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- アルファード王国と黒い獅子 -
『謎かけの言葉とベルゼビュートの不満』
しおりを挟むパタンと閉じて口角をつり上げる
「…なにか、言いたげだね?」
気配がして振り返ることなく、そう口を開くと微かに息を呑むのがわかった。
『……どういうおつもりです?』
そう剣呑な眼差しを向けるのはいつも私に心酔しているベルゼビュートで、
「何が言いたいのかな?ベルゼビュート」
真の名で呼べばベルゼビュートはびくりと震えた。それに気づかないフリをして、敢えて圧をかける。
「……っなぜ、なぜ、そこまで!よりによってアレを…!貴方のような方ならもっと他にいるでしょう!?それがなぜ…っ!?今だって、彼に手を…」
出そうとしたのではないですか───?と開きかけた口から言葉が出てくることはなかった。見据える瞳をさらに細める。
「──君は勘違いしているね…。」
「勘違い…?」
「これでも私はモテるほうだ。それに、子供に手を出すほど飢えた獣ではないよ?……誰とは言わないが、隠り世の神獣のアレと一緒にされては困るよ」
やれやれ、と肩を竦めて見せるけれど、ベルゼビュートはまだ納得してなさそうで、
「……それに、私の意思は私の意思ではないよ」
「貴方の意思が貴方の意思ではない…?」
まるで、謎かけのように告げた言葉はさらにベルゼビュートを混乱させるもので、
「───認識、というモノはなかなか恐ろしいものだね。真実が偽りとされ、偽りが真実と認識されればそれはもう偽りではなくなってしまう」
「……は?」
「君は… 私を慕ってくれているようだが、それは果たして本当に私に対してなのかな?───それとも、私という人格かな?」
「それ、は… どういう…?」
目を瞠るベルゼビュートに小さくクスリと笑う
「来るべき時に全てがわかる… それまでに誰も欠けるわけにはいかない」
まだ何か言いたげなベルゼビュートに、この話は終わりだ、と打ち切ると元々優秀な側近であるベルゼビュートはハッと頭を下げて、姿を消した。
「───そう、誰も欠けるわけにはいかないんだよ。元に戻るためには…。天界、魔界、地獄界、隠り世…全てが欠けるわけにはいかない。そう、だからこそ、慎重にいかなくては…」
コツコツ、と歩く音がしていたのがミシッミシッという床が軋む音に変わる。そこにいたのは人型のアラルド、ではなく…
艶めく黒髪、静謐な夜の空気を纏う大きな大きな漆黒の獅子がただ静かに歩いて行った。
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