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- アルファード王国と黒い獅子 -
『補佐官サマの… オトモダチ』
しおりを挟む「…そうだね。君が何処へ行こうと君の勝手だ」
「───ッ!」
「だが、」
ガタリ、と椅子を立つアラルドに思わず身構える。
「 ” 家族 ” というものを築いていたほうが、君にとっては便利性があるんじゃないかな?そう、なにも本当の家族というわけじゃない。あくまで家族という " 形 " だ。我々も見た通り、本当の家族じゃない。関係性を明確に伝えるならば元部下と元上司の関係だ。───これでも前魔王を引退したものの、魔族は何かと血の気が多く、馬鹿な連中が多くてね…
現役から引退したものの、なかなか気の休まる日がないものだから、途方に暮れていたら丁度いいこの世界を見つけてね、まあ、あれだ… ご隠居ってところかな?」
愉しそうにニコニコと笑みを作り、真っすぐに琥珀を見据えて言い放つ前魔王のアラルドに、その意図がわからない… 時おり探るような眼差しとかち合う度に、不快な気分になる。
『それに… 君は』
スッと瞳を細めると、
「いや、何でもない」
言いかけた言葉を… 呑み込むと、またニコリと笑う。
「ところで、君が此処にいる理由は…」
その言葉に、微かに眉を寄せる琥珀を面白そうに見やると、
「いや、それも後に… わかるだろう」
まあ何せ、この退屈な日常から解放されるなら… なんでもいいさ。と零したアラルドの呟きは琥珀には届かなかった。
「……それでは私はこれで」
スッと頭を軽く下げて屋敷を出ていく琥珀にリールはアラルドに目を向ける。
『よろしかったのですか?』
それにアラルドは愉しそうにテーブルの上に手を組み、クツリと喉で笑う。
「ああ、構わないさ」
「見えるものが全てではない。あの子も… 何れわかるだろう」
アラルドの意味深な言葉にインクブスとベルゼビュートは眉をしかめる。リールは首を傾げた。
「…父上?」
「しかし、面倒なことになりそうだ」
「───と、言いますと?」
インクブスのイシュメルが眼鏡のブリッジを指先で軽く押し上げて訊ねる。
「あの子はああで、閻魔殿… 閻魔庁の閻魔大王の第一補佐官だ。普段、休む暇さえもないと聞く彼が何もないときは自室に引き篭もると言われる彼が。そこを離れ、今、此処にいるということ自体が普通ではないんだよ」
「……つまり、向こうで何かあったのではないかと?」
『そう、考えるのが妥当だろうね』
イシュメルの問いに頷くアラルドは… さて、どうしたものか。と困ったように笑う
少し悩ましげに、けども愉しそうな表情に… リールは小さく溜め息をつく。
「我々、魔界の者と地獄の住人では関わりも少ない。放っておいて良いのでは?」
案に、関わりたくないと嫌悪感を隠さないベルゼビュートのビュートに一瞥を向けたあと、イシュメルはアラルドに聞く
「……放って置くわけにはいかない理由があるのでは?」
「さすが、目の付けるところが鋭いね。ああ、そうだ。あの子を放って置けない理由は… 彼は何かと惹きつける。それも無意識に。
現に、彼のオトモダチも多くてね、あの子は時々煩わしく感じているようだが、そのお友達もあの子の身に何かあったと知れば、聞きつけて飛んで来るだろう」
「「「…………」」」
「そのお友達と、いうのは…」
「そうだね、天界四大天使の一人… ミカエル。それから、妖精界の妖精王も懇意にしていると聞いている。それから、天界騎士団の一人も…」
『は?』
『ほぅ…』
『………』
「何がそんなに彼らを惹きつけるのか、私にはわからないが… 面倒なのは四天王だと聞く」
「…四天王、ですか?というのは…」
まさか、隠り世の…!?
四天王という言葉はそれ以外に思いつかない。リールはアラルドにその先を促そうとするも、
「……これ以上はまだ機ではない」
「………」
そう締め括ると、席を立ち、アラルドは部屋を出て行った。
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