断罪フラグを回避したらヒロインの攻略対象者である自分の兄に監禁されました。

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- 運命の分岐点と守りたいもの -

『囚われのお姫サマと - 鳥籠 - 』

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──────……
───…

「ン…っ、」


──バサッ!

「眠れない…」


ベッドから体を起こして、静かに溜め息つく

「何だかんだでいろいろあったけど、兄上とは… 和解できたかな?」

誰に言うでもなく、ふふっと小さく笑みを浮かべる


「騎士の… あの誓いには驚いたけど」

父王が崩御した後、一人孤高に陰謀渦巻く城で腹に一物も二物も抱えた古参の国の重鎮たちを冷酷王の名の元、牽制してきた兄上は… ジーク以外信頼できる者がいない。兄上は、寂しいとか思わなかったのかな?

──…ううん。

きっと、そう思う余裕さえ無かったかもしれない。まだちょっと怖い気持ちもあるけれど、大好きで敬愛する兄上のお役に少しでも…

「僕でも役に立てるかな…?」

その小さな呟きは誰に聞かれることもなく、空気に溶け込むように吸い込まれる。

(……?なんでだろ?)

「胸がざわざわする…」


ルティ!そう親しげに呼んでくれる頼もしい小さな友人は今、側にいない。

「バク…?近くに、いないの?」


部屋の中でバクを呼ぶも、その声は虚しく消えていく…


「……?」

ゴソゴソとベッドから降りると扉を開けた。


ギィー…という音が響くだけで、回廊には見張りの兵士もいなければ、この時間帯は巡回しているはずの衛兵の姿が見えない。

(……誰もいない?)

いつになく、静寂に包まれる静かすぎる夜に、不安が押し寄せる。


「あの、…誰かいませんか?」

「ジーク? 兄上…??」


(どうして、誰もいないの…?)

ありったけの声で呼ぶけれど、なんの声も返って来ない。

「な、にか… おかしいっ」

そのとき、視界の端に入った窓。

そこに映るのは… いつだったか。前にも・・・見たことがある血に染まったような真っ赤で不気味な満月が… 見下ろしていた。

「ハァハ…ァ…ッ! な、んでだろう… あの月が、怖いっ」


気づいたら、窓から逃げるように走っていて…

『オーディット…』

『ツカマエタ』


「……え?」

振り返ると、そこにいたのは兄上で。なのに、姿は兄上そのままなのに、どこか違和感を感じた。

「あ、にうえ… じゃない?」


───…あなたは、だれ?

そう聞こうとしたのに、声が出ない。体が鉛のように重たくて… 自由がきかない。

  『我がにえとなれ』

意識が朦朧とし落ちる直前、強く印象に残ったのは兄のいびつな笑みだった──。
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