクはメラフィルの性格から、ここまで親切丁寧に教えてくれたことには理由があると考えていた。

『───あら、察しがいいのね』

そう言ってニコリと笑うメラフィルに警戒心を露わにするバク。それを見たメラフィルはクスリと笑う。その見据える瞳は酷く冷たかった───。
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