夏蝉鳴く頃、空が笑う

EUREKA NOVELS

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#7 「幼年期〜浮上〜」

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 僕はそれなりに裕福な家庭に生まれた。
 だからやりたいことはなんでもやらせてもらえたし、周りからすれば羨むほどの環境だったと思う。
 だが、僕は重度の飽き性で、その環境を生かし切れるような器ではなかったということに両親は気づき、僕に対して期待をすることをやめた。
 その当たりの頃からだっただろうか、周りの景色がどうにも俯瞰して見えるようになったのは。
 自分の目を通して一つの映画でもみている気分で生きていた。
 そんな話は両親はおろか、友達に打ち明けても気味悪がられるだけだった。
 そんなある日、何を思ったのかペンと紙を持って、文字を書いた。
 今思うと拙い文章だが、それでも僕という存在が文字という媒体を通して、初めて世界に表現された気がして心地がよかった。

 そうしてずっと物語を書いていた僕に、父親の方があるとき

「その書いてるものを見せてくれないか?」

 と言った。
 僕はその時気づいた。
 僕はほとんど笑わない、泣かない、口数も少なく、親として感情の起伏が読み取りづらいのだろう。
 だから、そのとき精一杯の笑顔で

「うん。いいよ」

 と言った。
 笑い返してもらえるのかな、と思っていたが、実際の反応は違った。
 何か薄気味悪いものを見るかのような目で僕がいる方角を見ている。
 あぁ、自然に笑えずに歪んだ作り笑いでいたから、怖がらせてしまった。その時僕は、望まれた人間にはなれないのだと、はっきりと自覚してしまった。

「そうして、君は物書きになることを志した」
「人より才能があったのかは分からない、だけど、どこにも居場所のない君の心の穴を埋めてくれると信じていたから」
「全部、君の書いた本の中に書いてあったことで、それが君の始まりなんだよね」

「アルマ」
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