最強ご主人様はスローライフを送りたい

卯月しろ

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第6章

一撃

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手刀を振りかざし、カカッ!と檻の鉄格子を上下で横に切断して入口を作る。
ガシャガシャと音を立てて落ちた鉄の棒を前に、少女は恐る恐ると言った様子で檻の外に出て眩しそうに目を細めた。
長い間この中に閉じ込められていたのだろうか。
久々に降り注ぐ太陽の光に慣れるまで少し時間がかかった。


そして、見上げていた瞳を下ろして俺を捉えると、タタッと駆け寄り──────────。
怖かったのだろう。
俯いた少女の肩はふるふる震えていt



「この………変態!!」


「おぐっふ!?」



な、何で…………?
キッ!と睨む瞳は怒りで紅く輝き、待ち構える俺の一歩手前で止まった少女が振り上げた足は、それはもう思いっきり急所にクリーンヒット。
肉体の強さ云々うんぬんとか全く関係なくせり上がってくるとてつもない痛みに、思わず内股で地面に倒れ伏した。

白目で完全にノックアウト状態の俺を見下ろし、少女がふー!と猫のような威嚇を見せる。
まるで逆立った毛としっぽが幻視できるようだ。



「ま、マシロさーーーん!?」


リーンがうぼぁ………と動かなくなった俺に駆け寄り、抱き起こして肩を揺さぶる。

ちょ、マジで今やばいから動かさないで……………。
これ大丈夫?
マシロ君からマシロちゃんにチェンジしてないよね?
漢女おとめになるのは嫌だ。
あ、これ走馬灯かな?

…………………あーだめだ痛すぎてまともな思考ができん。
涙で視界がぼやけてきた。



「ダメですマシロさん!せめて私との子供を授かるまでは…………!」
「いや、そこ…………?」


もはやツッコむ気力すら湧かない。
人生初あそこスマッシュ…………男の弱点は不老不死でも同じだった。





           ~十五分後~





「…………ふぅ、死ぬかと思った……………」
「ふん!アンタみたいな変態は死ねばいいのよ!」
「酷くない!?」


なぜか少女を助けたと思ったらまさかの金的を喰らい、あまりの痛みに悶絶してから少し経ち、やっとこさ復活した俺に向かって少女は辛辣しんらつな言葉を吐き捨てる。
目が完全にゴミを見る目なんですが……………。
なんでこんなに当たりが強いのさ。
俺達初対面だよね?


「そうですね、なぜそんなにマシロさんを目の敵に?」
「……………………………だってこの男、さっきからあなたの胸ばっかり見てるのよ?」
「ぐふっ!?」


見下した視線が非常にグサグサ刺さる。
おまけの「最低!」、の一言でさらに言葉のナイフがグサグサ刺さりまくった。
否定しずらいのがなんとも悲しい限りだ。
もう止めて、マシロのライフはゼロよ!


「ま、マシロさん、私は嬉しいですよ?」


胸の前でギュッと拳を握り、落ち込む俺を必死に励ましてくれるリーン。
その優しさが心に沁みるぜ…………。


「はぁ…………。まあとりあえず今のは一旦置いておいて。はいこれ」


ため息一つ。
気持ちを切り替えて【ストレージ】から取り出し放り投げた布袋を少女が反射的に受け取り、怪訝そうに中身を確認すると驚いたように俺を見た。
その表情は「何で………?」とでも言いたげだ。


「これって…………」
「見たまんま服と水とタオル。とりあえずそんな服装じゃ嫌だろうから着替えてきな。さすがにこんな所で水浴びは出来ないから、悪いけどそれで我慢してね」
「…………………ここでこの布切れ一枚脱げっての?やっぱり変た」
「違うからね!?ほら、これ使っていいから」


このままでは不名誉なあだ名でも付けられそうな勢いだったので、慌てて【ストレージ】からテントを取り出して道端に組み立てる。
すごい…………、と少女の口から思わずそんな言葉が漏れた。


「リーン、着替え手伝ってあげてくれる?」
「はい、お任せ下さい!」
「あっ!ちょ、ちょっと!?」


少女は何か言いたそうにこちらを見るが、少しの間抵抗するもやがてリーンに両脇を抱えられて、渋々テントの中へと向かって行った。
やれやれ、色んな意味で過去最大級にダメージを喰らった気がするぜ…………。
ここまで邪険に扱われるとさすがにへこむな。

子供からは割と好かれる方だと思ってたんだが……………でも何だかんだ言いつつ逃げようとはしてなかったし、案外信用だけはされているのか。
それとも単純に逃げる元気が無かったのか…………。


おっと、【サイレンス】でテントからの音を遮っとかなきゃな。





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