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- 陰の王国と廻りだす歯車 -
『オオカミと平和ボケした ” 仔羊 ” 』
真っ白な空間、そこに僕はいました。
「あっっれぇぇえ!?なんですか、このデジャヴは!?」
『……なんで、また此処に来たの?』
あ、
「バク!」
後ろから聞こえた声に振り返ると、いつかの見覚えのある… っていうか、さっき会ったばかりですが。人型バージョンのバクが何故か呆れた表情でふよふよと宙に浮いていました。
『なんで、そこで嬉しそうな表情になるかなー?キミ、自分の今の状況わかってる?』
「バクッ!なぜ、人型なんですか!?」
『いや、質問の答えになってないよ。それと、なんでそこでガッカリした表情になるのか僕にはわからないんだけど。前にも言ったけど、一応 こっちが本体だからね?』
勝手に期待されてガッカリされても困るんだけど。というバクに僕は抱きつく。
『ぅわっ!?』
『…もう!危ないなあ。抱きつくのはいいけど、いやホイホイ抱きつくのは良くないけど、勢いつけてくるのはやめて』
僕がギックリ腰になったらどうすんの?と言ってくるバクに、僕は首を傾げた。
「えっ!?精霊でも、ギックリ腰になるんですか !?」
『……ハァ、例えばの話だよ』
そもそも、僕ら精霊はキミたち人間ほど柔に出来てないからギックリ腰なんかにならないよ。と言いつつ、なんだかんだで、しっかり受け止めてくれるバクの優しさに思わず口元が緩んだ。
『まったくキミは、本当にいつもこっちが想像つかないことばかりしてくれるよね』
呆れた表情で溜め息を吐くバクに何のことかわからない僕は首を傾げる…
『前回は僕がキミの精神世界に意図的に繋げた。…だけど、今回は違う。キミ… 気絶したでしょ?』
腕を組んでふよふよと宙に浮くバクに、僕はさっきまでの記憶を振り返る。
「あ」
『ハァ、今回はキミが意識を飛ばして無意識に自ら此処に来てしまったんだよ。…女性恐怖症だっけ?』
Σえっ なんでわかったんでしょうか!?
『キミって… 良いのか悪いのか、すぐに表情に出るからわかりやすいよね。僕がキミの女性恐怖症に気づいたのはキミが此処に来た経緯を知るためにキミの記憶を読み取ったからだよ』
「記憶を読み取った…?」
『そう。ま、それが出来るのはこの世界のみの記憶だけどね。だから、この世界から逸脱しているキミが前にいた世界の記憶は僕には読み取れない』
…そうなんですね。
『―― で、話を戻すけど。
キミさぁ、さっきといい… もう少し警戒心を持ったほうがいいんじゃない?』
ほぇ?
『ほぇ?じゃないよ。キミのことを言ってるんだよ?わかってる??さっきもそうだけど、僕が悪いオオカミだったらどーするの?キミはいいとこ、草食で のほほんのんびりした仔羊。それこそ、危険の ” き ” も知らない平和ボケした仔羊。
取って喰われる前に、もう少し他人に警戒心もいうものを…』
ど、どどどうしましょう!?
バクが何やらお小言を言い始めたと思ったら、続けて本格的な説教が始まりました。そのうえに、辛辣です!酷い言いようです… 一体、何がバクにそうさせたんでしょうか?
オロオロと狼狽する僕に、バクが今度は半眼の目を向けてきます。何を言いたいのか、今ひとつわからない僕にバク様は盛大に溜め息を吐かれましたっと!
『ハァー。これだけ言ってもわからないなんて… キミ、鈍チンにも程があるよ。純粋培養?ここまで、超ド級の天然記念物は今まで見たことがないよ』
純粋… 培養?
こてん、と首を傾げて、とりあえず 「えへへっ」と笑ってみる。
『言っとくけど、褒めてないからね?』
眉をしかめるバクに僕は心配性だなあと笑う
「わかってますよ。ふふっ、ただ… 僕が純粋培養だなんて。おかしなことを言うんだなと思いまして。バクは心配のし過ぎです」
なんだか、擽ったい気持ちに照れ隠しに、
『ふふっ』と声を漏らすと、何故でしょうか。
バクが肩を竦めて、その覆い隠すことも忘れた溜息が、その唇から漏れました…
『ハァ、いや… キミ、全然。全く、僕の言ってること理解してないでしょ?』
「わかってますよ」
『いや、やっぱりわかってないよ!』
ふよふよと浮きながら額に手を置いて、『あーもう!』と唸ると、そのまま髪を掻き上げてバクは何かを吹っ切ったように僕を見つめました。
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