100 / 117
- 運命の分岐点と守りたいもの -
『呪われた世界の真実と - 廻りだす歯車 - 』
しおりを挟む
『直接的ではないとは言え、結果的に殺したことに変わりはないわ。その時の神に間接的に殺した皇太子の体を奪えって言ってるようなものだもの… 時の神にとっても、あの子にとっても、残酷な仕打ちよねぇ。まあ、最高神の怒りにしたらそれも仕方がないのかもしれないけれど』
『そして、時の神だったときの記憶を消した上であの子の側で見守れるようにと、取り計らったの。それが味方であろうと敵であろうと… 時の神が犯した過ちを全て、無かったことにした上で愛するあの子の側に、たとえどんな形でもいられるようにと───。
それが、最高神が時の神への最初で最期の慈悲よ』
『そして、いくら人間が嫌いだとは言え、本来の運命を変えられたあの子に慈悲を与えないわけにもいかなかった最高神は…
新しい箱庭を作った上で、時の神と同様にその記憶を消した今、あの子はファルス皇国のことを全て覚えていない。時の神だったら… 神の力の名残り故にまだ思い出す可能性はあるけれど───。
この世界は… 一つの箱庭に過ぎないのよ。あの子の前の世界も…。その前の世界も。神々によって作られた箱庭の世界がたくさんあるの。その一つに、あの子と彼の体と融合した時の神クロノスを転生させた。同じ道を歩まないように、陰の血を引く者と陽の血を引く者を用意した上で土台を作り、発展させたその世界に後にあの子を転生させるつもりだった。
……けれど、
運命はそう簡単には変えられないのね』
「え、どういうこと!?だって、その二人は…」
『一時的にあの子の前の世界にあの子を移したとは言え、一時的なものだもの。まさか、トラックにはねられて、こっちに来るなんて… 私だって、最高神だって思ってもいなかったことなの。そう、考えれば本当にあの子はイレギュラーよね…。
まぁ、土台とレールを整えても歩み選ぶのは彼ら。そこまでは面倒を見切れないわ。…2回目の死であの子はバルキア帝国の兵士に殺された。そして、輪廻に入り、3回目となったとき、偶然にも同じ世界にそう時間が経たないうちに転生してしまったの。
……後は、あんた達が知っての通りよ。
ファルス皇国のときとは違って、それに関しては神は関与していない。2回目にバルキア帝国の兵士に殺されたときも、その経緯も… 全て記憶を引き継いでいたあの子は悲観したのよ、この残酷な世界に』
───だから、3回目、あの子が追い詰められたとき、
『呪わずにはいられなかった。理不尽なこの世界に残酷な世界に、どう足掻いても自分に死をもたらせるこの世界に…。そして、自分を追い詰めた人間たちに。何も知らずのうのうと生きてる者たちを… 全てを憎み怨んだ。
そしてそれを願ったあの子の瞳は金色に輝いていて… あの子自身、知らずして時の力を使ったの。追い詰めた彼らに向かって 、
《死は始まりに過ぎない。思い知るがいい、僕を、俺を追いつめたことを。思い知るがいい。永遠に死なぬことが出来ないその苦しみに、永遠に彷徨い続ければいい》
─そう彼らに放った言葉は自らにももたらした。時の力を呪いと怨みの言葉と共に放ったが為に、この世界は呪われた世界となり、誰も輪廻に入ることもなく、死んでもまたこの世界に生まれ変わる… 何度も何度も同じ役割、同じ道を歩んでしまうようになってしまった。
───これが、タイムループの真実よ』
「しん、じつ…」
唖然とするバクに、さらに追い打ちがかかる。
『時の力を無意識に使ってしまっとはいえ、この世界の理を根本的に変えてしまった。それによってこの呪われた世界に生まれた者たちは誰一人元の運命から外れてしまったのよ。
時が止まった世界に、呪われた世界に進んで神は手を加えようとは思わない。───そう、今まではね』
『だけど、今回は違う。この世界にももう限界が訪れようとしている。それは崩壊へのカウントダウン。だから、最高神が少しだけ手を加えたの。ドラゴンの王族であるジキルドを入れることによって。そしてそれにより、時が止まったこの世界はようやく少しだけ前を進み出した。
……ちなみに、トラックにはねられた前の世界からあの子はこちらへ来たけど、正確には前の世界は仮の世界。
もう一度言うけど、
流れを変えるために、最高神は一時的にあそこへ入れたの。結局は理由がどうあれ、またこの世界に帰って来た』
「な、んで… なんで、僕にそれを教えたの?」
そう口にするバクはメラフィルの性格から、ここまで親切丁寧に教えてくれたことには理由があると考えていた。
『───あら、察しがいいのね』
そう言ってニコリと笑うメラフィルに警戒心を露わにするバク。それを見たメラフィルはクスリと笑う。その見据える瞳は酷く冷たかった───。
『そして、時の神だったときの記憶を消した上であの子の側で見守れるようにと、取り計らったの。それが味方であろうと敵であろうと… 時の神が犯した過ちを全て、無かったことにした上で愛するあの子の側に、たとえどんな形でもいられるようにと───。
それが、最高神が時の神への最初で最期の慈悲よ』
『そして、いくら人間が嫌いだとは言え、本来の運命を変えられたあの子に慈悲を与えないわけにもいかなかった最高神は…
新しい箱庭を作った上で、時の神と同様にその記憶を消した今、あの子はファルス皇国のことを全て覚えていない。時の神だったら… 神の力の名残り故にまだ思い出す可能性はあるけれど───。
この世界は… 一つの箱庭に過ぎないのよ。あの子の前の世界も…。その前の世界も。神々によって作られた箱庭の世界がたくさんあるの。その一つに、あの子と彼の体と融合した時の神クロノスを転生させた。同じ道を歩まないように、陰の血を引く者と陽の血を引く者を用意した上で土台を作り、発展させたその世界に後にあの子を転生させるつもりだった。
……けれど、
運命はそう簡単には変えられないのね』
「え、どういうこと!?だって、その二人は…」
『一時的にあの子の前の世界にあの子を移したとは言え、一時的なものだもの。まさか、トラックにはねられて、こっちに来るなんて… 私だって、最高神だって思ってもいなかったことなの。そう、考えれば本当にあの子はイレギュラーよね…。
まぁ、土台とレールを整えても歩み選ぶのは彼ら。そこまでは面倒を見切れないわ。…2回目の死であの子はバルキア帝国の兵士に殺された。そして、輪廻に入り、3回目となったとき、偶然にも同じ世界にそう時間が経たないうちに転生してしまったの。
……後は、あんた達が知っての通りよ。
ファルス皇国のときとは違って、それに関しては神は関与していない。2回目にバルキア帝国の兵士に殺されたときも、その経緯も… 全て記憶を引き継いでいたあの子は悲観したのよ、この残酷な世界に』
───だから、3回目、あの子が追い詰められたとき、
『呪わずにはいられなかった。理不尽なこの世界に残酷な世界に、どう足掻いても自分に死をもたらせるこの世界に…。そして、自分を追い詰めた人間たちに。何も知らずのうのうと生きてる者たちを… 全てを憎み怨んだ。
そしてそれを願ったあの子の瞳は金色に輝いていて… あの子自身、知らずして時の力を使ったの。追い詰めた彼らに向かって 、
《死は始まりに過ぎない。思い知るがいい、僕を、俺を追いつめたことを。思い知るがいい。永遠に死なぬことが出来ないその苦しみに、永遠に彷徨い続ければいい》
─そう彼らに放った言葉は自らにももたらした。時の力を呪いと怨みの言葉と共に放ったが為に、この世界は呪われた世界となり、誰も輪廻に入ることもなく、死んでもまたこの世界に生まれ変わる… 何度も何度も同じ役割、同じ道を歩んでしまうようになってしまった。
───これが、タイムループの真実よ』
「しん、じつ…」
唖然とするバクに、さらに追い打ちがかかる。
『時の力を無意識に使ってしまっとはいえ、この世界の理を根本的に変えてしまった。それによってこの呪われた世界に生まれた者たちは誰一人元の運命から外れてしまったのよ。
時が止まった世界に、呪われた世界に進んで神は手を加えようとは思わない。───そう、今まではね』
『だけど、今回は違う。この世界にももう限界が訪れようとしている。それは崩壊へのカウントダウン。だから、最高神が少しだけ手を加えたの。ドラゴンの王族であるジキルドを入れることによって。そしてそれにより、時が止まったこの世界はようやく少しだけ前を進み出した。
……ちなみに、トラックにはねられた前の世界からあの子はこちらへ来たけど、正確には前の世界は仮の世界。
もう一度言うけど、
流れを変えるために、最高神は一時的にあそこへ入れたの。結局は理由がどうあれ、またこの世界に帰って来た』
「な、んで… なんで、僕にそれを教えたの?」
そう口にするバクはメラフィルの性格から、ここまで親切丁寧に教えてくれたことには理由があると考えていた。
『───あら、察しがいいのね』
そう言ってニコリと笑うメラフィルに警戒心を露わにするバク。それを見たメラフィルはクスリと笑う。その見据える瞳は酷く冷たかった───。
12
あなたにおすすめの小説
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る
竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。
子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。
ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。
神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。
公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。
それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。
だが、王子は知らない。
アレンにも王位継承権があることを。
従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!?
*誤字報告ありがとうございます!
*カエサル=プレート 修正しました。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる