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- 陰の王国と廻りだす歯車 -
『ジキルドの確信』
しおりを挟む顎に添えた手を頭へと移動させる。
クシャリ、もう一度頭を撫でられてオーディットは反射的に身を竦ませる。それに気づかないのか気づいてか、ジキルドは母親のことを知りたかったのだろうオーディットに告げた。
「母上は… お前が倒れて冷静さを失ってな、少し取り乱しているから今はメイドに連れられて部屋で休ませている」
「そ、そうですか…」
オーディットの返答にジキルドは微かに眉を寄せる。その声音は些か安堵しているようにも聞こえたからだ。
「―― だが、目が覚めたばかりでお前も不安だろう?やはり、母上をこの部屋へ呼ぼうか」
「え…?」
けれど、
母をこの部屋に呼ぶ、そう言ったジキルドの言葉にオーディット自身は気づいてないのだろう顔色が蒼白に変わる。
それは誰もが見るかぎり、母に対する拒絶反応で…
けれど、ジキルドはもう一つ確認のためにオーディットを見据えた。
「母上だけじゃない。…お前の婚約者、アウストロ家の公爵令嬢 フィーナ嬢もお前の身をひどく按じていたぞ?」
「こ、婚約者…ッ!?」
驚くオーディットだが無理もなかった。初めて聞く自分の婚約者の名前に驚愕を隠せなかった。
「何を言っている?母上が決めた婚約者がいただろう?」
「え、そ… それって、いつかは結婚するってことですよね…ッ!?」
「結婚するつもりもないのに、婚約者がいてどうする?今はまだ互いに年が幼い故に婚約という形だが、将来的にはそうなるだろうな」
そう告げた直後、オーディットの様子がおかしくなった。カタカタと震え、サッと青ざめているオーディットはどう見ても…一。
――‥今までの一通りの会話と様子からオーディットが倒れた原因に、ジキルドの頭にある一つの可能性が浮かんだ。
ジキルドは隣に控える付き人でもあり、自分の数少ない古き友人であるジークに視線を投げるとジークも、コクリと頷き返す…
周囲の人間を外へ出し、メイド一人だけを残した。そして、ジークに耳打ちされたメイドは恐る恐るオーディットに近付く。
「…殿下、失礼致します」
一言、断りを入れメイドはさらに一歩、オーディットに近づくと、壊れ物のようにオーディットを抱きしめた。
そして、
ジキルドの頭に浮かんだオーディットに対する、ある疑いが確信へと変わった瞬間だった。
――――――――――‥
――――‥
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