33 / 405
第2章 出会い アイリス、クロ編 (16話〜48話)
"紅魔の魔王"グレン
しおりを挟む~???サイド~
────────我は、誰だ?
暗い。
何も見えない。
暗闇が我を覆っている。
我は今まで何をしていた?
皆はどこだ?
分からない………何も思い出せない………………。
………………………そうだ、我は───────。
彼奴の呪縛によって生きる人形となった紅の王。
死なない………死ねない人形。
全て我の元から消えた。
何もかも。
…………時が経つにつれ、どんどん我も消えてゆく。
我の魂さえも忌まわしき彼奴の贄となってしまう…………。
誰か………我を殺してくれ。
我は疲れた………。
痛みも、苦しみも、悲しみも、恐怖も、全てもう感じ飽きた。
─────────我のそばに近寄るな…………。
我は………全てを壊してしまう。
我を殺すといきがって現れた輩も、すぐにじゃべらなくなった………。
我が訪れた国も、気が付けば滅ぼされていた………。
我は怖い。
近づくもの全てを無にしてしまうこの忌まわしき力が。
こんなものを得るために、我は魔の王を目指したのではなかったはずだ………。
………………………………………?
我は何のために………?
──────────あぁ、あのお方の封印をいち早く解いて差し上げるため、もっと生贄を集めなくては………!
まだ足りない。
もっと、もっとだ………もっと魂が必要だ。
国を滅ぼせば大量の贄が手に入る。
それだけあのお方の復活が早くなる…………………………いや、違う。
早くしてはダメだ。
まずい………すでに我が消えつつある……………。
誰か、我を助けてくれ………。
我はまだ消える訳にはいかん。
我を殺し、彼奴までもを滅ぼす人物を見つけるまでは……………。
……………我は…………………………誰だ?
教えてくれ………教えてくれ…………………。
玉座の上で巨体を丸めて蹲り、死んだ目でブツブツとそう呟く王。
かつて彼を慕い、眼下に膝をついて忠誠を示した臣下達はもう存在しない。
真っ暗な部屋には、一人ぼっちの王がぽつんと寂しく残された。
数百年前から変わらぬ景色。
変われぬ己。
魂だけが静かにすり減っていく。
───────そんな部屋に、一筋の光が差し込んだ。
久々に見るその光景は、まるでやっと差した希望の光にさえ見えた。
誰かが部屋の入口を思いきり開けた。
王はニヤリと笑ってのっそり立ち上がると、先程の情けない姿は掻き消えて、王たるにふさわしい堂々とした鬼迫がみなぎる。
さあ、新たな剪定の時だ。
◇◆◇◆◇◆
不気味なオーラを放つ禍々しい扉を押すと、俺の身長の三倍はあると思われる巨大な鉄の塊は、ゴッ、ゴゴッ!と重厚な音を立てながら、思いがけず滑らかに動いた。
一度動きだせば、まるで後ろから誰かが引っ張っているのではないかと思うくらい、つっかえることなく開いていく。
完全に開ききった大扉はずぅん、と余韻を残して止まり、ずっと隠していた内部をお披露目する。
内部は漆黒に包まれていた。
開けた扉から入る光が入口付近を微弱に照らすだけで、他は明かりも光の入る窓も無いため、ありとあらゆるものが真っ黒で何も見えない。
「ようこそ、我が"王の間"へ……」
「「っ!!」」
突如奥から響いた重々しい声に反応し、俺とクロは咄嗟に各々の武器を引き抜いて構える。
するとすぐに、入口近くの両側に設置されていた松明がボッ!と音を立てて燃え上がる。
普通の炎の色ではなく、真紅に近い真っ赤な炎だ。
少し離れた場所にも同じように二つの火が灯り、中央の絨毯を照らしながらどんどん奥へと進んでいく。
そして、合計で八個目の火が灯ると、最後に九個目と十個目が奥の階段の中間を照らす。
どうやらあのもう少し上には玉座があるらしく、絶妙に明かりの避けられたそこには何かの足だけが見えた。
一歩ずく確実に、ズシン、ズシンと地ならしを起こしながら、何かが階段を降りてくる。
…………姿を現したのは、見上げるような筋骨隆々の体躯に厳ついライオンの顔。
背中に大きなコウモリの羽を持ち、赤みがかった長い毛に覆われたヤギのような下半身にしっぽからは蛇が生えてこちらを睨んでいる。
簡単に言うと、いわゆるキメラのような姿だ。
こいつが"紅魔の魔王"か。
「我こそは魔王グレン。世間では"紅魔の魔王"とも呼ばれているらしいな」
遠くで向き合う魔王グレンが発した重々しい声は、言葉自体が物理的な重みを持っているかのように俺達の体にのしかかってくる。
まだ何もしていないのにとんでもない威圧感だ。
超が付くほどの高レベル、高ステータス、さらには厄介なスキルを多数所持。
〈鑑定〉でグレンのステータス画面を見て分かったが、やはり魔王は異常なほど強い。
151
あなたにおすすめの小説
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる