24 / 102
24_ミーナ先生
しおりを挟む
「…あ…く」
「な…ん…」
声が聞こえる。聞いたことある声。パパとママの声だ。
「お前なんて…」
「貴方なんて…」
「生まれて来なければよかったのに!」
「生まれて来なければよかったんだ!」
バッ!
「はぁ…はぁ…ん…」
俺はどうやら布団に寝てたらしい。悪い夢を見て勢いよく起き上がってしまった。俺の頬に汗が流れる。俺、生きてる。よく見ると、体には包帯が巻いてあった。
「我、天命の罰に繋がれし咎人なり。願わくば、我…苦しみの海に消えることを」
俺は落ち着いたところで辺りを見回した。ここは…保健室?
「おう?起きたか平凡」
「会長…?どうして会長がここに?」
「お前を運んだのが俺だからな」
マジか。どうして…?
「これだ。俺様に感謝しろ」
先輩が見せたのは魔力玉だった。そうか、練習時間になっても俺が来ないから、呼んでくれたんだ…。
「ありがとうございます」
「こんにちわ、リトル君。気分はどうですか?」
「ミーナ先生。ちょっと気持ち悪いですけど、大丈夫です」
「そうですか。君は結構、酷い状態でした。魔法による切り傷、火傷、そして、密閉空間。発見が遅れていれば、最悪の事態もありました。僕の治癒魔法では、君の体力を考えて、今日は特に酷かった足だけを治癒魔法で治療しました」
どうりで足が痛くないはずだ。あんなに痛かったのに…。
「ありがとうございます」
「まぁ、どうせテンマのとこの親衛隊にでもやられたんだろうが…ちと、やりすぎだな」
「ははっ」
マジ、テンマ先輩のイケメンフェイス殴ってやる。
「あ…このこと、他に知ってる人がいるんですか…?」
「担任のコウヤ先生と同室者には伝えました。ただ、事がことなので、口止めをさせていただきましたが」
「あと、お前の保護者にも連絡する予定だ」
「…!待って!それは、大丈夫です!内緒にしていて下さい!」
フィルさんに知れたらすぐさま来る。自分の仕事もあるのに、迷惑は掛けられない。
「…私はこのことを伝える義務があります」
「本当に、大丈夫ですから!忙しい人なんです。迷惑はかけたくない」
フィルさんは世界に必要な人だから。
「はぁ、こりゃ先生、こいつ折れないですよ」
「そのようですね。でも、義務は義務です。しかし、私が連絡しなければならないわけではありません。自分でするというなら、お任せしましょう」
「あ、ありがとうございます!」
「では、リトル君は2、3日ここに泊まって下さい。絶対安静です」
「え…?それだと…」
ダンスの練習ができない。あと少ししかないのに。
「いいですね?」
「は、はい!!」
怖い!ミーナ先生笑顔のこの笑顔はやっぱり怖い!
「先輩、すいません」
「治ったら死ぬ気でやれ。じゃあ、俺様はこの辺で帰るわ。また来る」
「はい!先輩、本当にありがとうございました!」
先輩が手を上げた。なんやかんやでさすが会長だ。
先輩が扉を開けようとすると、先に扉が開いた。
「おう。目を覚ましたか?」
「はい。思ったより馬鹿面なんで俺はもう帰りますね」
「あぁ、気をつけて帰れ」
そう言ってすれ違い様に入ってきたのは、コウヤ先生とヒルエだった。
「ヒルエー!ッ!」
俺はいつものようにヒルエの平凡に癒してもらおうとヒルエを抱きしめに行こうとしたら体に痛みが走った。
「はぁ、」
腕を広げたまま、痛がる俺にヒルエは呆れながらゆっくりと抱きついた。
「無理すんじゃねぇよ」
「悪い。イケメンに触れすぎて、気分が悪くって思わず」
ペチンッ
ヒルエは俺を離すと、俺のおでこにデコピンをしてきた。
「イテッ」
「これに懲りたら、ちょっとは危機感を持て。じゃなきゃ、今度は俺が犯すぞ」
「気をつけます…」
ヒルエは俺のベットに腰掛けた。コウヤ先生も俺の近くに来る。
「先輩には伝えねぇんだってな。ミーナに聞いた」
「まぁ、フィルさんのことですから、全てほっぽり出してこっちに来るでしょうし。そうなれば、大混乱です」
フィルさんは人気者だからな…。力も美貌もあるし。
「あれ?ミーナ先生、フィルさんを知ってるんですか?」
「私とコウヤ先生は同級生ですから、フィルさんも同じ先輩にあたる方なんですよ」
知らなかった。それにしても、フィルさんの学生時代って、想像できないな…。
「んで、誰にやられたんだ?」
「え?」
「え?じゃねぇよ。誰にやられたんだ」
「テンマ先輩の親衛隊に…」
「名前とか顔は?」
そう言われても、名前は知らないし、顔はあんまり覚えてないんだよな…
「まぁ、わからんなら良い。もう、休め」
「はい」
「着替え、持ってきたから。また明日来る」
「ありがとう」
2人は俺を気遣ってか、短い時間で帰っていった。
------------------
ミーナside
「大丈夫ですか?」
2人が帰ったのを確認して、私はリトル君に声をかけた。
「はい!気分もだいぶ良くなりました」
そういって笑う、リトル君。私はリトル君に近づき、リトル君の胸を人差し指で指した。
「心が、ですよ」
この子は、今日、一回も泣いてない。この学校では、こういうことが度々ありますが、みんな、目を覚ました瞬間に涙を流したり、震えが止まらなくなったりするのが普通です。この歳の子には耐え難い現実なのです。しかし、リトル君のケースは今まででも一番っていって良いほど酷いのに、この子はずっと笑っている。
「…大丈夫です。俺はもっと辛いことを知っているから、このぐらいなんともないんですよ。それに、俺はトラブルメーカーですから、慣れてます!」
脆い。その辛いことに囚われている。だから、他の辛いことが霞んでしまう。心をセロテープで無理やり形作っているようです。きっと、少しの衝撃でもズレてしまう。それでも、なんとか立っている強さに感心してしまう。
「何かあったら、ここに来てください。私はいつでも居ますから」
「はい」
フィルさんやコウヤがこの子に構う理由がわかった気がします。私もこの子のためにできるだけのことをしてあげたいと思いました。この脆い心を守ってあげたい。
「ご飯を持って来ますね」
「甘いものもお願いします!」
「わかりました」
そういうと嬉しそうに笑う。まずは、この子に早く回復してもらって、安心させてもらいましょう。
「な…ん…」
声が聞こえる。聞いたことある声。パパとママの声だ。
「お前なんて…」
「貴方なんて…」
「生まれて来なければよかったのに!」
「生まれて来なければよかったんだ!」
バッ!
「はぁ…はぁ…ん…」
俺はどうやら布団に寝てたらしい。悪い夢を見て勢いよく起き上がってしまった。俺の頬に汗が流れる。俺、生きてる。よく見ると、体には包帯が巻いてあった。
「我、天命の罰に繋がれし咎人なり。願わくば、我…苦しみの海に消えることを」
俺は落ち着いたところで辺りを見回した。ここは…保健室?
「おう?起きたか平凡」
「会長…?どうして会長がここに?」
「お前を運んだのが俺だからな」
マジか。どうして…?
「これだ。俺様に感謝しろ」
先輩が見せたのは魔力玉だった。そうか、練習時間になっても俺が来ないから、呼んでくれたんだ…。
「ありがとうございます」
「こんにちわ、リトル君。気分はどうですか?」
「ミーナ先生。ちょっと気持ち悪いですけど、大丈夫です」
「そうですか。君は結構、酷い状態でした。魔法による切り傷、火傷、そして、密閉空間。発見が遅れていれば、最悪の事態もありました。僕の治癒魔法では、君の体力を考えて、今日は特に酷かった足だけを治癒魔法で治療しました」
どうりで足が痛くないはずだ。あんなに痛かったのに…。
「ありがとうございます」
「まぁ、どうせテンマのとこの親衛隊にでもやられたんだろうが…ちと、やりすぎだな」
「ははっ」
マジ、テンマ先輩のイケメンフェイス殴ってやる。
「あ…このこと、他に知ってる人がいるんですか…?」
「担任のコウヤ先生と同室者には伝えました。ただ、事がことなので、口止めをさせていただきましたが」
「あと、お前の保護者にも連絡する予定だ」
「…!待って!それは、大丈夫です!内緒にしていて下さい!」
フィルさんに知れたらすぐさま来る。自分の仕事もあるのに、迷惑は掛けられない。
「…私はこのことを伝える義務があります」
「本当に、大丈夫ですから!忙しい人なんです。迷惑はかけたくない」
フィルさんは世界に必要な人だから。
「はぁ、こりゃ先生、こいつ折れないですよ」
「そのようですね。でも、義務は義務です。しかし、私が連絡しなければならないわけではありません。自分でするというなら、お任せしましょう」
「あ、ありがとうございます!」
「では、リトル君は2、3日ここに泊まって下さい。絶対安静です」
「え…?それだと…」
ダンスの練習ができない。あと少ししかないのに。
「いいですね?」
「は、はい!!」
怖い!ミーナ先生笑顔のこの笑顔はやっぱり怖い!
「先輩、すいません」
「治ったら死ぬ気でやれ。じゃあ、俺様はこの辺で帰るわ。また来る」
「はい!先輩、本当にありがとうございました!」
先輩が手を上げた。なんやかんやでさすが会長だ。
先輩が扉を開けようとすると、先に扉が開いた。
「おう。目を覚ましたか?」
「はい。思ったより馬鹿面なんで俺はもう帰りますね」
「あぁ、気をつけて帰れ」
そう言ってすれ違い様に入ってきたのは、コウヤ先生とヒルエだった。
「ヒルエー!ッ!」
俺はいつものようにヒルエの平凡に癒してもらおうとヒルエを抱きしめに行こうとしたら体に痛みが走った。
「はぁ、」
腕を広げたまま、痛がる俺にヒルエは呆れながらゆっくりと抱きついた。
「無理すんじゃねぇよ」
「悪い。イケメンに触れすぎて、気分が悪くって思わず」
ペチンッ
ヒルエは俺を離すと、俺のおでこにデコピンをしてきた。
「イテッ」
「これに懲りたら、ちょっとは危機感を持て。じゃなきゃ、今度は俺が犯すぞ」
「気をつけます…」
ヒルエは俺のベットに腰掛けた。コウヤ先生も俺の近くに来る。
「先輩には伝えねぇんだってな。ミーナに聞いた」
「まぁ、フィルさんのことですから、全てほっぽり出してこっちに来るでしょうし。そうなれば、大混乱です」
フィルさんは人気者だからな…。力も美貌もあるし。
「あれ?ミーナ先生、フィルさんを知ってるんですか?」
「私とコウヤ先生は同級生ですから、フィルさんも同じ先輩にあたる方なんですよ」
知らなかった。それにしても、フィルさんの学生時代って、想像できないな…。
「んで、誰にやられたんだ?」
「え?」
「え?じゃねぇよ。誰にやられたんだ」
「テンマ先輩の親衛隊に…」
「名前とか顔は?」
そう言われても、名前は知らないし、顔はあんまり覚えてないんだよな…
「まぁ、わからんなら良い。もう、休め」
「はい」
「着替え、持ってきたから。また明日来る」
「ありがとう」
2人は俺を気遣ってか、短い時間で帰っていった。
------------------
ミーナside
「大丈夫ですか?」
2人が帰ったのを確認して、私はリトル君に声をかけた。
「はい!気分もだいぶ良くなりました」
そういって笑う、リトル君。私はリトル君に近づき、リトル君の胸を人差し指で指した。
「心が、ですよ」
この子は、今日、一回も泣いてない。この学校では、こういうことが度々ありますが、みんな、目を覚ました瞬間に涙を流したり、震えが止まらなくなったりするのが普通です。この歳の子には耐え難い現実なのです。しかし、リトル君のケースは今まででも一番っていって良いほど酷いのに、この子はずっと笑っている。
「…大丈夫です。俺はもっと辛いことを知っているから、このぐらいなんともないんですよ。それに、俺はトラブルメーカーですから、慣れてます!」
脆い。その辛いことに囚われている。だから、他の辛いことが霞んでしまう。心をセロテープで無理やり形作っているようです。きっと、少しの衝撃でもズレてしまう。それでも、なんとか立っている強さに感心してしまう。
「何かあったら、ここに来てください。私はいつでも居ますから」
「はい」
フィルさんやコウヤがこの子に構う理由がわかった気がします。私もこの子のためにできるだけのことをしてあげたいと思いました。この脆い心を守ってあげたい。
「ご飯を持って来ますね」
「甘いものもお願いします!」
「わかりました」
そういうと嬉しそうに笑う。まずは、この子に早く回復してもらって、安心させてもらいましょう。
2
あなたにおすすめの小説
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
俺の居場所を探して
夜野
BL
小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。
そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。
そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、
このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。
シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。
遅筆なので不定期に投稿します。
初投稿です。
王様の恋
うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」
突然王に言われた一言。
王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。
ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。
※エセ王国
※エセファンタジー
※惚れ薬
※異世界トリップ表現が少しあります
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
もう観念しなよ、呆れた顔の彼に諦めの悪い僕は財布の3万円を机の上に置いた
谷地
BL
お昼寝コース(※2時間)8000円。
就寝コースは、8時間/1万5千円・10時間/2万円・12時間/3万円~お選びいただけます。
お好みのキャストを選んで御予約下さい。はじめてに限り2000円値引きキャンペーン実施中!
液晶の中で光るポップなフォントは安っぽくぴかぴかと光っていた。
完結しました *・゚
2025.5.10 少し修正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる