124 / 405
第6章
一撃
しおりを挟む手刀を振りかざし、カカッ!と檻の鉄格子を上下で横に切断して入口を作る。
ガシャガシャと音を立てて落ちた鉄の棒を前に、少女は恐る恐ると言った様子で檻の外に出て眩しそうに目を細めた。
長い間この中に閉じ込められていたのだろうか。
久々に降り注ぐ太陽の光に慣れるまで少し時間がかかった。
そして、見上げていた瞳を下ろして俺を捉えると、タタッと駆け寄り──────────。
怖かったのだろう。
俯いた少女の肩はふるふる震えていt
「この………変態!!」
「おぐっふ!?」
な、何で…………?
キッ!と睨む瞳は怒りで紅く輝き、待ち構える俺の一歩手前で止まった少女が振り上げた足は、それはもう思いっきり急所にクリーンヒット。
肉体の強さ云々とか全く関係なくせり上がってくるとてつもない痛みに、思わず内股で地面に倒れ伏した。
白目で完全にノックアウト状態の俺を見下ろし、少女がふー!と猫のような威嚇を見せる。
まるで逆立った毛としっぽが幻視できるようだ。
「ま、マシロさーーーん!?」
リーンがうぼぁ………と動かなくなった俺に駆け寄り、抱き起こして肩を揺さぶる。
ちょ、マジで今やばいから動かさないで……………。
これ大丈夫?
マシロ君からマシロちゃんにチェンジしてないよね?
漢女になるのは嫌だ。
あ、これ走馬灯かな?
…………………あーだめだ痛すぎてまともな思考ができん。
涙で視界がぼやけてきた。
「ダメですマシロさん!せめて私との子供を授かるまでは…………!」
「いや、そこ…………?」
もはやツッコむ気力すら湧かない。
人生初あそこスマッシュ…………男の弱点は不老不死でも同じだった。
~十五分後~
「…………ふぅ、死ぬかと思った……………」
「ふん!アンタみたいな変態は死ねばいいのよ!」
「酷くない!?」
なぜか少女を助けたと思ったらまさかの金的を喰らい、あまりの痛みに悶絶してから少し経ち、やっとこさ復活した俺に向かって少女は辛辣な言葉を吐き捨てる。
目が完全にゴミを見る目なんですが……………。
なんでこんなに当たりが強いのさ。
俺達初対面だよね?
「そうですね、なぜそんなにマシロさんを目の敵に?」
「……………………………だってこの男、さっきからあなたの胸ばっかり見てるのよ?」
「ぐふっ!?」
見下した視線が非常にグサグサ刺さる。
おまけの「最低!」、の一言でさらに言葉のナイフがグサグサ刺さりまくった。
否定しずらいのがなんとも悲しい限りだ。
もう止めて、マシロのライフはゼロよ!
「ま、マシロさん、私は嬉しいですよ?」
胸の前でギュッと拳を握り、落ち込む俺を必死に励ましてくれるリーン。
その優しさが心に沁みるぜ…………。
「はぁ…………。まあとりあえず今のは一旦置いておいて。はいこれ」
ため息一つ。
気持ちを切り替えて【ストレージ】から取り出し放り投げた布袋を少女が反射的に受け取り、怪訝そうに中身を確認すると驚いたように俺を見た。
その表情は「何で………?」とでも言いたげだ。
「これって…………」
「見たまんま服と水とタオル。とりあえずそんな服装じゃ嫌だろうから着替えてきな。さすがにこんな所で水浴びは出来ないから、悪いけどそれで我慢してね」
「…………………ここでこの布切れ一枚脱げっての?やっぱり変た」
「違うからね!?ほら、これ使っていいから」
このままでは不名誉なあだ名でも付けられそうな勢いだったので、慌てて【ストレージ】からテントを取り出して道端に組み立てる。
すごい…………、と少女の口から思わずそんな言葉が漏れた。
「リーン、着替え手伝ってあげてくれる?」
「はい、お任せ下さい!」
「あっ!ちょ、ちょっと!?」
少女は何か言いたそうにこちらを見るが、少しの間抵抗するもやがてリーンに両脇を抱えられて、渋々テントの中へと向かって行った。
やれやれ、色んな意味で過去最大級にダメージを喰らった気がするぜ…………。
ここまで邪険に扱われるとさすがに凹むな。
子供からは割と好かれる方だと思ってたんだが……………でも何だかんだ言いつつ逃げようとはしてなかったし、案外信用だけはされているのか。
それとも単純に逃げる元気が無かったのか…………。
おっと、【サイレンス】でテントからの音を遮っとかなきゃな。
58
あなたにおすすめの小説
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる