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[第1話]鬼さんこちら
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赤鬼×桃太郎
*******
「はあー、平和だなあ……」
思わずそう独りごちる。蓙の上に寝転がった姿勢で尻をポリポリ掻きながら、ちぃーとばかり行儀悪いがホジホジと鼻くそをほじったりなんかして。
あれから、俺が生まれ変わってからまた15年が経った。前世では15歳の誕生日に心臓が止まったが、今世ではびっくりするほどの健康体で、このまま順調に行けば天寿を全うできそうだ。
とは言ってもこの時代の平均寿命は60歳程で、だけど周りは70を過ぎても元気なお年寄りはごろごろいる。この時代は子供が成人まで育つことが難しく、平均寿命をぐんと下げていて。
まあ、そんなことは置いといて、前世の俺、めっちゃ頑張ったもん。前世で徳を積んだかどうかは正直、微妙だけど、少なくとも短い人生を懸命に生きた。
ろくに学校に通えず友達もいなかったけど、少なくとも両親以外に迷惑を掛けてはいない。親孝行もできなくて両親には申し訳なかったが、二人の子供に生まれてとても幸せだったし。
ここで話を冒頭に戻すと俺が今世に生まれ変わったあの日、俺は驚愕の事実を知ってしまった。母親の腹の中で羊水に守られていたと思っていたが、実は俺がいたのは大きな桃の中で、梨汁ならぬ桃汁の中にぷかぷか浮かんでいたらしい。
包丁の件は母親ならぬ婆さまが握っていた包丁で、婆さまは川で拾った大きな桃に包丁を入れただけだった。桃に包丁を入れてみたら桃汁ぶっしゃー状態で、おまけに赤ん坊が出て来たもんだから、そん時の婆さんは腰を抜かしていたっけか。
「まさか、桃太郎に生まれ変わるとは……」
ってか、桃太郎って架空の人物じゃねーの? しかも日本昔話に出て来る誰でも知ってる、言ってみれば日本一の有名人だ。
つまりはこれって、異世界転生ってやつか? 転生した異世界が過去の日本のパラレルワールドとか、にわかに信じられないが。
『桃から生まれたから桃太郎と名付けよう』
爺さまがこう言い放った時、俺はその場で固まってしまった。後でこの時代の男児の名前は強く逞しく育って欲しいと『太郎』を付けると知り、嬉しくなったけど。
ともかく俺は前世の記憶をばりばり持ったまま、桃太郎としてここまで成長したわけで、しかも新しい記憶が増えて行く度に前の記憶が消えることもなく。
15歳の誕生日に、俺は爺さまに言われて鬼ヶ島に鬼退治に出掛けた。最初は半信半疑だったが、マジで旅の途中に犬、猿、雉に出会ったし。ただ、そいつらは半妖と言うか半獣状態で、犬、猿、雉の擬人化のような見た目で。
しかも、そのまま鬼を退治しちゃったし。前世では喧嘩もしたことがなかった俺が。おまけに俺を育ててくれた爺さま、婆さまだけじゃなく、村の人たち全員に感謝されて少し照れ臭くて。
「おーい、桃太郎いるかー」
だがしかし、一つだけ大誤算。
「おっ、いたいた。また何もしないで寝てんのか」
まさか、その退治したはずの鬼に懐かれるとは……。
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「はあー、平和だなあ……」
思わずそう独りごちる。蓙の上に寝転がった姿勢で尻をポリポリ掻きながら、ちぃーとばかり行儀悪いがホジホジと鼻くそをほじったりなんかして。
あれから、俺が生まれ変わってからまた15年が経った。前世では15歳の誕生日に心臓が止まったが、今世ではびっくりするほどの健康体で、このまま順調に行けば天寿を全うできそうだ。
とは言ってもこの時代の平均寿命は60歳程で、だけど周りは70を過ぎても元気なお年寄りはごろごろいる。この時代は子供が成人まで育つことが難しく、平均寿命をぐんと下げていて。
まあ、そんなことは置いといて、前世の俺、めっちゃ頑張ったもん。前世で徳を積んだかどうかは正直、微妙だけど、少なくとも短い人生を懸命に生きた。
ろくに学校に通えず友達もいなかったけど、少なくとも両親以外に迷惑を掛けてはいない。親孝行もできなくて両親には申し訳なかったが、二人の子供に生まれてとても幸せだったし。
ここで話を冒頭に戻すと俺が今世に生まれ変わったあの日、俺は驚愕の事実を知ってしまった。母親の腹の中で羊水に守られていたと思っていたが、実は俺がいたのは大きな桃の中で、梨汁ならぬ桃汁の中にぷかぷか浮かんでいたらしい。
包丁の件は母親ならぬ婆さまが握っていた包丁で、婆さまは川で拾った大きな桃に包丁を入れただけだった。桃に包丁を入れてみたら桃汁ぶっしゃー状態で、おまけに赤ん坊が出て来たもんだから、そん時の婆さんは腰を抜かしていたっけか。
「まさか、桃太郎に生まれ変わるとは……」
ってか、桃太郎って架空の人物じゃねーの? しかも日本昔話に出て来る誰でも知ってる、言ってみれば日本一の有名人だ。
つまりはこれって、異世界転生ってやつか? 転生した異世界が過去の日本のパラレルワールドとか、にわかに信じられないが。
『桃から生まれたから桃太郎と名付けよう』
爺さまがこう言い放った時、俺はその場で固まってしまった。後でこの時代の男児の名前は強く逞しく育って欲しいと『太郎』を付けると知り、嬉しくなったけど。
ともかく俺は前世の記憶をばりばり持ったまま、桃太郎としてここまで成長したわけで、しかも新しい記憶が増えて行く度に前の記憶が消えることもなく。
15歳の誕生日に、俺は爺さまに言われて鬼ヶ島に鬼退治に出掛けた。最初は半信半疑だったが、マジで旅の途中に犬、猿、雉に出会ったし。ただ、そいつらは半妖と言うか半獣状態で、犬、猿、雉の擬人化のような見た目で。
しかも、そのまま鬼を退治しちゃったし。前世では喧嘩もしたことがなかった俺が。おまけに俺を育ててくれた爺さま、婆さまだけじゃなく、村の人たち全員に感謝されて少し照れ臭くて。
「おーい、桃太郎いるかー」
だがしかし、一つだけ大誤算。
「おっ、いたいた。また何もしないで寝てんのか」
まさか、その退治したはずの鬼に懐かれるとは……。
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