リトル君の魔法学園生活

鬼灯

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24_ミーナ先生

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「…あ…く」

「な…ん…」

声が聞こえる。聞いたことある声。パパとママの声だ。

「お前なんて…」
「貴方なんて…」

「生まれて来なければよかったのに!」
「生まれて来なければよかったんだ!」


バッ!

「はぁ…はぁ…ん…」

俺はどうやら布団に寝てたらしい。悪い夢を見て勢いよく起き上がってしまった。俺の頬に汗が流れる。俺、生きてる。よく見ると、体には包帯が巻いてあった。

「我、天命の罰に繋がれし咎人なり。願わくば、我…苦しみの海に消えることを」


俺は落ち着いたところで辺りを見回した。ここは…保健室?

「おう?起きたか平凡」

「会長…?どうして会長がここに?」

「お前を運んだのが俺だからな」

マジか。どうして…?

「これだ。俺様に感謝しろ」

先輩が見せたのは魔力玉だった。そうか、練習時間になっても俺が来ないから、呼んでくれたんだ…。

「ありがとうございます」


「こんにちわ、リトル君。気分はどうですか?」

「ミーナ先生。ちょっと気持ち悪いですけど、大丈夫です」

「そうですか。君は結構、酷い状態でした。魔法による切り傷、火傷、そして、密閉空間。発見が遅れていれば、最悪の事態もありました。僕の治癒魔法では、君の体力を考えて、今日は特に酷かった足だけを治癒魔法で治療しました」

どうりで足が痛くないはずだ。あんなに痛かったのに…。

「ありがとうございます」

「まぁ、どうせテンマのとこの親衛隊にでもやられたんだろうが…ちと、やりすぎだな」

「ははっ」

マジ、テンマ先輩のイケメンフェイス殴ってやる。

「あ…このこと、他に知ってる人がいるんですか…?」

「担任のコウヤ先生と同室者には伝えました。ただ、事がことなので、口止めをさせていただきましたが」

「あと、お前の保護者にも連絡する予定だ」

「…!待って!それは、大丈夫です!内緒にしていて下さい!」

フィルさんに知れたらすぐさま来る。自分の仕事もあるのに、迷惑は掛けられない。

「…私はこのことを伝える義務があります」

「本当に、大丈夫ですから!忙しい人なんです。迷惑はかけたくない」

フィルさんは世界に必要な人だから。

「はぁ、こりゃ先生、こいつ折れないですよ」

「そのようですね。でも、義務は義務です。しかし、私が連絡しなければならないわけではありません。自分でするというなら、お任せしましょう」

「あ、ありがとうございます!」

「では、リトル君は2、3日ここに泊まって下さい。絶対安静です」

「え…?それだと…」

ダンスの練習ができない。あと少ししかないのに。

「いいですね?」

「は、はい!!」

怖い!ミーナ先生笑顔のこの笑顔はやっぱり怖い!

「先輩、すいません」

「治ったら死ぬ気でやれ。じゃあ、俺様はこの辺で帰るわ。また来る」

「はい!先輩、本当にありがとうございました!」

先輩が手を上げた。なんやかんやでさすが会長だ。

先輩が扉を開けようとすると、先に扉が開いた。

「おう。目を覚ましたか?」

「はい。思ったより馬鹿面なんで俺はもう帰りますね」

「あぁ、気をつけて帰れ」

そう言ってすれ違い様に入ってきたのは、コウヤ先生とヒルエだった。

「ヒルエー!ッ!」

俺はいつものようにヒルエの平凡に癒してもらおうとヒルエを抱きしめに行こうとしたら体に痛みが走った。

「はぁ、」

腕を広げたまま、痛がる俺にヒルエは呆れながらゆっくりと抱きついた。

「無理すんじゃねぇよ」

「悪い。イケメンに触れすぎて、気分が悪くって思わず」

ペチンッ

ヒルエは俺を離すと、俺のおでこにデコピンをしてきた。

「イテッ」

「これに懲りたら、ちょっとは危機感を持て。じゃなきゃ、今度は俺が犯すぞ」

「気をつけます…」

ヒルエは俺のベットに腰掛けた。コウヤ先生も俺の近くに来る。

「先輩には伝えねぇんだってな。ミーナに聞いた」

「まぁ、フィルさんのことですから、全てほっぽり出してこっちに来るでしょうし。そうなれば、大混乱です」

フィルさんは人気者だからな…。力も美貌もあるし。

「あれ?ミーナ先生、フィルさんを知ってるんですか?」

「私とコウヤ先生は同級生ですから、フィルさんも同じ先輩にあたる方なんですよ」

知らなかった。それにしても、フィルさんの学生時代って、想像できないな…。

「んで、誰にやられたんだ?」

「え?」

「え?じゃねぇよ。誰にやられたんだ」

「テンマ先輩の親衛隊に…」

「名前とか顔は?」

そう言われても、名前は知らないし、顔はあんまり覚えてないんだよな…

「まぁ、わからんなら良い。もう、休め」

「はい」

「着替え、持ってきたから。また明日来る」

「ありがとう」

2人は俺を気遣ってか、短い時間で帰っていった。


------------------

ミーナside



「大丈夫ですか?」

2人が帰ったのを確認して、私はリトル君に声をかけた。

「はい!気分もだいぶ良くなりました」

そういって笑う、リトル君。私はリトル君に近づき、リトル君の胸を人差し指で指した。


「心が、ですよ」

この子は、今日、一回も泣いてない。この学校では、こういうことが度々ありますが、みんな、目を覚ました瞬間に涙を流したり、震えが止まらなくなったりするのが普通です。この歳の子には耐え難い現実なのです。しかし、リトル君のケースは今まででも一番っていって良いほど酷いのに、この子はずっと笑っている。

「…大丈夫です。俺はもっと辛いことを知っているから、このぐらいなんともないんですよ。それに、俺はトラブルメーカーですから、慣れてます!」


脆い。その辛いことに囚われている。だから、他の辛いことが霞んでしまう。心をセロテープで無理やり形作っているようです。きっと、少しの衝撃でもズレてしまう。それでも、なんとか立っている強さに感心してしまう。

「何かあったら、ここに来てください。私はいつでも居ますから」

「はい」

フィルさんやコウヤがこの子に構う理由がわかった気がします。私もこの子のためにできるだけのことをしてあげたいと思いました。この脆い心を守ってあげたい。

「ご飯を持って来ますね」

「甘いものもお願いします!」

「わかりました」

そういうと嬉しそうに笑う。まずは、この子に早く回復してもらって、安心させてもらいましょう。

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