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- アルファード王国と黒い獅子 -
『補佐官サマの憂鬱』
しおりを挟む「………」
なぜ、私は気付かなかったのでしょうか。弟だという彼に促された時点で冷静になるべきだったんです。彼が誰なのかを。
食堂という場所を執事に案内されて入ると、そこには魔族が二人と玉座のような椅子に深々と腰を着き、顔の前で手を組んで此方をひたりと見据える… 王の席から退いたものの、その魔力は歴代随一の力を誇ると言われ、現魔王さえもその力には及ばないと言われる前魔王… アラルド。
なぜ、彼を知っているかって?
直接会ってはいませんが、遠目には見たことがあるからです。正直、前魔王の存在は私にとって面倒くさそうの以外ほかありません。だから、これまで十王との親睦会に魔界と天界から代表を招いた際にも、関わりを避けていたというのに…
なぜ、よりによって。
自称勇者の件といい、つくづく、最近の私はついてないようですね。
「……はじめまして、でしょうか?ところで、なぜ私は此処にいるのでしょうか?確か、草むらで寝ていたはずなんですが」
歴代随一の前魔王と云われる貴方が私を攫ったところで何も出ませんよ?
その意図が伝わったのか、否か…
魔族の一人はあからさまに敵意を向け、もう一人は面白そうに傍観している。───して、前魔王アラルドはというと…
「…それはすまなかった。別に君をどうこうするつもりはない」
それから、言葉を切りニコリと笑う
「なにせ、君が離してくれなくてね…」
・・・は?
「え?」
ま、まさか…っ
『父上、随分楽しそうですね』
後ろから追い付いたのだろう先ほど起こしてくれた少年が吐息紛れにぼやく。
「まぁね。…さて、ご理解 頂けたかな?閻魔大王第一補佐官の琥珀殿」
……さ、最悪です!先ほどのあのもふもふは… 前魔王のアラルドだと言うんですか!?知らなかったとは言え、男に もふもふするなんて。く、黒歴史っっ!しかし、あの毛の感触は… 最高でした。……じゃなくて!
「コホンッ!それは大変失礼しました。ご迷惑お掛けしてしまったようで…」
不本意ですが私にも非はありますし、と謝っているのかいないのか微妙なところですが形だけの謝罪だけを済ませると、彼はやはりどこか面白そうに見つめてきます。……はぁ、さっさとお暇しますか。
「…おや、何処に行くつもりかな?」
踵を返した僕を引き留めたのは… アラルドの声で。
「いえ、何処に行くも何も…。私は……・・・」
しまった!…危なかったです。もう少しで地獄界側の失態を魔界の住人に曝露してしまうところでした。天界・魔界・冥界・地獄界…。人間が住まう下界を除いて、この四つの世界は表面上は和平条約で結ばれていますが、あくまで表面上のことです。
隙を見せないことに越したことはないので、彼らに話すつもりはありませんが。……というよりも、我々地獄界の失態を他所に知られるなど恥以外にありませんからね。
───それも、自称勇者を盲信するあまり仕事を疎かにした自分の部下達がしでかした失態だなんて… はぁぁ。本当に頭が痛いです。
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