3 / 40
南条家との出会い編
南条家の『南』から取って『南くん』。貴方の新しい名前ですよ
「あの……?」
「ちょっ… なんですか、この可愛い生き物は///」
何かをごまかすように、くしゃくしゃと少し乱暴に撫でられる頭、
「……コホンっ!」
そして一つ咳払いすると、
「私のことは… 雪斗で構いませんよ」
え・・・?
「む、無理ですよ!それに 名前も素性もわからない俺をなんで『だからですよ』…え?」
「名前も素性もわからない… 貴方自身が一番困惑しているでしょう?その不安げな表情も、私は堪らなく好きですが」
「ぇ゙」
「…はぁ、旦那様。自重なさってください」
呆れた表情のセツに諌められるも彼は笑う
「冗談ですよ」
…すみません。冗談に聞こえなかったんですが、とはさすがに言えなかった。
「貴方のその不安そうな表情を見ていると、心配なんですよ私は」
そして困ったように笑う彼に、なんとも言えなくなる。
「貴方を警察に任せても構わないのですが、見る限り、何か訳ありな感じがしますし、自身のことがわからない以上、貴方も不安でしょう?」
ふわりと笑みを浮かべて、くしゃくしゃになった髪を今度は優しく梳く
「此処で焦らず、ゆっくり思い出せばいいですよ。……とはいっても、さすがに肩書きは何かしら必要ですね」
「肩、書き… ですか?」
きょとんと見上げると彼はまたふと笑う
「ええ、南条家はこれでも日本屈指の財閥で、中でも五本指には入りますから… 屋敷に入れる人間は身元をきっちりしなければならないのですよ」
「あの、やっぱり…!それに、見ず知らずのあなた方に俺のせいでご迷惑が掛かるなんてっ」
自分の面倒を見ると言ったばかりに迷惑が掛かることを考えて慌てて断ろうと口を開きかけるも、ピン!と突き立てた人差し指を俺の唇の前に持ってくる彼の行動に一瞬思考が止まる。
「しぃーーっ…」
「………ッ//」
淡い笑みを浮かべ、耳元に囁かれる彼の低すぎない甘い美声。耳に当たるその息づかいに顔が熱くなるのを感じた。
こほんっ!
「旦那様」
彼に向けるセツさんの咎める視線にハッとする。
「フフッ、本当に可愛らしいですね。迷惑だなんて、誰も思っていません。寧ろ、私が貴方を側に置きたいと思ったから… それでは理由になりませんか?」
「………でも、俺の素性は」
そう口にすればイタズラっ子のように含んだ笑みを見せると、口角を上げた。
「素性なんてもの… 肩書きなど作るのは簡単ですよ?」
「えっ!?」
「そうですねぇ。私としては恋人設定でも…」
という彼に空かさずセツさんからツッコミが入る
「旦那様、相手はケガ人ですよ。自重ですよ自重!」
「……ということなので、貴方には私の護衛を、年もあまり離れていないので普段は義理の親子として、過ごしてもらうことになりますが」
「護衛ですか?」
急な話の展開に目が点になるも、それを見越してか、彼は困ったように笑う。
「ええ、なにぶん、南条家は大きな財閥ですからね。いろいろあるんですよ。それに独り身は少し寂しく感じていたので貴方が来てくれてちょうど良かったです。本音を言えば、話し相手が欲しかったので護衛と言っても名ばかりの『肩書き』に過ぎませんよ」
あ、…さっきの肩書きが簡単に作れると言っていたのはこういうことかと妙に納得する。
「まあ、簡単な護身術は身につけてもらいますが、最低限のことなので君が按じる必要はありませんよ」
「よろしくお願いしますね、南くん?」
「え?南…?」
くすっと微笑んだ。
「ええ、南条家の『南』から取って『南くん』。貴方の新しい名前ですよ」
小さく微笑むその慈しむ瞳に、護衛として期待されていなくても、彼の期待にそれ以上に応えたいとそう感じた。
あなたにおすすめの小説
僕はただの平民なのに、やたら敵視されています
カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。
平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。
真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?
聞いてた話と何か違う!
きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。
生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!?
聞いてた話と何か違うんですけど!
※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。
他のサイトにも投稿しています。
愛だの恋だの馬鹿馬鹿しい!
蘇鉄
BL
「俺は誰とも関わりたくないんだけどなあ、おかしいなあ?」
『回答。ユーザー様の行動が微妙に裏目に出ています。シミュレーション通りにならず当システムは困惑しております( ゚Д゚)』
平和な学生生活を手に入れるために生活サポートAIシュレディンガーと共に色々と先回りして行動していたらいつの間にか風紀委員やら生徒会やらに追い回される羽目になっていた物部戯藍。
街を牛耳る二大不良チームも加わる中、執着される理由がわからず困惑しつつも彼は平穏な生活の為に逃げ回る。
彼は愛も恋も信じない。それはとても不確かなものだから。バカバカしいまやかしだと決めつけて。
※ 不定期更新です
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
虐げられた令息の第二の人生はスローライフ
りまり
BL
僕の生まれたこの世界は魔法があり魔物が出没する。
僕は由緒正しい公爵家に生まれながらも魔法の才能はなく剣術も全くダメで頭も下から数えたほうがいい方だと思う。
だから僕は家族にも公爵家の使用人にも馬鹿にされ食事もまともにもらえない。
救いだったのは僕を不憫に思った王妃様が僕を殿下の従者に指名してくれたことで、少しはまともな食事ができるようになった事だ。
お家に帰る事なくお城にいていいと言うので僕は頑張ってみたいです。